『気球クラブ、その後』を観た(@渋谷シネ・アミューズ)

昨夜観てきました。これ、すごい良かった。「最近、世間と感性が逆転してる。今年は世間が誉める映画に難色を示し、世間が貶す映画をぶっちぎりで誉めまくる年になりそう」と書いたばかりでこんなこと言ってもなーんの説得力もありませんが、観に行ける人はとにかく観に行ってほしい。もうちょっとで会社の休憩時間が終わっちゃうので、感想は今晩ね。今日は『硫黄島〜』を観に行く予定だったの取りやめて感想書きに徹するよ!(そんなら昨晩書けって話なんだけど、絶対朝起きれないから)



なんで急いで推すのかというと、もう後残り1週間で上映が終わっちゃうんです! 公開は2/2(金)まで。劇場は渋谷シネ・アミューズ。夜21:10からのレイトショー。とりあえず、松江監督の感想へのリンクと予告を張(貼)っておくんで、是非この機会にご一考ください。松江監督は既に「もうね、見ない人は見ないんですよ」とこちらで諦めモードですが、私はもうちょっと頑張るよ!
『気球クラブ、その後』公式サイト
「気球クラブ、その後」(@松江哲明監督ブログ)
映画『気球クラブ、その後』予告編
『気球クラブ、その後』まもなく公開(12/23〜2/2まで) ←インタビュー等


・・・というわけで感想です。客は20人ぐらい。『紀子〜』より全然若い人が多かった(ああ、無情…)。


園子温監督の「拘り」は時折自分のソレと大幅にずれることがあるのです。だから第一印象でどんなに期待しても心のどこかで「期待とは真逆の結果に終わるかも知れない」ことを観る前から想定してるところがある。だけど、数ある要素の中でもこの人の描く“青春モノ”だけは自分にとって「ハズレないだろう」と半ば確信めいたものがあって(ちなみに『自転車吐息』は未見。いやレンタルには置いてあるんだけどね、できればスクリーンで観たいので)、本作『気球クラブ、その後』も、概要からはさほど惹かれるものはなかったけれどその妙な確信のみで観に行った次第。それがまさか「青春」とは違う部分でこんなにもヤられてしまうとは…。


結論から言うと、これは青春という居心地のいい場所からの巣立ち(決別、と言ってもいいかな)と平行し、あるひとりの女性のすれ違う届かない想いと喪失感を描いた物語で、全てが終わってみれば、それまで本編だと思ってた1時間弱の青春群像劇は、後日談のように付け足されたラスト10分程度の(監督によれば「撮ってる最中にこのままで終わるのはなんかいやだなと思って追加した」)エピソードのために存在してるとしか思えない構成にまんまとはめられ(いや、勝手にはまっただけです)、ラストのホントに素晴らしい1カットを見せられた直後の暗転→エンドロールでもうだめ。これまでのあんなシーンこんなシーンが暗闇の中でフラッシュバックし、大切だったあの人を想いが成就する前に永遠に失ってしまった彼女の喪失感が胸の中でどんどんどんどん膨らんで涙が溢れて止まらなくなる。しかもそこで流れる曲が『翳りゆく部屋』ですよ。(本作はこの曲をモチーフにした映画だから当たり前なんだけど)歌詞がどんぴしゃなわけで、それ聞いてたら益々感情が高ぶって号泣しそうになる。正直、ヤバイと思った。いやだって、普通エンドロールってさ、涙をぬぐって現実世界に戻れるよううまく気持ちを抑え込む時間でしょ? そんな時間帯に更に泣けといわんばかりの追加カットまで入れてくるなんてどういうことよ! こんなに深い「想い」を渡すだけ渡してあっさりと幕を閉じちゃうなんて、ほんとズルイわ。受け取った私はどうしたらいいの? ねえ、どうしたらいいの? 今更どうしてあげることもできないのに。私はもう早くその場から出たくて出たくて明かりがついた瞬間そそくさと劇場から飛び出しエレベータに乗り込んだよ。もちろん誰にも乗り込まれないように速攻「閉」ボタン押したもん。そして1階に着くやいなや夜の街を走り出した。ほんと夜でよかった(昼間に泣きながら走る女って絶対ヤバイと思う)。帰り道、ずっと曲が頭の中で流れ続けた。気を抜くとすぐ彼女が最後に見せた精一杯の笑顔が頭に浮かんでそのたびに「ああ、報せを受けたとき彼女はどんな気持ちだったろう」と考え始めたらまた涙腺ガーッてゆるんで号泣モードに入りそうになるから、帰りの電車ではなるべく彼女のことを考えないように努力。でも余韻には浸っていたくて、いつもならすぐipot取り出して音楽聴くところを、ずーっとずーっと『翳りゆく部屋』ばかり頭の中でヘビロテしてました。

『翳りゆく部屋』唄:畠山美由紀 作詞・作曲:荒井由美


窓辺に置いた 椅子にもたれ
あなたは 夕陽見てた
なげやりな別れの気配を
横顔に ただよわせ
二人の言葉は当てもなく
過ぎた日々をさまよう
振り向けば ドアの隙間から
宵闇が しのび込む
どんな運命が 愛を遠ざけたの
輝きは戻らない 私が今死んでも

わたしもうこの曲、普通の感情では聴けないです。この歌詞読むとまた彼女の想いが胸の中に溢れかえって涙がとまらなくなる。
(全然関係ないけど、『翳りゆく部屋』って椎名林檎ヴァージョンもあったんだね。こちらで視聴できます。ユーミンBEST買おうかな。)


彼女のことならあと何十行でも書けるし、それ以外のことにもまだネタバレしつつ書きたいこといっぱいあるんだけど(人々の「温度差」とかね)、終わらないのでとりあえずここまで! 彼女が誰なのか察しはつくと思うけど、一応伏せておきますので、劇場で確かめてみてください。