DVD『ノロイエ-報道捜査最前線より-』を見た

高校1年のとき、文化祭で上映される映画の審査委員を頼まれたことがあった。いまみたいにビデオカメラが普及してるわけじゃないし、制作のイロハも知らん一般高校生が見よう見真似で作ったレベルだから、期待値なんてもともと無いに等しい。喋り出しがワンテンポ遅れようと演技がはずれてようと、それなりの形になってれば許容範囲。知ってる顔が真面目に演技してるってだけで楽しめるレベル。長台詞なんかあると逆にこっちがドキドキしたり。たどたどしい、けれど一生懸命さの伝わる演技に、ついつい評価も甘くなりがち。


しかし、もしこれがDVDソフトとして売られるプロの作品だったらどうだろうか。文化祭に出す作品だからこそ、その拙さも許容できるんであって、こんなレベルで金とるなんて言われた日にはねえ・・・



前フリはこのへんにして、OVホラーノロイエ-報道捜査最前線より-』である。いま流行りのフェイク・ドキュメンタリー。パッケージの裏面を見る限りなかなか面白そうだったので、安さに負けて思わず借りてしまった。内容はこんな感じ。

一般投稿された1枚のDVD。TVで放映されたという報道番組を収録したそのDVDには驚愕の霊体験が取り上げられていた。関係者が一様に口を噤む、禁断の恐怖……。今、封印を破り、貴方に問う。これは真実なのか・・・? 封印された報道特番の恐怖を完全ノーカットで贈る、封印番組発掘シリーズ第2弾。


文字化けしてるのはなんの呪いだ?(追記:あ、直ってる!) OVホラーは当たり外れが多いと聞くので、観る前にちょこっと検索してみた。すると、出てくる感想が全て罵倒。これはなかなかに珍しい(笑)。「パッケージに騙された!」と被害者続出だった『自殺サークル』でさえ、映画生活の満足度は38.00%(30人中)。かの『デビルマン』だって14.67%(124人中)もあるのに、『ノロイエ』の満足度は0%(5人中)・・・。0%か、それはすごいな。


かなり期待値下げて観始めたにもかかわらず、内容はこちらの想像を遥かに上回るシロモノだった。あのね、次元が違うの。こんなので3990円とろうなんてモラルハザードだよ。。。


よくさ、ヒドイ出来の作品を「文化祭レベル」とか「学芸会レベル」とかって喩えるじゃん。でもね、これ観たらそんな言葉軽軽しく口には出来ないよ。『ノロイエ』こそ、真の「学芸会レベル」。ほんと酷いんだ(苦笑)。あまりに全てが拙いので、台詞喋る役者に向かって「ドンマイ! 落ち着いて!」と保護者気分で応援してしまった。高校の文化祭に出されたら「結構頑張ってるジャン」で済む話だけど、3990円で売り出すなんて詐欺だろ。何故このレベルで販売に踏み切れたのか理解できない。売り物のビデオ作品観て高校の文化祭映画がデジャヴュったのなんて初めて。せめて自主映画レベルはキープしてくれないと、商品としてどうなの?


「酷い酷い」と言われてる『デビルマン』だって、「観たけどそんなに酷くなかったよ」っていう人が少なからず存在する。でも『ノロイエ』に関しては、あ・り・得・な・い。だって、どう考えても作ったの素人だもん。自主映画すら作ったことない新米に『ほん呪』渡して、「最近、フェイクドキュメンタリー流行ってるから、こんなの作ってよ」って丸投げしたでしょ。設定はそこそこ良かったけど、演出と脚本がとにかくダメだった。ツッコミだしたらキリないくらい。これじゃあ、さすがのポリアンナ先生も良かった探し出来ないって! 一応、フェイクドキュメンタリーのフォーマットに則って作られてはいるけど、せめてあと100万回は他作品を見直してから作るべきだったと思う。一昔前の社員教育ビデオと文化祭映画のドッキング。賞味58分の作品だが、緊迫感ゼロののんびりとした雰囲気に、ホラー作品だということをしばし忘れてなごんでいたら、既に3分の2が終わっていた。オチは好きだが(なんせあまりにも意外な展開で予想できなかった)、ダメなとこと良いとこの比率が96対4ぐらいなので、救いたくても救いきれんです。


出演してる役者もきつい。CX「こたえてちょーだい」ならまだしも、仮にもこれフェイクドキュメンタリーだよね? もうちょっとナチュラルな芝居が出来る役者選べって。しかも、皆、「こんなにたくさん台詞のある役は初めてなの?」ってぐらい舞い上がって張り切ってるし、その一方で、自分のことに精一杯なせいか、演技は噛み合わないわ余裕ないわで、たどたどしい台詞回し&噛みまくりの長台詞に観てるこちらはハラハラドキドキ。再現VTRの役者はそこそこ見れるけど、報道番組の出演陣が特に厳しかった。たぶん、生放送の臨場感を作り出そうと長回ししてるんだろうね。長い台詞を間違えず言い切ることに、誰も彼もが必死です。「友人が1年前に引越したんですけど、そこで毎年シロアリが出るんです」とか、テンパり過ぎて訳わかんない台詞言ってるのに、撮り直しナシかよ!(苦笑) 「可哀相だからカメラ1回止めてあげて」「そこにカンペあるんだから見ながら喋ってイイよ」とついつい助け船を出したくなる場面が数限りなくあった。ホラー作品としてはほんとに酷い出来だけど、そんないっぱいいっぱいの姿観せられたら「下手くそ!」の一言で切って捨てるのがしのびなくなる。役者陣はね、みんな、ほんと頑張ってるんだよ。でも、、、無理だったんだろうな。一生懸命なところは好感もてるけど、ちょっとばかし荷が重すぎた。


150円で借りてきて「さあ、これから観るぞ!」って人は、小学校の学芸会を観にきたと思って暖かい目で見守ってあげて。200円以上で借りてきちゃった人は、借りたあなたの方が可哀相なので、どうしてもダメだったら気が済むまで罵倒したらいい。3990円も出してジャケ買いしちゃった人は、、、とりあえず深呼吸しようか。封を開けてないなら返品して。手遅れだったら、事故にあったと思って販売元に謝罪と賠償を(ry・・・



唯一ガチだったのは最後の電話シーン。封印番組をソフト化しようとしたプロデューサーが、映像の使用許可を取ろうとこの報道特番を作ったと思われる地方局に電話をかけるんだが、相手が「そんな番組は知らない」の一点張りなもんで、ついついキレてしまう。そのキレっぷりが素晴らしくナチュラルで、あのシーンだけはガチ! プロデューサー役の人*1の喋り口調が、まるで被害者追いつめる悪徳業者。あまりに真に迫ってるので、聞いてるうちに「なんでおまえそんな偉そうなの?」と素でむかついてきた。この人、心霊箇所の説明をしてるときはヘタだったんだけどねえ。心霊なんてやめて、そっち方面のフェイクドキュメンタリー作れば良かったのに。



制作はクリエイティブアクザ。この名前、皆さんよーく覚えておいてくださいね。どんなに惹かれるパッケージでも、ここが作った作品に300円とか払っちゃいけません。ましてや定価購入なんてもってのほか! この出来に3990円っていうのはボッタクリもいいとこで、それに見合う仕事をしたのはパッケージデザイナーだけだから(罪な人…)。


クリエイティブアクザの作品ラインナップ見ると、「怨念地図」や「本当にあった!都市伝説」もあった。そのうち借りようと思ってたけど、やめた方が無難なのかな。



ちなみに封印番組発掘シリーズの第1弾はこちら↓。

感想漁ると、これはそこまで酷くなかったらしい。うーん、『ノロイエ』が珍種なのか?



今後もしヒドイ出来の作品に出会ったら、通ぶって「この作品は『ノロイエ』級だね」とかジャンジャン使いたいけど、二度とそんな機会は訪れないだろう。残念。



−追記−
ノロイエ』の一部を起こした方がいました。改めて言っておきますが、これはホラー作品です。
http://blog.livedoor.jp/no_the_war/archives/50150794.html ※2022.11.20現在閉鎖。残念。


−追記−
こちらのコメント欄にも書きましたが、わたくし、恐ろしいことに気づきました。あのVTRは本物だったんです。プロデューサーはどこかの「地方局」が制作したテレビ番組だと思ってるけど、ほんとは「町のケーブルテレビ局」が作って放送した番組なんです。いくら地方局に電話かけても「作ってない」と言われるのはそのためなんです。キャスターの喋りが素人くさいのも絵づらがチープなのも全部そのせいなんです。すべてはプロデューサーの勘違いだった。。。ああ、早く間違いを知らせて調査続行してもらわねばーーー!(そしてノロイエ2に続く)


−追記−
ノロイエ』より『幽霊インタビュー 完全版 [DVD]』の方が酷かった。間違いなく、これが底辺(と信じたい・・・)。


−追記−
類似品が出ているのでご注意を。


【関連過去記事】








*1:どうやら本作を製作した山本正プロデューサー本人らしい