いまの山口智子は自分が“女優”だという意識はないんじゃなかろうか

女優。山口智子。F1層以上にいまだ絶大な人気を誇り女優復活を待望されてる彼女だが、最近は本を執筆したり芸術番組のナビゲーターになったりとすっかり文化人的な活動が多くなってきてる。そんな彼女がいま特にはまってるのが伝統工芸の世界。というわけで先週末、テレ東で『山口智子 手わざの細道』という番組が放送された。日本に古くから伝わる伝統工芸、その職人の手わざに魅せられた山口智子が自身の足で工房を歩き回り取材、企画・出演・プロデュースした番組。いい意味でも悪い意味でも山口智子が前面に出ており、職人目当てに見るといろいろ鼻につくとこもあるけれど、割り切ってみれば非常に面白く仕上がっていて、第2回もやるならまた見たいと思った。


“鼻につく”というのは、山口ファン向けに演出された部分。この番組は、ベルメゾンの1社提供であり、ベルメゾンでは山口智子プロデュースにより、職人の手わざを生かした“山笑う”という服飾ブランドを立ち上げている。そのため、合間に流れるCMも“山笑う”の通販CMのみ。つまり、この番組自体がそのブランドのプロモーションになっているというわけだ(CMはこちらで視聴可能)。故に番組のメインターゲットは山口智子の姿・生き方に憧れるF1層以上。30代、40代の女性たち。彼女たちのために「いまも変わらずおしゃれで素敵な山口智子さん」「その山口智子さんがいま強く惹かれてるのが“伝統工芸”の世界」「“粋でカッコイイ”職人たちが作った古き良きものに囲まれた生活をあなたもしてみませんか?」と番組内でアピールしていかなければならず、隙あらば“素敵な山口智子さん”を画面でアピールしようと画策するわけですよ。場に不釣り合いな華美な服着せたり、喋ってる「職人」の顔より「それを聞いてる山口智子」を長々と映したり。何かと職人と山口智子を同等の比率でフレームに収めたがるんだが、それが邪魔くさい。顔半分だけフレームに収めてれば十分じゃん。彼女は言葉で反芻するタイプというか、喋りによる自己主張が強いので、例えば、職人さんが何か説明をしていると、それに対し終始「うん、うん」と頷きの声を発し、時に感嘆の声を上げ、話を聞いて感じたこと思ったことをすぐさま言葉にして相手に伝える。表現が大きいというか、感情が声に表れやすいので、彼女が「驚いてる」とか「嬉しそう」なんてのは声聞くだけで十分に伝わってくるわけですよ。なのにカメラはそれだけじゃ足りないと思ったのか、わざわざ「驚いてる山口智子」「嬉しそうな山口智子」を画でも見せて伝えようとするから画がクドくなり、これは山口智子のプロモーション番組で、「職人」は「山口智子」を引き立てるための単なる付け合わせかい?とツッコミたくなる。しかし、当の山口智子本人は本当にいまがっつりと伝統工芸の世界に嵌ってるらしく、それは彼女の言葉だったり声色だったりナレーションの勢いからよく伝わってくるので、怒りの矛先が彼女に行くようなことはなかった。


そういうもろもろの点を割り引けば、この番組は“面白かった”。その理由は、やはり「視点」にあると思う。目のつけどころが「男っぽい」んだよね。「機能美」「職人の技」って言葉をよく口にするんだけど、「わーキレイ!ステキ〜!」ではなく「なにこれ!?スゲー!どうなってんの!?」って視点で工芸品を見ていて、巧みの技を目の当たりにしたときに自分が感じた「驚き」をなんとかして画にとらえて伝えたい、「この人たちほんとにすごいんだよ!」っていうのを世間に知らしめたいっていう想いの強さが画面からひしひしと伝わってきた。インタビューに答えてる職人さんたちが誰も彼も楽しそうで誇らしげなのは、やはり相手がむっさいディレクターではなく山口智子だからなんだと思う。


タイトルにもあげた「いまの山口智子は自分が“女優”だという意識はないんじゃなかろうか」ってのは、実は彼女のナレーションを聞いて思ったこと。あのね、この人を女優復帰させたいと思ってる人はちょっと考え直した方がいいと思う。愕然とするぐらいナレーションが下手だったの。これで「私、女優です」って言われても「そんなの認められません!」ってぐらい下手だった(苦笑)。非常に早口だし、前へ前へと気持ちだけ先走って、一文の長さとかなんも考えずに喋ってるから、イントネーションが途中でおかしくなり非常に聞き苦しい。どんなカッコイイ言葉並べたってこれじゃ全然伝わらない。およそ言葉を伝えるという作業には向いてない。ただ、裏を返せば、思い入れが強すぎて気持ちばかり逸りコントロールが効かなくなっただけとも受け取れるんで、それならそれで彼女の心の内がよく表現された的確なナレーションだったなって気がして「これはこれでアリかな」とも思う。


というわけで、第2弾も楽しみにしてます(カメラだけはもうちょっとなんとかしてね)。



追記:というわけで第2弾が放送されました。そしたら思わぬことに・・・(苦笑)。