『コーラス』を観た(@シネコン)

客は60人ぐらい。ほとんどが女性で10代から70代までまんべんなくといった感じ。


映画の詳細は以下の通り。

『コーラス Les Choristes』 05年4月9日公開


【監督】クリストフ・バラティエ【製作】ジャック・ペラン他
【出演】ジェラール・ジュニョ/フランソワ・ベルレアン/ジャン=パティスト・モニエ
【合唱】サン・マルク少年少女合唱団
97min/シネスコサイズ/フランス/2004年


【STORY】1949年、フランスの片田舎。親のない子供、非行少年など、様々に問題を抱えた子供達が暮らす寄宿学校。校長や教師は厳しい懲罰でしつけていたが、彼らの問題行動がおさまる気配はなかった。新しく赴任した音楽教師クレマン・マチューは、合唱隊を結成し、音楽によって子供たちの心を掴もうと試みる。次第にコーラスの魅力にはまってゆく子供達。しかし学校一の問題児モランジュだけは別だった。ある日マチューは、モランジュが素晴らしいボーイ・ソプラノの持ち主であることを知る。彼の加入により更にまとまりを見せる子供達。しかし、新たな問題児モンダンが転入してきて……。


主役の音楽教師はもちろん、校長や用務員のおじさん、体育教師など大人の役者は皆良かった。一番の売りであるコーラスは歌声・楽曲共に申し分ないし、子供達も魅力的。物語の途中でモンダンという名の悪童が出てくるんだけど、こいつがまたいい顔してんだ。奇跡の歌声を持つ少年モランジュについては、サン・マルク少年少女合唱団のソリストだけあって、彼がコーラスに加わるだけで一変するほどの歌声(ただし役者としての魅力は…)。


「フランス中を涙で包んだ感動作」と謳われてるけど、映画自体は非常にあっさりとしていた。「淡々としてるけど心に染みわたる感動がある」という類の映画でもない。だから、この手の映画で通常得られるカタルシスを求めて観に行くと肩すかしをくらう。


理由はたぶん、音楽教師マチューの目線で物語が綴られてることにあると思う。教え子のひとりペピノが、今や有名な音楽家となったモランジュの元にマチューの日記を届けるところから物語は始まり、その日記を元に寄宿舎での出来事が綴られてゆくわけだけど、たびたび入るマチューの心の声といい、綴られてる視点といい、非常に一方的というか利己的なんだ(笑)。


こう言うと自分のことしか考えない嫌な教師みたいだけど、マチューはすごくいい先生ですよ。お人好しで子供好きで。でも野心的で、ちょっと自分に酔ってるとこもある(笑)。それが行動や言葉の端々に見え隠れするので、もうちょっとベタな人物像の方がすんなり感情移入できるのになあという感じ。モランジュとの母親の件でもそうだし、別れのシーンもそうだし。


役者と音楽は魅力的だけど、脚本自体はほんとよくわかんない所が多い。中途半端に投げてる話がいくつかあって、特に悪童モンダンの件なんかはそう。モランジュの母親の描写も不可解だし(自分のことで手一杯で子供にまであまり気が回らないという感じ)、校長についても、冒頭で「校長はトランペットやってたから気が合うかもしれない」なんてマチューに言っておきながら、結局最後まで音楽に理解を示さなかった…。



「コーラスが良ければ多くは望まないよ」という人には絶対オススメだけど、そうでない人は過度な期待をしない方がすんなり楽しめると思う。