眼底検査の帰り道で“色彩の暴力”を受ける

ここ1,2年、急に飛蚊症がひどくなってきたんで眼科で診てもらうことにした。


一通りの視力検査を受けた後、【眼底検査】ってのを受けることになり、看護士さんから「5,6時間ほどモノが見えにくくなるので、その間、車や自転車の運転ができなくなるけど大丈夫ですか?」と問われ「乗らないので大丈夫です」と答える。すぐさま瞳孔を開く目薬をさされて待つこと20分。目頭がどよ〜んとして鏡で瞳を見たらありえないぐらい瞳孔が開いて「うおぉすげえ!」とちょっと感動。看護士さんに「眩しくないですか?」と聞かれたけど、そもそも裸眼で視認できる視界が半径15センチぐらいしか無い身としては、まわりの景色がぼんやりしすぎてよくわからず、「なんとなく明るくなった気がします」と曖昧にお返事。


そしていよいよ眼底検査。なんかトロトロした目薬をさされて目になにかを装着させられ(目薬でよく見えん)、ライトをあてられながら「天井見て」「右上見て」「右横見て」「右下見て」と言われながらひととおり検査終了。トロトロした目薬を洗い流し検査報告を聞くと、「生理的なものだから心配ない」とのこと。近視が強いので目の中のゼリー状のなんとかが普通の人より早く液状化して症状が出てるだけとのことでひと安心なのかなんなのか(苦笑)。目の疲れも影響してるのでコンタクトの度を少し落とした方がいいと言われ、乾き目軽減のためにドライアイの目薬を処方された。また、気にするほどではないが右目の網膜に小さな疵があるので定期的に眼底検診した方がいいとも言われた。


帰り際、検査のためにはずしてたコンタクトを装着したら「うわっ!まぶしい!!!」。ああ、看護士さんはこういう反応を期待してたのかと今になって理解。しかもですよ。眩しさに慣れてきたら今度はなんだか周りの景色がいつもと違う。なんというか、そのーあのー、、、


赤が赤い!
黄色が黄色い!
青が青い!
緑がみどりいいいいい!
もう世界がありえないぐらいなんですわ。


彩度が150%ぐらい上がってる。ネガフィルムからリバーサルフィルムに変えた時の感動が甦るぐらい豊かな《色彩の世界》が広がっていて「うわあ!w うひょおぉぉぉおお!w」と大興奮。「すげえ!世界の色ってこんなに彩度高かったの?つーかいま見てる色と今まで見てきた色、どっちが本当の色?また騙されたのか?脳みそに」なんて思いながらニヤケ顔で周囲をきょろきょろ。まるで不審者。でも気にしない。だって楽しいんだもん。


・・・だがしかし、そんな楽しい気分も長くは続かなかった。15分もしたらうるさいのなんのって、アッチ見てもコッチ見ても、黄色、黄色、赤、赤、青、緑、オレンジ、黄色、青、赤、等々の原色だらけで目が痛い。唯一ホッとできるのが白い壁、色のはげ落ちた塗装部分に薄水色の空。町の景色は看板をはじめ車や駐車禁止のコーンなどベタ塗りの原色だらけで目が痛い。無視すればいいんだけど、真っ先に目に飛び込んでくるんだからどうしようもない。ほとほと目が疲れる。【色彩暴力】とはこのことやね。少しでも目を休めるためくすんだ色を求めると、いま自分が歩いてる足元の道路に落ち着く。盲人用の黄色い誘導ラインも塗装がはげていい感じに色がくすみ目に優しい。同じ黄色でも看板の黄色とは大違い(あっちはすこぶる暴力的)。生まれてこの方、薄汚れた道路のコンクリ色を眺めてこんなに心落ち着いたことはなかった。正直、街中の景色は色が多すぎ。【色彩暴力】以外のなにものでもな・・・あ、わかった。きっと楳図先生にいちゃもんつけてたご近所サンもまことちゃんハウスを見た瞬間、驚きで瞳孔が開いちゃったんだ。だから通常より彩度があがって、いまの私みたいにあの赤色が暴力的に感じたんだ。うん、きっとそうだ。


そんなこんなで早く看板だらけの景色から脱出したかった私はまっすぐ帰宅。ちなみに同じ赤、青、黄、緑でも、山の木々や花壇の花々は平気なんだよね。たぶん、「表面積が広い」「ベタ塗り」の「明るい原色」がいけないんだと思う。


しかし、たかが瞳孔ひらいただけでこんなにも見てる景色の彩度が変わるとは思わなかった。もしかして暑い国の人が原色を好むのは、太陽の光が強すぎて瞳孔が閉じ気味だから彩度の高い色を求めて原色にはしるとかそういうことだったりして?(いや、知らんけど)


というわけで色彩の暴力を体験したいそこのあなた! いますぐ眼科へレッツらゴーです!(ちなみに瞳孔が開くと彩度が上がるだけでなく、1,2時間手元の文字が老眼並に見えにくくなるのでご注意を)