「本当に相手はあなたにそう言ったのだろうか」という疑問

以前住んでたマンションにAさんという人がいた。世話好き話し好きな人で基本悪い人では無いのだが、自分の意見の正当性を主張する手段として「みんなそう言ってる」「そう思ってるのは自分だけじゃない」「他の人からもそういう不満を聞いている」と主張する人だった。どうみても個人的感情にしか見えず、不満に思ってるのは自分だけじゃないということを示すために「みんなも言ってる」とワードを使ってるのは容易に想像できたので「ちなみに、みんなって具体的に誰ですか? ○○って不満を言ってきた人と、△△って不満を言ってきた人は同じ人ですか? 別の人ですか? たった一人の人がいろんな不満を言ってくるのと、いろんな人が同じような不満を言ってくるのでは意味合いや緊急性が変わってくるので是非教えてください」と畳みかけると「本人の了解を得ないと名前は出せない」といってトーンダウンしてしまう。


Aさんは当時の管理会社の担当さんと反りが合わず、どうにか辞めさせたいらしくて、会うたび愚痴を聞かされた。例えば、何かをお願いしたときに対応が遅かったり忘れたりすると「頼んだのに全然やってくれない。私の頼みだけわざと無視する」と言うのだが、当時の担当さんは一見しっかりしてるように見えて意外と抜けてる人で、私も何度か「予定日過ぎたんですけど、忘れてませんか?大丈夫ですか?」「すいません!忘れてました!」というやりとりをしていたため、「あーあの人、ああ見えて忙しいとすぐ忘れちゃうんですよ。まだやってないなと思ったとき何故連絡しないんですか? 私は連絡してますよ。普段のAさんだったらそういうとき絶対連絡しますよね? 何故担当さんの時だけはしないんですか?」と畳みかけるとまた口ごもってトーンダウンしてしまう。それでも次に会ったときにはまた「あの人は全然仕事をしない。追い出して別の管理会社に変えるべき。みんなそう言ってる」というので「みんながそう言ってるんですね? ならばその人たちに次の理事役員に立候補してもらってください。幸い現理事はみんな辞めたくて仕方がない状況なのでいまがチャンスだと思います」と言うと、早速周囲を説得して3人ほど具体的に名前をあげて候補の確約をとってきた。にも関わらず、その人たちは総会に来ず、クーデターは失敗。Aさん自身もこれには驚いたようで3人の候補にすぐ連絡をとるも、皆から「理事になるなんて約束した覚えは無い」と言われたらしく「今更そんなこというなんてひどい!失望した!」と憤慨していた。




なんでこんなこと思い出したかというと、最近また同じような人と知り合いになってしまったのだ。その人、Bさんはいちいち言うことが大げさな人で、大概話半分で聞いているんだけど、あるときBさんが、私と共通の知人であるCさんから不愉快な言動を受けたと愚痴を言ってきた。感情を直接否定するとめんどくさいことになる人なので「それは大変でしたね」と当たり障りのない相づちを打った。その後、私(eichi)とBさんCさんの3人でいる時に、BさんとCさんが再び険悪な感じになり、Bさんがあの話を持ち出して「こないだのCさんの行為、eichiさんも憤慨してましたよ!」と何故か私も憤慨してることにされてしまったので「別に私は憤慨してないよ」と言ったら「え?!」と驚かれた。こちらこそ「え?!」である。「私は“大変でしたね”と言っただけで、“Cさん酷い!”とか“許せない!”なんて一言も言ってませんよ。どの発言でそう思ったんですか?」と言ったら、しばらく記憶を巡らしたのち「そういえば確かにそうでした」とトーンダウンしてしまった。その後も似たようなことが何度かあり、そのたびに否定した。


つまりね、憤慨してるBさんの感情を否定せずに相づちを打つという行為は、Bさんからしたら「憤慨してる自分に共感してくれた=一緒に憤慨してる」ということになるみたいで、「これはうかつに相づちも打てんな」と思った次第。ちなみにこのBさんも世話好き話し好きで、不満を言う時に「影ではみんな言ってますよ」とよく言う人なんである。「みんな言ってる」の「みんな」とは誰で、何人いるんだろう。


そこでふとあのときのAさんのことを思い出した。Aさんはいろんな人に愚痴を言う人だったから聞かされた相手は何人もいて、皆が皆、「酷いでしょ?」と聞かれれば、当たり障り無く「酷いね」と答え、「辞めさせた方がいいと思わない? 思うでしょ? 協力してくれない?」と言われれば「そうですね。考えときます」ぐらいのことは言ったのだろう。そうやって人から相づちを受けるたびに、自信を持ったAさんの脳内では「みんな怒ってる!みんな辞めさせたいと憤ってる!協力してくれる(=理事を引き受ける)と言ってくれた!」とどんどん解釈が拡大されていったのかもしれない。


というわけで、「ねえ、あなたもそう思わない?そう思うでしょ?」と聞いてきたときに、否定すると面倒だからと当たり障りの無い相づちを打つのは、時に、相手と同じレベルの憤慨・不満・怒りを表明したことになる可能性があり、自分の知らないところでめちゃめちゃ怒ってたことにされたり、変な期待や自信を与えることになり「相手にとっても自分にとってもよくない」ということを改めて肝に銘じ、特に思い込みの激しい相手の場合は、何度リセットされようとも「私は別に気にならない。私はそこまで怒ってない。よってあなたの期待には応えられないが、あなたがなぜそこまでそのことにこだわるのかは気になるので教えて欲しい。何か建設的な対処方法を提示できるかもしれない」と繰り返し表明しながらこれからも生きていこうと思う。


まあ、そういうことすると「相談しがいのない相手」だと思われるのか、次第に蚊帳の外におかれるんだけどね。
うーん、なんかそういう態度がめんどくさくて、めんどくさい人から避けられるのかも。


年を取ると加齢でめんどくさい性格にどんどん拍車がかかる予定だから、めんどくさくないひとからも避けられないよう気をつけねば。





ちなみに先週今週と珍しく長文の更新が多いのは、どうしても書きたい感想があるんだけどなかなか突破口が開けずにいるので、そのリハビリです。