『ある朝スウプは』を観た(@ユーロスペース) 

『運命〜』とはうってかわり、30〜50代ぐらいの男性が8割を占める客層。平日レイトということもありサラリーマンが多かった。客は30人ぐらい。


映画の詳細は以前の日記を参照。


同棲中のカップルの日常生活におけるやりとりが丁寧に、且つ淡々と描かれていて、役者の演技が皆とても自然だったこともあり、まるで、病気と宗教によって徐々にその関係が崩壊してゆく実在するカップルを撮り続けたドキュメンタリーのようだった。病に苦しみ、心の拠り所を徐々に宗教へとシフトしてゆく彼氏に対し、いつかは元に戻れるんじゃないかと、優しく根気よく語りかけ続ける彼女の報われない努力が延々と続く。病気による苦しみがすれ違いの根幹にあるため、観終わった後になんともいえないもやもやとした感情が残った。監督は本作を「新興宗教についての映画でもパニック障害についての映画でも無い」と言ったけれど、観てる最中次々と思い出されたのは、鬱病に苦しむ友人のことや新興宗教に嵌った高校のクラスメイト、そして病気で亡くなった父の看護をしてた時のことだった。二人の間に溝を作った直接の原因が病気と宗教にある以上、私自身はそのこと脇に置いて本作を観ることはできない。苦しんでる人が欲しいのは、愛情や優しさ、思いやりなどではなく、救いと真の共感だけだと言われたら、周囲の人間は手も足も出せやしない。この映画はそういう見たくない現実をつきつけて終わる(『海を飛ぶ夢』のように・・・)。物語の終盤で、今まで自分の気持ちをなかなか語らなかった彼氏が、「だったら病気の半分をもらってよ」と彼女に叫ぶシーンがあるけれど、それに対する彼女の返答には彼女の側から見た真実が含まれている。


ちなみに次回のPFFスカラシップはこの高橋泉×広末哲万コンビ(群青いろ)の作品だそうです。また、新作『阿佐ヶ谷ベルボーイズ』が現在アップリンクXで9/9(金)まで公開中(詳しくはこちら)。頑張って観に行かねば。