土7『ほんとにあった怖い話』とNTV『あなたの知らない世界』

何度かのスペシャルを経て今年1月からレギュラー放送が始まった『ほんとにあった怖い話』。レギュラー化の一報を聞いた時、幼少の頃から怪奇番組に目がなかった身としては、「毎週怖い話が見れるぞ!」と喜び勇んだものの、正直言って3ヶ月もたせるのはつらいんじゃないかと思っていた。何故なら、最初の頃こそ面白かったスペシャルも、最新版は、全ての演出を鶴田法男が担当してるにもかかわらず、オープニングの『婆、去れ』*1以外はいまいちの出来。肝心の本編*2が、ありきたりな話でつまらなく、予告で見せてた恐怖映像が本編ではひとつも使われないなど、あざとく期待はずれで全般的に手詰まりな感じが漂っていたからだ。これの後にレギュラー化と言われても、ピークを過ぎた感じは否めない。


しかし実際に始まってみると、いやいやどうして、1ヶ月経ったいまでも全体的な面白さが落ちてこない。おそらく1本が10分以下の短編オムニバスなのが功を奏してるのだろう。初回が一番手垢まみれでつまらなかった気さえしてくる。話や見せ方のバリエーションが豊かというか、ちょこちょこっと変化球が入るもんで、何本観ても飽きないのだ。



今日やったのは『折れた護符』*3(主演・蒼井優)、『うしろの女』*4(主演・長澤まさみ)、『迷子』*5(主演・佐々木蔵之介)の3本。『折れた護符』は新聞配達に行った先の団地で幽霊に出会ったというだけの話なのだが、映画『リング』での貞子出現演出を完コピ(!)。幽霊を出す前の“はずし方”*6も良かった。つーか、あそこではずすのは分かってるのよ。そりゃ、こっちだってこの手の話は今までに何本も見てきてるわけで、パターンはインプットされてるのさ。でもね、出てくるまでの時間が思ったより気持ち余計に長かった。そこが良かった。一方、『迷子』は、映画『呪怨』の俊雄君を模倣しつつも、怖がらせるだけじゃなくほのかに感動ものに仕上げている。「なんでだろ。さっきから涙が・・・」という奥さんの表情がいいのだ。


で、今回、特に面白かったのが『うしろの女』。これは話の導入の仕方が変化球なのである。『ほん怖』は、視聴者から送られてきた恐怖体験をドラマ化してるという嘘かほんとかわからない設定が売りなのだが、この話を送ってきた主人公(体験者)はある家庭のお母さん。この人は幽霊が全く見えない。旦那も同様。しかし、彼女の息子と娘(長澤まさみ)は見えちゃう体質らしく、目の前でしょっちゅう見たばかりの幽霊の話をする。しかし生まれてこのかた幽霊なんぞ見たことも感じたこともないお母さんはちんぷんかんぷん。それでもなんとか子供たちのことを理解したいと番組に手紙を出してきた、という設定でなんともほのぼのとした空気の中話は進んでゆくのだが、後半、視点が母親から娘に変わった瞬間から画面に肌寒い張りつめた空気が流れだし、最後はギョッとする映像で視聴者をおののかせる。こういうすかした感じは非常に好きです大好きです(嬉)。



実は以前、“夏の風物詩”として一世を風靡したNTV『あなたの知らない世界』でもこの手のみょ〜にほのぼのとした話があった。『風がこわい』という題名だったと思う。15年ぐらい前だったかなあ? その当時の『あなたの〜』には珍しく、システムキッチン(!)のあるいま風のお宅が舞台だった。そこの家に住む小学生の息子が、ある日突然学校に行くのを嫌がるようになった。理由を聞くと“風”が怖くて外に出られないと言う。もちろん家族はそんなの信じない。学校に行きたくなくて駄々をこねてるだけだと叱った。しかし彼の怖がり方が尋常じゃないため次第にただ事じゃないぞと認識を改めるようになる。なんせ扇風機の風が当たるだけでもダメなのだ。両親はなんとか彼の“風”恐怖症を克服しようと、台風の中一緒に外に出て身を晒してみたりいろいろと試すのだが、一向に効果が上がらない。ある日、友人からの紹介で八王子の霊能者の先生*7を訪ね、ようやく風恐怖症の原因が分かった。戦時中に外国の戦地でなくなった親戚がいるのだが、その人の遺体が風吹きすさぶ平地に死後数日間野ざらし状態だったらしく、そのことを息子に取り憑いて訴えているんだという。というわけで、供養をちゃんとしてやったら風恐怖症もピタッと治まり、爽やかな風を頬に受けながら元気に学校へ出かける息子の姿でほのぼのと幕を閉じた。


『ほん怖』に話を戻すが、公式に鶴田法男のインタビューが載っていた。それによると、「金曜エンターテイメント」枠でやっていたときは、

1本が大体15分くらいで、ある程度ドラマ的な味付けをしないといけない


というのがある種の足かせになっていたようだ。しかし

今回はそういうものを排除して、「とにかく怖いものを、というところに集中してやっていきましょう」というのが最初からのコンセプトだった


とのこと。これのおかげでドラマ作りの定石を気にせずエピソードを見せることのみに集中できる、だから話や見せ方にバリエーションが出せたということなのだろう。


また、ほん怖クラブのコーナーでたびたび使われる例の猫目小僧ちっくなアニメーション(ペーパーマペット)。オープニングはそのままなのだが、コーナーの合間や場面転換で使われる映像は何通りもあるようで楽しみ楽しみ(嬉)。よーし、パパ、保存版で焼き焼きしちゃうぞ〜♪


稲垣吾郎と小学生たちの絡みも、当初は照れとぎこちなさが先に立ち見ていられなかったが、“お約束”のツッコミ・パターンができあがったことで、だいぶ面白く見られるようになってきた。


のんのん♪

*1:内山理名主演。話こそ都市伝説系のありきたりな話だったが、幽霊が徐々に徐々に近づいてくる演出が冴えてる一品。本編の数倍怖かった。

*2:『闇からの電話』(主演・えなりかずき)、『父の想い』(主演・井川遥)の2本。1時間枠だったので1本20分ぐらいだったと思う。恐怖もの(『闇から〜』)と感動系(『父の〜』)。組み合わせとしては悪くない。『父の〜』はタバコの使い方やライターの着火音などは良かったんだが、如何せん『闇から〜』が怖くなかっためだれた印象というかバランスが悪く物足りなさだけが残ってしまった

*3:演出・加藤裕将/脚本・清水達也

*4:演出・鶴田法男/脚本・玉城 悟

*5:演出・鶴田法男/脚本・玉城 悟

*6:出るぞ出るぞと散々盛り上げといて出さない。視聴者が「なんだ出ないじゃん」とホッと一息着いた瞬間にガガンと出す。

*7:どこかのお寺の住職さん。相談を受ける時は名前以外はなんの前情報も入れないが、相談者が訪れる数日前に相談者の悩みに関する夢を必ず見るのが特徴。