『SPIRIT 霍元甲』を観た(@シネコン)

週末に見てきました。200人ぐらい入る劇場に15人ぐらい。客はカップルが2,3組と、一人で来てる男ばかり。あ、カンフーマスターみたいな風貌の小柄なじいさんも来てた。


映画の詳細はこちら↓
『SPIRIT』公式サイト



リー・リンチェイ最後のマーシャルアーツ作品」と銘打って公開された本作は、実在した武道家霍元甲の幼年期から亡くなるまでを描いた物語。リー・リンチェイと言えば立ち姿はもちろん、動きのひとつひとつが非常に「美しい」人。本作では「最後」というだけあって、立ち技のみならず、槍に刀、三節棍に演舞(!)まで見せてくれて、あーもう終始顔がにやけまくりですよ。内容はむかしなつかし中国武侠映画といった趣で、リンチェイ久しぶりの「弁髪」姿にうっとり。展開がやや駆け足に見える部分もあったけれど致し方ない。今回は特にリンチェイの「役柄」が良かった。常に背筋を伸ばし礼節を忘れず誠実で実直、正義感溢れる好青年(いや、もう青年って年齢じゃないけど)のリンチェイが、チャーミングな笑顔はそのままに、これまでのイメージとは真逆の人物、強すぎるが故に己の力に溺れ天狗になり礼儀を忘れて傲り高ぶり全てを失う男を演じるなんて、若い頃(の演技力)じゃ考えられないことですよ。これがとっても魅力的で、できればもっと若い時にこういう役を演じられる役者になって欲しかったなあ、そしたらあんな話もこんな話も・・・と思ったら、なんか「最後」って言葉が無性に染みてきた。「強すぎるが故に誰からも理解されず無邪気な笑顔の孤独で純真な悪魔」ってリンチェイにピッタリだと思うんだけど。親友から絶交宣言されたときの捨てられた仔犬みたいなまなざしが強烈。悪いことしたのは元甲(リンチェイ)の方で親友は人として当然の報いをしたまでなのに、そんなすがりつくような目で見つめられたら捨てたこちらが心苦しくなるじゃないか!とやけに後ろめたい気持ちに。だから、改心して戻ってきた後の親友とのやりとりで、ワタクシ、不覚にも泣いてしまいました。生真面目さが抜けきれないので(演技も殺陣も)、もうちょっとこなれて遊びが出てくれば、あの役で新しいキャラが確立できたのにと、いまさら望んでも時既に遅し。。。



*それにしても最近の流行りなのか(はたまた動けないのを誤魔化すためなのか)、武術シーンで速度いじりまくりなのが鬱陶しい。1カットでとは言わないけど、せめて等倍で見せて欲しかったな。スローモーションも多用しすぎると冗長でわずらわしくていかんです。あと、引きのシーンももうちょい入れて欲しかった。武道とは、身体全体の筋肉を使って生み出されるその超人的な動き、技を堪能する全身芸術ですよ。なのに下半身を無視するとは何事ぞ。つま先からとは言わんが、せめてスネ、いやヒザ上から見せてくれたっていいと思う(スタイリッシュなんて大ッキライ)。



最後の勝負は闘い以外のモノによって決着する。若い頃のリンチェイ映画だったら「何故、最後まで闘わせないのか!?」と不満たらたらだったに違いないが、役者としての表現力が上がってるので、リンチェイ、表情で見せきった。もう、たまんないっすよ。泣いたっすよ。「あなたは格闘技で泣いたことがありますか?」なんてしょーもないキャッチコピー「何それ?」って思ったけど、ほんとに泣いたですよ。いくら相手が中村獅童といえども、悟りきった表情で運命受け入れ破れゆくリンチェイを見るのは辛すぎる。「最後のマーシャルアーツ作品」でこんな姿見せつけられるなんて、それなんて引導ですか?(涙)


原田眞人はスゴイですね。映画監督が本業でありながら、役者として獅童を喰いにきましたよ、この人(笑)。



エンディングテーマについてはいろいろあるようだけど、私自身はアレはアレでありかなあ・・・なんて言うわけないじゃん!!! なんでよりにもよって女性ボーカル? リンチェイの死闘の後に「わたしが〜♪」なんて歌声聴きたくないわ、ボケ! 


というわけで、「あのエンディングテーマなんとかならんのか?」という方に朗報です。DVDはオリジナル曲に差し替えた形で販売されることが決まりました。本件に関しては「エンディングテーマ差し替え嘆願ブログ」まで出来上がっていたようです。


それがこちら↓。オリジナル曲のPVも観ることが出来ます。
SPIRITの魂はジェイ・チョウの霍元甲にある。


差し替えに至った経緯について、配給のワーナー・ブラザースは以下のようなコメントを出していました。

ジェイ・チョウの楽曲がビデオ/DVDに採用決定(@ワーナー・ブラザース映画宣伝マン日記)


ただいま公開中の『SPIRIT』のエンディングテーマ曲を差し替えた件について、
ジェイ・チョウの楽曲は、もともと東南アジア以外の国では使用できない契約に
なっているため日本では日本のアーティストの楽曲を使用することになりました。
いろいろと憶測が飛び交っておりましたが、あくまでも契約上の問題であることを
改めてご理解ください。(以下略)

ふーん、中国って東南アジアだったのか。まあ、それはいいとして、「主題歌ごときに追加契約料払うのがめんどくて日本人アーティスト使ったのはいいが、あまりにセンスなくて皆からすっごく文句言われ、あわてて契約とりつけた」というふうにしか読めないのが悲しい。。。



ちなみに、帰りにツタヤで「ワンチャイ」シリーズ借りて来たのは言うまでもない(やっぱちょっとイライラしたの、映し方に。たまった鬱憤払いたかったの)。一番慣れ親しんでた「少林寺」シリーズは置いてすらなかった(泣)。そういえば、ムエタイ選手かなんかと対戦してるシーンがあったのに尺の関係でまるまるカットされたという書き込みを見かけたよ。えー!? 足技対決ってワタシの大好物なのにー! DVDに特典で追加してくれたらソレ買う。