『くりいむレモン』を観た(@テアトル新宿)

昨年10月の公開最終週にテアトル新宿で観てきました。客は40人ぐらい。大半は20−40代の男性客で、そこに20代の女子がちらほら混じってるといった感じ。前の時間が『透光の樹』だったこともあり、二連ちゃんで観てるサラリーマンも結構いた。ちなみに『透光の樹』の客層は40,50代のおばさま、おじさまばかり。男性も女性も会社帰りの人が多く、いそいそと帰る姿が不倫カップルのようで素敵(笑)。


映画の詳細は以前の日記を参照。んで、感想。



やっぱキャスティングはいいんだよね。お兄ちゃん(水橋研二)も亜美ちゃん(村石千春)も。妹を女として意識し始めた兄と、そうとは知らずに応対する無防備な妹による会話の間合いなんて絶妙だったし。ただ、一線を越えた後の描写がいまひとつで、絡みのシーンが多い分、物足りないなあという気持ちばかりどんどん蓄積されてしまった。せっかく『くりいむレモン』という題材に挑戦するんだから、監督にはもうちょい頑張って冒険してもらいたかったなあと。あの二人なら、その気になればもっとやれると思うんだけど、監督ひとり腰がひけちゃってる感じがして。一線越えて愛し合う二人にもうちょっと近づいて、あと一歩踏み込んだ画を撮って欲しかった。こう書くと「絡みが少なくて不満なのか?」と思われるかもしれないけど、そうではない。兄妹の絡みは想像してたよりかなり多くて、それこそサルのようにやりまくってる。でも、映されてるのは「行為」であって、二人(特にお兄ちゃん)の「内面」はあまり見えてこなかった。


物足りない点はもうひとつある。本作は、兄妹どうしが愛し合う恋愛映画だけど、設定が機能してるのは途中まで。二人の関係が親にバレて家を飛び出してからは、兄妹設定なんてどこへやら。刹那的な若いカップルの先の見えない恋愛模様を淡々と描く映画に変わってしまった。血のつながってる兄妹だったら、作り手からいろいろ呈示しなくてもこちらであれこれ勝手に妄想する余地があるけど、血のつながらない兄妹をスクリーン上で兄妹らしく見せるには、“幼い頃から兄妹として育てられてきた”という歴史によって培われた<兄らしい妹らしい振るまい>や、親・友人といった<周囲の人間の目>が必要だと思う。しかし家を飛び出した二人にはそのどちらもが欠けていて、これでは兄妹恋愛映画は成立しないって。せっかく『月光の囁き』の水橋研二を起用してるのだから、もうちょっとお兄ちゃんには「男」ではなく「兄」として振る舞って欲しかったなと思う。


とはいっても、タイトルさえ外して貰えば、全体的には好きな作品。ラストの放り出し具合も含め。強面の小沢和義しか知らなかったので、山下敦弘の手にかかるとこんなおかしみのある人に変わっちゃうのかと、そこらへんのギャップも面白かったり。


ちなみにもうDVD出てます。


血のつながらない兄妹恋愛なら『みゆき』の方が良かったかも。こっちの方が監督にはあってたと思う。エロは少ないし、笑いは多いし。・・・あれ? 『みゆき』であってるよね? 『じんべえ』は、、、血のつながらない親子か。。。