DVD『女呪霊』『幽霊インタビュー』『葬る島』『実録・死の撮影旅行』『撮影現場 心霊ファイル』を見た

ツタヤ半額キャンペーンということもあり、10本ばかり心霊ホラー借りてきました。今日から観まくって、気力が続く限り感想を書きます(嘘)。

『女呪霊』

封印された報道特番の恐怖を完全ノーカットで贈る、封印番組発掘シリーズ第1弾。この第2弾がかの『ノロイエ [DVD]』です(笑)。作ってる人も(おそらく)同じ。近所のツタヤに行ったら『ノロイエ』が撤去されていたため(誰? 店員にチクったのは)、こちらもやばいかもと思い急遽借りてきた次第。


今回披露された報道特番は、女子高生を出演させてる裏AVに幽霊が映っており、その謎を探ってるうちに裏AV業界の闇がいろいろと暴かれていくというドキュメンタリー。オカルト要素があまりに強くなりすぎたのでお蔵入りになったそうだが(作ってるうちに気付けって)、『ノロイエ』とは異なり、学芸会要素は皆無(何故!? 作れば作るほど劣化してゆく希有な才能…)。DVDの映像を鑑定してくれた霊能者と、右手が忙しない名物プロデューサー(『ノロイエ』にも出演)以外の出演者の芝居に違和感はなく、終始安心して見ていられる。中盤以降、自分が心霊ホラーものを見てることを忘れさせるという展開は『ノロイエ』と同じ。あえぎ声がすごいので、家族と同居してる人は気をつけてね(音量下げるとメインの台詞が聞こえなくなるという不親切設計)。見所は冒頭の5分。幽霊画像をチェックする名物プロデューサーのリアクションというか吐く台詞が異常に可笑しいのと、とにかく心霊映像の不条理さがスゴイわけですよ(制服着たセックス好きそうな茶髪女子高生が、スタッフから次々と渡されるオトナのおもちゃを2本も3本も手にもちながらものすごく嬉しそうな顔してる背後に幽霊)。主婦業の合間に知人に頼まれたときだけ霊視をしてるという霊能者に映像鑑定を頼むという謎の設定(匿名につき顔にぼかしが入ってる。しかもこの霊能者、微妙に愚痴りモード。なんで正式な霊能者に頼まなかったの? お金がなかったの?)もあり。そして裏AV業者がくりだす悪徳発言の数々に見てるこちらがブチ切れ。フィクションだということを忘れ「おまえが死ね!」と罵倒したくなるのは『ノロイエ』ラストと同じ。本作はできるだけ『ノロイエ』を観た後に観て欲しい。「こんな素人同然のものが商品として売り出されるなんて」といった「おまえが言うなー!」とモノぶつけたくなるような台詞が多数出てきます(笑)。ビキニ姿(?)の幽霊映像ってもしかして初めて?


・・・あー、そうか。本作はスタッフクレジットないんだけど、制作会社の名前だけ最後に出てくるのね。「制作:クリエイティブアクザ」って。『ノロイエ』の時も同じだったんだけど、あっちは「制作:クリエイティブアクザ?」ってなってたの。『女呪霊』にはついてない「?」が『ノロイエ』にはついてる・・・これはつまり、作ってる方もさすがに『ノロイエ』はヤバイと思ったってことか。


結論。やはりこの人には一度、悪徳業者ものフェイクドキュメンタリーを撮ってもらいたい。『女呪霊』も『ノロイエ』もムカツク人間を描かせたら天下一品なわけですよ。どうしたらあんな演技をさせられるんだろう(プロデューサー本人も上手いんだけど)。ほんとあのAV業者のしゃべり方はムカツク! 腹立たしい。


【関連過去記事】


『幽霊インタビュー』

たるい、の一言。電気のついてない家を懐中電灯で照らしながら探索したら女の子が暗がりの中にひとりいて、「何してるの?」「わかんない」「ここ幽霊出るんだよー」「わかんない」とかインタビューして終わり。しかもそこにいくまでが長すぎて、全く台詞の覚えられないレポーター(『仮面ライダー555』の三訳真奈美)に愚痴りながら指導するディレクターの映像が延々とたれ流されるだけ。ヨドバシでビデオカメラ買ったその日に妹と娘を使い自宅の電気消して試し撮りしてみたらできた感じの作品。人殺しのあった家とかいう前情報がこれほどまでに生きない映像も珍しい(合間にたるいやりとり入れるからだよ)。学芸会レベルにもいかない。正直、長年オカルト番組・映画・ドラマと見てきたけど、ここまでヒドイのは初めて。早送りしたくてしょうがなかった。「ネットで日本中を騒然とさせた」って煽りで売り出されてるけど、あまりのつまらなさに「騒然」ってことですよね? それともネットで見てる人はこの程度で怖がれるの? 『リング』見たら心臓麻痺起こすから気をつけてね。ついこないだ「『ノロイエ』以上に酷いホラー作品はないだろう」って書いたばかりだけど、本作のおかげで『ノロイエ』の株が確実に上がりました(貶してゴメンね。これに比べたらちゃんとしてる)。


結論。前振りと音楽は大事。「幽霊にインタビューする」というアイデアは斬新だったが、本作のせいで二度とこのタイトルの作品が出せないのが苦々しい。



TV放送禁止シリーズ『葬る島』

かつて、引き取り手のない死体を埋葬するためだけに使われた“葬る島” があった。地元漁師の制止を振り切り島に潜入したスタッフが見たモノとは・・・という心霊ドキュメンタリー。 “葬る島”の設定や物語への導入部は伝奇もの風でワクワクさせられたんだけど、特に盛り上がりもないまま、気付けばオチがついて終わってた。しかもこのオチがあまりに意外すぎて何の感慨も起きない(伏線はどこ?)。フィルムっぽい画質でただ廃屋映して回ってる時点で、これは心霊ホラーじゃないよ。ただの廃墟シネマだ。演技は皆自然でなんの違和感もなかったけど(特に演劇サークルの子たち)、それが逆にダメだったというか、それだけじゃダメなんだというか、不思議体験や恐怖体験をただ語らせてそれをただ撮ってるだけというのは何も怖くない。ただのドキュメンタリーにしか見えない。これでは大事な数シーンを見逃したら、誰も心霊ドキュメンタリーとは気づかないだろう。心霊ドキュメンタリーっぽさは、「ほん呪」風のナレーションによってかろうじて維持されてるけど、演技が自然だからいいってわけじゃないんだ、これにいろんなものが加えられて初めて怖くなるんだという当たり前のことがよくわかった。構成・演出は金森保。制作はトランスフォーマーこちらで視聴可能だけど、レンタルの方が安い。



『呪い 実録・死の撮影旅行』

「若手を使って藤岡弘探検隊みたいなものを作れ」と言われたTVディレクターが、オーディションで選んだ若手タレント5名(お笑い芸人、グラビアアイドル等)と共に、人食い半魚人ムナールを追ってカンボジアへ。しかし撮影中、出演者が次々と消え、番組はお蔵入りに。。。海外ロケ敢行、愛染恭子特別出演と、この手の作品にしては珍しく金がかかってたり、メイン出演者に外国人がいたりする異色作だが、できあがりに関しては、もうね、「ええええええええええ?」って思わず声出して脱力しちゃう出来。しょぼい。非常にしょぼい。しかも後半がまんま『ブレア・ウィッチ〜』演出(青白いライトに悲鳴と顔のアップ)。パッケージは良かった。しかしパッケージのイメージとは全然違う内容だった。制作はエースデュースエンターテイメント。


教訓。ヤラセをすると本物の怪人に襲われます。みんな、気をつけよう!


『実録心霊シリーズ 撮影現場 心霊ファイル〜劇映画「隙間 すきま」の撮影現場より〜』

映画『隙魔-すきま- [DVD]』の撮影現場で関係者が奇怪な心霊現象に悩まされるというホラー仕立てのメイキングムービー、いや、メイキングを兼ねたホラームービー。これはちょっと新しいパターンですね(役者・スタッフは同時撮影で大変そうだけど。笑)。構成・演出は25日から佐藤佐吉脚本によるホラー映画『チェーン 連鎖呪殺 [DVD] APS-92』が公開される本田隆一。制作は同じアートポート。これね、本田監督を知ってるか知らないかでいろいろと分かれると思う(笑)。『隙間』のメイキングを担当してる本田監督が撮影中に起こった心霊現象を解明してゆくという話なんだけど、前半は心霊ドキュメンタリーっぽく撮ってあったのに対し、後半、本田監督がカメラの前でナビゲートしてゆくようになると、とたんに出てくる関係者まで芝居くさくなり、雰囲気にも明るさが取り戻され、監督自身のとぼけた喋り方のせいもあって、怖いビデオとみせかけ実はコントオチでくるんじゃないかと本気でドキドキさせられる。『ノロイ』の白石晃士監督がくりいむしちゅーの番組で見せた《イヌオチ》を、あの《イヌオチ》を、本田監督もやりにくるんじゃないかと、本気でそんな空気が会話の間に漂い始めるんだよ。そしてそれは半分当たってた。“半分”というのは、映してる心霊映像は怖いのに、現場に居る人のリアクションがコントという、複雑な演出。


【関連過去記事】