『ピンクリボン』を観た(@アップリンクX)

アップリンクX初体験してきました。1階がレストランだって言うから、間違ってレストランの入口から入ってしまった(汗)。劇場へは、レストラン手前のビル入口から入るようです(って普通分かるって)。店員さん、お手数かけました。このご恩は飯食って返します! 朝一ということもあってか、客は4人。映画が始まると場内は真っ暗。視界にはスクリーンしかなくなるので、途中から入場する人は気をつけてください。


映画の詳細は以前の日記を参照。んで、感想です。


インタビューされる人々の魅力がそのまま映画の魅力につながってるといった感じですかね。60歳を越えたおっちゃんたちが皆、実に楽しそうに昔話をするので、一気に引き込まれてゆきました。関係者へのインタビューがメインで、主に登場するのは、若松孝二渡辺護ら'30年代生まれの超ベテラン監督陣と、製作・配給を担当してきた裏方陣(新東宝の営業部長やプロデューサーなど)、そして現在第一線で活躍している現役監督たち。池島ゆたか、女池充といった現役監督の撮影現場にも密着しており、ピンク映画のアフレコ風景など貴重な映像もあって、これが非常に面白かったです。からみシーンなんか見ると、ほんと体力勝負だよなあと思う。それと撮影に使ってるカメラの音がものすごいね。よくあんなうるさい中で演技に集中出来るなと感心しました。ピンクと一般、両方の作品に女優として出演していた吉行由実監督の「NGが許される分、一般の現場の方がピンクより…」という話にも納得。


互いの悪口(?)を長々と楽しそうに話していたのが渡辺・若松両監督。二人とも同じような間で「いまのはカットしてくれ」と頼んでおり(故に劇中では全て早送り)、仲がいいんだか悪いんだかな状態が微笑ましかったです。この二人によるトークショーがあったらえらい面白そうだけど、確実に暴走しそうで司会者は大変だろうな。現役代表で登場した池島監督もエネルギッシュで饒舌。語り口がこれまた楽しかった。


そんな中で、唯一頼りなげな姿をカメラに晒し、「監督、大丈夫? ちゃんとした映画ができあがるの?」と終始ハラハラさせてくれたのが女池監督。撮影現場では、カットの声をかけるたび床につっぷして悩んでおり、気の長い役者さんですらキレるんじゃないかとドキドキしたり。撮影日オーバーにより急遽助っ人に来てくれた田尻監督がえらい頼もしく見えました。最後にどんな作品が出来上がったのか見せてくれるのかと思ったら、映像が全く無くて残念。エネルギッシュな監督陣が続いた後なだけに、その頼りなげな姿だけ観て「今の若い監督は…」なんてネガティブな先入観を植え付けちゃわないかと少し心配。


黒沢清高橋伴明井筒和幸なども登場するけど、黒沢さん以外は間をつなぐ程度で、四天王に関してはほぼスルー。そのため、全時代を網羅するというよりは、創生期を支えた人々と現役陣との対比がメインになってるように見えました。インタビューにも登場していたPG誌の林田さんは、自身のWEB日記で「四天王についてもきっちり語った」と書いていたので、渡辺護監督ら歴史の深い人たちの話が予想以上に面白くって、現役監督陣を取り上げたら時間的に他世代の監督をつっこむ余裕が無くなったのかなという気がしないでもないです(いや、単に興味が無かっただけかも…寂)。


東宝の営業部長が語る興行エピソードも面白かったです(この人も実に嬉しそうな顔で話すんだ)。実演興行の映像って、残ってないんですかね? 日活ロマンポルノとピンク映画の違いもわかってスッキリ。


監督になりたいと業界に入ってくる若い人がいる一方で、配給を担う裏方さんは後継者不足に悩むなど、ピンク映画を支えてる現状というのはそんなに明るくはない…。業界を実質的に支えてるのは、成人映画館に足を運んでるおいちゃん、兄ちゃんたちだと思うんですが、そっからおこぼれ貰って楽しんでる身としては、他力本願なことしか言えずすまん!って感じですかね。皆さん、長生きして頑張って。


尚、今回撮影風景を密着された女池充監督『花井さちこの華麗な生涯』は、7月に催される「第27回ぴあフィルムフェスティバル」にて上映されるそうです。スパイの発砲事件に巻き込まれたイメクラ嬢が、額に銃弾を受けたことで突然天才になり、とある教授の息子の家庭教師になって国際的陰謀に巻き込まれるというコメディだそうで・・・って、コメディだったのか。劇場でもらったチラシ読んで、いま初めて知った。撮ってる時はめちゃめちゃシリアス映画な雰囲気だったのに。。。


* * * * *


先日『ピンクリボン』を紹介する記事に「公開記念イベントのチケットを買ったのは半数近くが女性だ」と書かれていました。女性客は一体、何をきっかけにして「ピンク映画って(ヌキ目的の)AVとは少し違うみたい」と気付くのだろう。一般映画に進出した監督陣の過去作品を網羅してるうちに気付くのか、映画祭などでたまたま観る機会があって気付くのか・・・。長い間「ピンク映画=AVの映画版」と思っていた私なんかは、【エログロ怪奇映画】で新東宝やら大蔵やら日活ロマンポルノに触れていながら、最近まで全く眼中にありませんでした(恥)。レンタル屋の“一般映画コーナー”に置いてあった『雷魚』を【犯罪映画】のつもりで借りて、実はそれがピンク作品だと知ったときは本当にショックで、そこで初めて「ピンク映画ってこんなのもやってんの!?」と知り、「新東宝」や「大蔵」の名を見つけて、「ああ、全ては天知“明智小五郎”茂のお導きなのか」*1と勝手に悟った次第。



初めて映画館でおっちゃんに囲まれながらエログロ怪奇映画を観たときも、ピンク映画の世界を知ったときも真っ先にこう思ったもんです。「くそー、おっちゃんたちばかり楽しんで(嫉妬)」。漫画は女の方が得だけど、映画は男の方が断然お得!



*1:そもそもエログロ嗜好に走らせたのは、全てこの方のせいなんです。