『おろち』を観た(@ユーロスペース)

これも2008年9月当時に書いた感想。書き足りない気がしてそのままになってたものだけど、いま読んだら「別にこれでもいいじゃん」って気になったので当時書いたまんまUPしておきます。

おろち [DVD]

おろち [DVD]


映画の詳細は↓以前の日記を参照。

原作は既読。以下、ネタバレします。


実のところ、終盤に入る直前までの評価はそれほど高くはなかったんです。姉・一草(木村佳乃)と妹・理沙(中越典子)の立場を一部逆転させてしまったことで姉妹の力関係が拮抗してしまい、どちらもある面では相手より不幸だし幸福であるという中途半端な状態が、どちらの立場にたってもいまひとつ食い足りないという感じを残したのと、楳図画力ほどには醜さの強調がなされてないこともあって、美への執着や嫉妬心だけでは心揺さぶられるレベルまでいかず、原作でもっとも感情移入しながら読んでたみなしご佳子(おろち)と一草のやりとりも改変によりばっさり切られてしまっていたので、浮世離れした姉妹のバトルを終始他人事として傍観することしかできませんでした。そんなだから、お目当ての谷村おろちが屋敷を去り「私はこのとき、本当の恐ろしい結末を知らなかった」と言われても、この先の展開は原作読んでるから既に知ってるし、「ああこんなものかあ。原作なぞるだけだと意外に話としては盛り上がらないなあ」なんて思いながらひとりエンディングモードに入ってたら、ここからまさかの大逆転。子供時代の話から延々と順序立ててみせてきたのも、すべてはこのためだったのかと。なんという前フリ! 子役の二人が木村・中越の二人にとてもよく似ていたので、20年という歳月も一瞬で縮まり、ふたりの思いが一気になだれこんできたことで、非常に余韻を残すエンディングとなりました。


↓↓↓↓↓↓以下、結末に関するネタバレあり。↓↓↓↓↓↓


監督によると、当初木村佳乃とは似ても似つかない顔立ちの子に一草の子供時代を演じさせようとしたとか。でも、いまの子にして正解だったと思う。才能は及ばずとも、顔立ちだけはどこか似ていたからこそ、一草は自分が母に似てることに固執し、成長によって変わりゆく顔立ちを整形によって食い止めようとしたのではないかという受け取り方もできて、より愛おしく感じられるから。