『怪奇大家族のツボ』トークショー、清水崇×豊島圭介×村上賢司×山口雄大×SpecialGuest

自主作品上映に続き、『怪奇大家族』の演出陣(清水崇豊島圭介村上賢司、山口雄大)とキャスト2名(高橋一生渋谷飛鳥)を迎えてのトークショーが行なわれた。舞台左から司会者、清水崇豊島圭介高橋一生渋谷飛鳥村上賢司、山口雄大の順に着席。司会のおねえさんは「王様のブランチ」のLILIKOみたいなテンション&リアクションの人で、怪奇系には全くといっていいほど興味ないらしく、微妙に的を外した質疑、相づちにハラハラドキドキしながらも、監督陣がさりげなく中身のある話へと繋げてゆき、トークショー自体は、親戚のおじさん家にやってきた甥っ子姪っ子*1のような非常にアットホームな雰囲気の中でトントンと進んでゆきました。
テレビ東京ドラマ『怪奇大家族』公式サイト



一人一人の簡単な挨拶の後、今回の上映会が“インディーズ時代に撮った”自主作品という触れ込みだったことに対し、まずは訂正を入れる清水監督。監督によれば、今日上映された中でインディーズ時代に撮ったのは山口監督だけ。自分の『怪猫轢き出し地獄』は劇場版『呪怨』と『呪怨2』の合間に撮った作品だし、村上賢司監督に至っては今日のが最新作(!)。「商業監督が自主映画を撮らない(撮っちゃいけない?)なんて大間違いです!」と豪語する清水監督に、「自主制作時代を経て皆さんメジャーに行くのが普通なのかと思ってました」という素朴な疑問をぶつける司会者だったが、「その考えはダメです! 少なくとも僕はダメです」と力強く否定された。ちなみに劇場版『呪怨2』の脚本は豊島監督の『食卓の宇宙人』を手伝う傍らで書き上げた物らしい。


唯一インディーズ時代に撮った作品ということで話を振られた山口雄大監督。「これはどういったテイストでいこうと思ったんですか? 元々ホラーにしようというのがあって…」みたいなことを問われ、「いや、別にこれはホラーじゃないんですけど」とやんわり否定しながら次のように説明した。『名探偵 一日市肇』は、元々「土曜ワイド劇場の天知茂版「明智小五郎シリーズ」みたいなのがやりたい」という願望から撮り始めた作品だそうで、クレジットでは“2001年製作”となっているけれど、実際はその3年前から撮り続けており、完成する前に『VERSUS』*2の撮影が入ったおかげで、2年ぐらい間があいてしまった。しかもその間に主演の坂口拓の顔が変わっちゃったもんで、アップ等を撮り直し、ようやく完成にこぎ着けたのが2001年、ということらしい。司会者に「その2年の間にいろいろと経験を積んだわけですね」と言われるも、「でも全然成長してないよね」と豊島監督に突っ込まれる雄大監督であった。


その流れで司会者から話を振られる豊島監督。『怪奇大家族』は豊島圭介清水崇の共同企画にもかかわらず、清水崇『The Grudge(邦題:THE JUON)』のせいでほとんど日本にいなかったため、一人で皆をまとめなければならず、他の監督がそんな自分をしり目に自分勝手にやりたい放題わがままに振る舞うもんだから、それがイヤでしょうがなかったと。「僕だってそうしたかったのにぃ…」と管理職の苦悩を駄々っ子口調で吐露しては会場の爆笑を誘う豊島監督だったが、「結局何が言いたいかというと、あまり居れないなら飛鳥ちゃんに話を聞いた方がいいんじゃないの?てことなんです」とゲストなのにトークの進行具合まで気にしちゃう一面を見ると、いやだいやだといいつつまとめ役を買っちゃうのは性格なのかもしれないと思った。実は、このトークショー、9時半ぐらいから始まったのだけれど、ゲスト唯一の未成年者である渋谷飛鳥は、大人の事情により10時までしか居れないと冒頭で司会者から告知されており*3、豊島監督は、他の人が話してる間もチラチラと時計を見ては終始時間を気にしていて、時間切れになる前に飛鳥ちゃんに話を振りたくてしょうがなかったご様子。


司会者から、監督の第一印象について訊かれた渋谷飛鳥ちゃんは「監督というのはすぐ灰皿投げちゃうような怖くてわがままな人*4という印象があったけど、実際は皆さん気さくな方で、演技についてもいろいろと学ぶことが多く、いい感じに肩の力を抜いて演じられたと思う」と答えていた。監督が4人いるということについては、演出方法もそれぞれ違うし、最初は監督が替わるたびに緊張したけど、基本的なところはどの監督も一緒だったので楽しくできたそうだ。ちなみに山口雄大監督の回を撮影してる時に、「今日は「恋するハニカミ!」*5があるので3時に上がらなきゃいけない」と、朝から妙にうきうきしており、声のトーンはあがるし嬉しさが体からにじみ出ていて、いつものニヒルな恐子じゃなくなってしまい、その日はNG連発だったそうだ。村上監督からデートの方法を雄大監督に相談してたことが暴露される一幕もあり、終始照れまくりな飛鳥ちゃんだった。ちなみに、その日撮った分は全部ダメだししてやりなおさせたから、ウキウキ恐子は見れないとのこと。代わりに「第7話で、恐子が一回壊れるのでそれを楽しみにして欲しい」と語り、「ご家族揃って『怪奇大家族』を楽しんでください」と一言残して、時間切れとなった飛鳥ちゃんは会場を後にした。


続いて話を振られたのは主演の高橋一生クン。本人はオンエアを見るまで自分が主役だと気付いてなかったらしく*6、のびのびと気負い無く演じることができたのでかえって良かったのかもしれないと話していた。清四役をやるにあたり、特に役作りはしていかなかったそうで、ベースとなる部分は初回の演出を担当した豊島監督にほとんど作ってもらったとのこと。ところが次の雄大監督の回になったら全くテイストの違う作品になってたので、ちょっと悩んだ一生クン。見かねた雄大監督は「10話ぐらいからは戻して欲しいけど、こっからは単発もののつもりで一話一話楽しんでやってほしい」とアドバイスしたらしい。「彼以外ではもはや成立しない」と監督に言われるほどハマリ役の一生クンだが、いつも真面目な役が多かったもんで、ここまで間逆な感じは初めてで、自分にとっても『怪奇〜』はターニングポイントになるような作品だと答えていた。いつもリアクションがおかしい清四君だが、本人に笑わせようと言うつもりは全くなくて、意識してオーバーアクトにするようなことはしてないと言っていた。「それやると『月曜ドラマランド』になっちゃうからね」と懐かしい名前を出す清水監督。一生クンは現場でよく寝ていたそうで、メイク待ちでもすぐ寝てしまうとのこと。アメリカから帰ってきた清水監督が撮影初日に楽屋に挨拶に行くと、やっぱり寝てたそうだ(でも一番寝るのはモロさんで、村上監督によると「秒速で倒れる」らしい)。そんなこともあってか、トークショーの冒頭から「一生は天狗だ」と事ある毎に監督陣にいじられる一生クン。清四役のキャスト選考は当初難航しており、雄大監督が高橋一生の名を出した瞬間は即決だったそうだが*7、そもそも監督が彼の名を思い出したのは、『クロマティ高校』のキャスティング選考で一生クンのプロフィールを目にしてたことがきっかけらしく*8、その話をしてる時も「プロフィールには《天狗》って書いて無かった」とか、「今度からちゃんと書いておいた方がいいぞ」とかあちこちから突っ込まれる一生君。自らも「《天狗》って名前に変えた方がいいですか?」と言い出す始末で…(《高橋天狗》か・・・いや、それはどうだろう?)。司会者が「4人の監督はどうでしたか?」と問いかけたときも、「誰が一番良かったか言えよ」とすかさずつっこまれ「そんなのいえるわけないじゃないですか」と困り果てる一生クンでした。その一方で、監督陣からは演技に関して“引き出しの多い男”と絶賛されるなど、終始仲良さげというか監督に可愛がられているんだなあという雰囲気が漂ってました。


怪奇大家族』は清水・豊島両監督の共同企画である『幽霊vs宇宙人』を観にきたプロデューサーが「これをテレビでやらないか」と声をかけてくれたのがきっかけで作られることになったらしい。二人の企画に呼ばれる形となった村上・山口両監督だが、起用理由について「ムラケンは『呪霊2』っていうくっだらないホラーを撮ってるのでこれはもう絶対合うなと思い声をかけた」と答える豊島監督。司会者から「村上監督はご自身でも出演されるっていう印象があるんですけど」と問われ、「あれは他にやってくれる役者がいないから出てるだけで…」と村上監督。とはいえ、清水監督が演出した回にはしっかり出演してるそうで、「自分の回に出るつもりはなかったけど、たまたま遊びに行ったら出てくれって言われたので引き受けたら血だらけにされた」とのこと(笑)。山口監督は、『幽霊vs宇宙人』のトークショーに参加した経緯もあってか、その数ヶ月後に「テレビでやるかもしれないけどやる?」って言われ、「うん、やる」って可愛らしく答え参加が決まったらしい。

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ドラマは各話毎に脚本家がついているけど、基本的なストーリーは全て、監督4人と脚本の加藤淳也氏の5人でアイデアを出し合い作ったそうで、それぞれのアイデア雄大監督がまとめて物語にすることが多かったらしい。『怪奇大家族』はタイトルに「清水崇presents」と冠してるけれど、ご存じの通り清水崇監督は『The Grudge(邦題:THE JUON)』の全米公開を控え全く日本に帰って来れなくなってしまった。そのため共同企画者であり長年つきあってきた相方でもある豊島圭介監督が、清水監督の分も一人で現場をきりもりすることに。当初の予定では最初と最後の回は清水監督が演出することになってたらしい*9。急遽ピンチヒッターを任されてしまった豊島監督だが、幸運にも、アメリカに住む友人が結婚することになり、その式に出席するため撮影直前に渡米することが出来、清水監督の住まいで打ち合わせをすることが叶ったそうだ(ちなみに「先客」「ラップ音」といった幽霊はそこで考えたらしい)。



会場には、第三怪にババア(素顔)役で出ていた三城晃子さんも来ていました*10。また、『怪奇大家族』のメイクチームも観に来ていたらしく、豊島監督から労いの言葉がかけられる一幕もあった。『怪奇大家族』は普通のドラマと違って、役者よりエキストラにかけるメイク時間が半端じゃなく*11、「一番苦労したチームのひとつ」だそうだ。


そろそろお開きということで、インディーズで作品を作ってる人たちに向けて何かアドバイスをと求めたところ、自分たちのように自主作品がテレビ番組へつながることもあると語る豊島監督。自主とメジャーの違いなんて正直よくわからないし、自主がメジャーへのステップアップになるなんて考えたこともないし、気にせず作りたいものを作ればいいんじゃんと語り「真面目なこと言っちゃった」と照れる村上監督。清水監督はちょっと辛辣で、映画学校などで監督や俳優を目指してる人と話す機会があるんだけど、こういう役をやりたいとかこういう作品を作りたいから俳優や監督を目指してるんじゃなく、俳優や監督という肩書きに憧れてるだけの人が最近は多いと。誰々みたいな俳優になりたい、監督になりたいというのはあっても、それになるために何してるのかと聞けば「いや、特に。何をやったらいいかわからないので」と答えるので意味がわからないと言っていた。それを横で聞いてた豊島監督がおもむろに「質問があるんだけど、一生君は『半落ち』とか真面目な役が多いよね」と切り出すから、会場中が「お、今の話をうけて、プロの役者に何を質問するつもりだい?」と一生クン共々身を乗り出して聞いてたら、続く言葉が「いいなあと思って」。・・・「豊島監督、それは質問?」と皆の頭に?マークが浮かんだ瞬間、監督陣から「ただの感想じゃねーか」と一斉につっこまれたのは言うまでもない(笑)。


ラストに近況報告。山口雄大監督は12月上旬にCSで放送される楳図かずお原作もの*12の1本、「プレゼント」っていう殺人サンタクロースが出てくる話を撮っているそうだ。また、今日上映された『名探偵 一日市肇』とそれより前に作った自主作品『手鼻三吉と2(トゥワイス)志郎が往く』が来年渋谷のアップリンクファクトリーで上映される予定なので良かったら見てくださいとのこと。尚、『クロマティ高校』は来年の夏ぐらいに公開したいんだけど上映先がまだ決まらないので今は忘れてくれとのことでした(笑)。村上賢司監督は、普段は全然ホラーとか興味なくてフランス映画とか宮崎アニメばっか見てるような人間なのに何故かホラーの仕事を依頼されることが多いと長〜いネタ振りで笑かしたあと(笑)、ようやく自分も『怪談新耳袋』への参戦が決まったと嬉しそうに話してました。また、去年作ったドキュメンタリー作品『川口で生きろよ!』が来年、アテネ・フランセ文化センターで上映される予定なので良かったら見てくださいとのこと。高橋一生君は来年の1月『歩兵の本領』という舞台に出る予定で、共演は窪塚俊介的場浩二だそうだ。豊島圭介監督はこちらもまた『怪談新耳袋』を撮るのでその準備。清水崇監督はホラー番長の宣伝。高橋一生君は実際に清水監督のホラー番長作品『稀人』を観たそうで、「ホラーと言うよりは純愛ストーリーで、僕は非常に感動しました」と力強く語ってました。




そんな感じでトークイベントはお開きになったんだけど(舞台後の打ち上げ話などはテレ東公式ページを参照)、出来ることなら後半部分を『怪奇大家族』DVDに特典映像として入れて欲しいね。あのやりとりのバカさ加減は見せたい!(笑) アメリカ直伝!?清水崇豊島圭介LOVELOVEホモカップルとか、いい年した大人が「ち○こさわられたー!」「僕もー!」「僕もー!」とか、意味無しタイトル連呼合戦とか。アホの子みたいに気の合った監督陣でした*13。そういや、監督陣で天然ボケなのは豊島監督だけか? 村上監督は完全にツッコミだし、山口・清水両監督はギャグ言って飛ばす感じだから、これはあれだね、一生くんが居ない時は豊島監督がみんなから弄られてるとみた。間違いない!


ちなみに今夜放送される第七怪「怪奇!呪いのゴスロリでは、トークショーでも言ってたとおり恐子ちゃんが壊れます。コスプレします。お見逃し無く!
(ちなみに来週は松重豊さんがゲストです。)


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言い忘れた…。高橋一生君はテレビで見るより実物の方が100倍カワイイです。実物より冴えない感じに映ってしまうのは監督の嫉妬、陰謀だと思う。


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怪奇大家族―清水崇presents

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【関連過去記事】

*1:もちろん叔父さん(清水)、叔母さん(豊島)、年の離れたいとこの兄ちゃん達(村上、山口)、甥っ子(一生)、姪っ子(飛鳥)ですよ。

*2:坂口拓主演。監督は北村龍平だが、山口雄大が脚本を担当。ゾンビシーンも一手に引き受けている。

*3:それを聞かされた瞬間、一斉に腕時計を確認する監督陣の姿が可笑しかった。

*4:すかさず監督陣から「灰皿投げるのは蜷川幸雄だけだって!」とツッコミが入る。

*5:芸能人がデートするTBSの番組。飛鳥ちゃんがデートした回は、11/5に放映済み。お相手は木村了

*6:オープニングで自分が一番最初に出てきたので気付いたらしい。

*7:ただし豊島監督だけは一生クンのことを知らなかったらしい。

*8:合う役がなくて映画に出演してもらうことはなかったけど、いろんな噂も聞いてたし、いつか一緒にやりたいと思ってたそうだ。

*9:俊雄くんそっくりの幽霊が出てきて「演出は豊島圭介なのに何故?」と不思議に思ったのだけど、そういうことなのか(追記:でもあれは第二怪か…)。

*10:雄大監督が「ババア」と口にするときやけに力がこもっていたのはそのせいか?

*11:だってみんな幽霊なんだもん。

*12:たぶん円谷プロ制作の『楳図かずお恐怖劇場』のこと

*13:そういえば監督の印象を問われた飛鳥ちゃんも、見て貰えば伝わるでしょとばかりに「こんな人たちです」って答えていて、「こんなって…」とトホホ顔な監督陣だった。