BS朝日「極上空間」トーク、南野陽子×伊藤かずえ

今年の3/24(土)に放送された「極上空間」のゲストは南野陽子と伊藤かずえ。昭和の東映大映破天荒ドラマで活躍した二人が明かす当時の裏話がいろいろと興味深かったのでHDDから消す前にメモっておきます。ドラマで共演してた印象がなかったのに意外にもとっても仲良しな二人。芸歴からすると伊藤かずえの方が一世代上の印象だけど、年は1歳しか違わなかったのね(伊藤かずえが45歳で、ナンノが44歳)。まずは二人の出会いから。

出会い

伊藤「出会いはもう…」
ナンノ「お友達の家ですね」
伊藤「そう。で、お互いに独身の時で…」
ナンノ「そうですよ、もう20年ぐらい前ですよ。」
伊藤「あたし、25ぐらいだったと思う。トモダチの紹介でそのお友達の家にいったら陽子ちゃんがいて、『ああ、キレイな人だなあ』って思ってたけど、喋ることは結構姉御肌的な、『あたしより年下なのにこんなに姉御なんだ』っていう第一印象だった」
ナンノ「ホント?」
伊藤「サバサバしてて」
ナンノ「あたしもかずえちゃんと言えばスッとした感じの役が多かったから…」
伊藤「ああ、そうそう。不良役とかね」
ナンノ「だから意外とこう“笑顔”っていうよりも厳しい顔っていうか“表情”とかの方がインプットされてたから、『やん、この人、明るい〜』って思った(笑)」

女優への歩み

伊藤「あたしさあ、エキストラ時代から数えたら、なんと・・・40年。」
ナンノ「(拍手)。40年もやってるって『あんたいくつ?』って感じする(笑)」
伊藤「(笑)。そうそう。6歳の時からだから今年で『ああ、40年目に入るんだぁ』って感じ。ほんとロボコンのエキストラだったり…」
ナンノ「ああ、ロボコン・・・ええ?! ほんと〜?」
伊藤「キカイダーとか「ゴレンジャー」とかやってたよ」
ナンノ「スゴイねえ。全部見てたよ」
伊藤「それの“エキストラ”ね。あ、それで、エキストラの時に、大勢出るコマーシャルみたいなので、すっごいそんとき売れてた俳優さんがいて、で、ちょっとお弁当代足りなくなっちゃったわけ。そしたら『エキストラなんかに飯喰わせるな』って言ったの、その人が」
ナンノ「役者さんが?」
伊藤「すごくいいイメージだった人が。それで私『悔しい!この人だけはなんとかして抜かしてやりたい!』って思って『抜かすためにはどうしたらいいんだ』『主役を獲ることだ』と思って、すごい頑張ったもん。『主役が絶対にやりたい!』って思って。あのお弁当のこと。。。食べ物の怨みじゃないけど」
ナンノ「でも、そうだよね。そういうさ、自分の中の生理というか許せないって思うことで頑張れたりするよね。私も別に『女優になりたい!』とか『歌手になりたい!』とかあんま思わずして、なんとなく東京に出てきちゃったのね。スカウトというかお話をもらって。出てきたんだけど、自分で何をやりたいんだかわからない。だけどいろんなとこに挨拶に行くと、『なんかインパクトがないね』とか『この子は無理じゃない?』とか『早くお嫁さんになるために帰ったら』とかそんなことしか言われなかったから、『じゃあ、何が何でも!』みたいな感じで、自分で一人でテレビ局とか訪ねていって…」
伊藤「(驚きの表情で)スゴ〜イ行動力!」
ナンノ「でもいまはもうありえないんだけど…」
伊藤「スゴイね!」
ナンノ「なんかもうさ、帰る場所がないっていうか、なんかこう自分が(東京に)来た、存在した意味をね、ここでちゃんと出したくて、『テレビに出たいんですけど、どうしたら出れるんですか?』って自分ひとりで学校の帰りにクッキー焼いたの持って行ってさ、行きましたね」
伊藤「じゃもう、制服のまんま」
ナンノ「制服のまんま。そしたら誰かしら話を聞いてくれて、『じゃあわかりました。覚えときますよ』みたいな。で、後から事務所に連絡がいってよく怒られたりはしたけど、でも「スケバン〜」とかもそんな感じだった」
伊藤「スゴイね」


そして話題はドラマの話へ。“少女鉄仮面伝説”の驚くべき真実が語られます(ワタシ知らんかったわ、これ。笑)。

80年代ドラマ

ナンノ「でもかずえちゃんって、真面目な顔でいろいろ面白い台詞とかもあったでしょ」
伊藤「いっぱいあるよ。なんかね、不良少女とよばれてっていう…」

ナンノ「見てました見てました」
伊藤「いとうまいこちゃんが主演のドラマで、その中ですごく印象に残ってるのがいとうまいこちゃんに向かって言う台詞で『恋は壊れやすいのよ、ビタミンCのようにね』っていうんだけど」
ナンノ「(笑)」
伊藤「『私、この台詞、すごく言いにくいんですけど』って初めて監督に『違う台詞にしていただけませんか?』って聞いたの。『もう言えない』って言ったら、『脚本家が一生懸命考えて作ってる脚本なんだし、一語一句変えてくれるな』と。でもいまだにこのさ、何十年経っても覚えているってことは…」
ナンノ「うん、そうです!」
伊藤「すごくやっぱりインパクトのある素晴らしい台詞なんだなって思うけど。他にも初めて主演を頂いたときに、ポニーテールはふり向かないって作品だったんだけど…」

ナンノ「うん、見てた」
伊藤「ドラマーの役で。ドラム叩くのも大変だったんだけどさ」
ナンノ「(笑いながら)そうだね」
伊藤「死んだ天国のお父さんに向かって横須賀かなあ? どっかの埠頭で、泣きながら言う台詞なんだけど、『お父さん、頭ん中スパゲッティになっちゃうよ!』って泣きながら言うの!(笑)」
ナンノ「なに?(笑) 泣きながら『スパゲッティになっちゃうの』って?」
伊藤「そう。でもそれって『混乱しちゃうよ』ってことなんだけど…」
ナンノ「ああ・・・」
伊藤「『なんでここでスパゲッティが出てくるんだろう』とかすごい疑問に思いながら、でも泣かなきゃいけないしっていう」
ナンノ「難しいよね。でもそうなんだよね」
伊藤「難しい」
ナンノ「でもあたし、かずえちゃんのポニーテールはふり向かないって、本とか出てたでしょ」

ちょっと過激な19歳―今日を生きる

ちょっと過激な19歳―今日を生きる

伊藤「ああ! 出した出した−! なんかエッセイ集みたいな」
ナンノ「そう。あの本を読んだことがあって…」
伊藤「ええー?!」
ナンノ「ビックリしたのが本の付録にさ、かずえちゃんの髪の毛がついてたの
伊藤「髪の毛ついてたー(笑)。ポニーテール長くなって、切った髪の毛を一本一本入れて袋とじにして」
ナンノ「そうそう。袋にさ、《伊藤かずえの髪の毛入り》って書いてあってさ」
伊藤「そうそうそう(笑)」
ナンノ「『これはどうかなぁ?』ってちょっと思ったんだよね(笑)」
伊藤「(笑)。そうだよね」
ナンノ「そういうのも含めて『時代だな』って気はする」
伊藤「時代だよねー」
ナンノ「いろんなことを実験みたいな感じで・・・」

いまだから話せる撮影裏話

伊藤「スケバン刑事II」もさ、いろいろ長いシリーズで大変そうだったけど、なんかエピソードある?」
ナンノ「そうなんだよね。スケバン刑事II」はドラマで1年で映画もあったから、1年半ぐらいスケバン刑事II」だったからすっごく長かったんだけど、なんせ私はさ、この通り? 割と運動がダメというかぁ(笑)」
伊藤「(笑)」
ナンノ「苦手だったんで、ほんとにアクションシーンがいっぱいあったんでね、毎回。必死でっていうか本当に毎回苦しかったんですけど。だからとりあえず最初のうちはね・・・まずそう! でんぐり返しができなかったの」
伊藤「ええーーーっ?! あっ、そうだね。回転してヨーヨーをシャーンッてやるところとかもあったよね」
ナンノ「そうなの! だからなんで学校でマットの上ででんぐり返しができないのに、道とかで、『火薬がバアーンッって爆発したらでんぐり返ししてヨーヨー投げて睨んでください』とか、そんなさあ、転がるのが難しいのにみたいなね」
伊藤「(笑)」
ナンノ「で、転がった先にさ、パッと手をついたところがさ、犬のウンチとかね。あら、残念」
伊藤「あら、残念」
ナンノ「あたしでもね、台詞がね、“土佐弁”っていうことになっているんだけど…」
伊藤「おまんら」
ナンノ「許さんぜよ! ・・・でもね、正直言うとあれは嘘で、ほんとは土佐弁だったから最初はテープをもらって『覚えてください』って。でも(出身が)兵庫県、関西人じゃないですか。だから段々時間がなくて忙しくなってくるとテープ聞かないで、関西弁に『ぜよ』とか『きに』とかつけて、すごいいい加減だったから…」
伊藤「でも関西弁でいいのにね。関西弁なら得意でしょ?」
ナンノ「え? なに? 『おまんら許さへんがなあ!』って感じ?」
伊藤「(爆笑)」
ナンノ「それはどうかなあと思うけど、なんかね、一応土佐弁ぽく言ってたので、でもいまは四国に行くのが怖いもん。『皆さん、ごめんなさい!』って」
伊藤「(笑)」
ナンノ「わたしたち関西人って関西弁喋る俳優さんが許せなかったりするわけですよ。なんか気持ち悪かったりして」
伊藤「ああ、よく言うよね。あんまり分からないけどねえ」
ナンノ「だからそういう思いで、四国の人もきっと私の土佐弁とか「スケバン〜」の台詞を聞いていろいろ思ってるんじゃないかなと思ったら、すごく四国は遠い海。ヨーヨーも練習したよ。だっていままで全然そんなのできなかったから」
伊藤「ヨーヨーって意外に難しいよねー」
ナンノ「難しい。だから投げては巻いて投げては巻いてっていうのを、ほんとに嘘じゃなく100回! 1日100回ね」
伊藤「うわっ、すごーい」
ナンノ「やるっていうのを日課にしてて」
伊藤「仮面も被ってたよね」
ナンノ「鉄仮面被ってた。鉄仮面もさ、最初被る予定はなくて『ほんとこの子、顔はさ、いまいちインパクトがないんだよねー』って。『じゃあちょっともったいぶって見せたらみんな見たがる?』とかいう感じで鉄仮面をかぶせられることに後から決まったの」

伊藤「じゃあもともと脚本には載ってなかったんだ」
ナンノ「一番最初の段階はね。そしたらみんななんか面白がっちゃって、『何々時代のこんなのにしようよ』とか『こういう意味をつけようよ』とかって感じでどんどんプロデューサーさんとかディレクターさんとか、あと脚本家の人とかみんなで盛り上がって出来ていったんだけど、「スケバン〜」はね仮面ライダーのチームなんですよ。殺陣師さんとかがね。だから割と型とかね、私もヨーヨーを投げるときこうね(と投げる直前のお決まりのかまえを見せる)」

スケバン刑事 [DVD]

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伊藤「決まりがあるんだよね」
ナンノ「アクションとかいろんなのを、仮面ライダーって変身ポーズとかあるじゃない。あんな感じで『おまえちょっと3つぐらい考えてこい』とかって言われて」
伊藤「ええーー?! 考えるの大変!」
ナンノ「で、一緒に考えた。殺陣師の人と。藤岡弘、さんの代わりだった人とかが殺陣師だったりするから」
伊藤「ああー! そうかそうか」
ナンノ「最後の立ち方が仁王立ちとかになっちゃって」
伊藤「(笑)。かっこいいじゃん!」
ナンノ「かっこいいけど(笑)、『脚そんなに開かないんですけど』みたいなぐらい(決めポーズつけながら)フンッて感じとかよくやりましたねー。でもいま思えばもっとあのとき真剣にもっともっと殺陣とか勉強しておけば、いま私はもっとすごいことになっていたのになとかって思うんだけど」


売れっ子アイドル生活についても。

アイドル時代の超多忙生活

伊藤「でもナンノちゃん、寝る暇無かったでしょ? あの時代」
ナンノ「そうだねえ。アイドル時代はそうねえ、全然無かったから、撮影所の駐車場で寝てたりしたんだけど、クルマの中で。でもそれだと可哀想だからって言って、スタッフの人がセットのベッドを楽屋に入れてくれてそこで生活してたよ」
伊藤「すご〜い! 楽屋?(笑)」
ナンノ「ほんと楽屋がワンルームマンションみたいな感じでベッドとかあったもん」
伊藤「じゃあ撮影所で寝泊まりしてたんだ」
ナンノ「寝泊まりした、何ヶ月間はもう」
伊藤「すごいね〜」
ナンノ「だから体調悪いと看護婦さんに点滴打ってもらいながら撮影してた」
伊藤「ああ、でも私も連ドラの時あったなあ。病院で。でも休めないから病院から撮影所(に直行)だったよね」
ナンノ「で、『本番いきま〜す!』て言われたらちょっと(点滴の)針を抜いてもらって…」
伊藤「いや〜!」
ナンノ「で、撮って終わったらまた(針を)プスッみたいなのとか」
伊藤「信じられないよね」
ナンノ「1年間にね、休み2日だった。雪で撮影が中止とか。お正月も(撮影は)あったから」

夢のアルバイト体験

ナンノ「「吐息でネット」のあとぐらいに喫茶店で3日間アルバイトしたの。時給650円」

伊藤「それ許されたの? 事務所的に」
ナンノ「うんと、お休みが・・・ドラマのインが遅れてお休みが4日間あったのね。4日の休みって私初めてだったから何していかわかんなかったの。とりあえず『実家に帰ります』って言ってお休みだったんだけど、そのお休みになる前にユーミンに『4日も休みがあるからどうしていいかわからない。アルバイトでもしようかしら』ってちょっと冗談めいて言ったの。そしたら『やれるもんならやってみ』って言われたの(笑)」
伊藤「(笑)。松任谷由実さんに?
ナンノ「そうそう、ユーミンさんにね。で、『そうか。これはやらんといかんだろ』と思って友達に『ちょっとバイトしたいから喫茶店探して』とか言って、友達も『ええ?! そんなの無理!』とか言いながら、兵庫県の芦屋の、車とか運転しないとちょっといけない不便な場所というか、ちょっと山の上の方にある…」
伊藤「あんまり人がこないような所にある?」
ナンノ「そうそう。ここだったら大人の人しかこないんじゃない?みたいなところに話つけといてもらって、『騒がれたりとかしたらすぐ辞めます。でも私は一般の人と同じ経験がしたいんです』とかいろいろ言って、3日間・・・」
伊藤「やったんだ!」
ナンノ「やった。1日目はね、普通に色々教えてもらってやってた」
伊藤「どんなことするの?」
ナンノ「喫茶店なんでオーダー取りに行って、お茶とかをお出ししたりお水を注ぎに行ったりなんだけど、だんだんお客さんとかも『え? ドッキリですか?』とかカメラを探したり、3日目はテレビクルーが来たりとかしてて…」
伊藤「じゃあもうごった返しちゃったんだ」
ナンノ「そうそう。で、その様子に、喫茶店の社長さんがハイヤーを朝迎えに出してくれたりして(笑)、650円なんだけど」
伊藤「(爆笑)。それさ、時給より高い」
ナンノ「全然高い」

そしてその後、懐かしの東映東京撮影所へ。25年ぶりにスケバン刑事の撮影で実際に使用していた本物のヨーヨーとご対面するナンノでした。


そうか、アクションスタッフは仮面ライダーのチームだったのか。だから火薬量が尋常じゃなかったのね(いえ、あれは時代のせいです)。なんかもっといろいろありそうだよなあ、当時の撮影は。