自主映画を応援するべく今年から開催された「ス−パーインディーズ映画祭2004」のプログラムGにて、テレ東深夜の人気ドラマ『怪奇大家族』の演出を務める清水崇、豊島圭介、村上賢司、山口雄大の自主作品がトークショー付きで上映されると聞き、先月28日に会場となるテアトル池袋へ行って参りました。客は30代を中心に半分ちょいぐらいですかね。
作品感想やイベント後の裏話はテレ東の『怪奇大家族』公式サイトに載っているので、そちらもどうぞ。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kaiki/news.html#1028
イベントは作品上映→トークショーの順に行われました。上映作品は以下の通り。
プログラムG『怪奇大家族』のツボ〜深夜ドラマへの挑戦状
http://www.superindies.com/contents_g.htm
【上映作品】
『怪猫轢き出し地獄』(監督・清水崇)
『食卓の宇宙人』(監督・豊島圭介)
『地獄便り』(監督・村上賢司 )
『名探偵 一日市肇』(監督・山口雄大)
ダイジェスト版「怪奇大家族」(第一怪から第四怪まで)&第五怪予告
『怪猫轢き出し地獄(「幽霊VS宇宙人」より)』(清水崇監督)
某アニメを元ネタにした化け猫怪談モノ。衣装や小道具、髪型によって元ネタが徐々に明らかにされてゆく様が巧い。主人公・忌野秀一を苦しめる怪猫を、『ロスト★マイウェイ』に出てた植田裕一が鬱陶しさ全開でじとじとと演じてました。笑えるホラーの名手として有名な清水監督。本作は伏線がいろいろと張ってあり、細かいところも気にしながら見てると楽しい。ただし全体的にブラックなユーモアで押しまくっているため、『呪怨』のような怖さと紙一重の笑いを期待する人は注意。
『食卓の宇宙人「幽霊VS宇宙人」より)』(豊島圭介監督)
「これが『怪奇大家族』の原型だったのかー!」と膝を打つ作品。主人公は宇宙人を信じて止まない父。下田城のおやじみたいに自宅屋根でUFOを呼ぶ儀式をしたりします。そんな父に呆れ顔の妻、長男(フリーター)、長女(高校生※非処女)。一人一人の抱え持つ秘密が次々と露わになるものの、宇宙人撃退のために団結した家族は、互いの信頼を取り戻し、崩壊から一転、再生へと向かう感動のコメディホームドラマでした。子供の頃からUFO、宇宙人好きだった人は、お父さんがみせる宇宙人への憧憬に共鳴しまくりか。第五怪「戦慄!貴方好みの宇宙人」なんかはまさにこれなんだけど、演出をあえて豊島監督にしなかったのは意図的?
『地獄便り』(村上賢司監督)
監督が主演も兼ねているセルフ・ドキュメンタリータッチな短編作品。失業したホラー監督が、本物の恐怖映像を撮るべくカメラ片手に放浪し、とある廃墟で出会ったものは…。今回上映された中で唯一まっとうなホラー。彼岸に徐々に波長をあわせてゆく様を追った作品なので、幽霊が出るぞ出るぞと怖がらせるシーンはあまりない。とはいえ、誰もいないはずの廃墟で背後から声をかけられた時の監督の<振り向きっぷり>にはビビッた。リアクション巧すぎですね。振り向いた直後の、背後にぽーんと空間が投げ出される感じもまたリアルで…。この作品だけ見てると、同じ枠なら前クールに放映されてたエロチックホラー『ファンタズマ』の方が合ってるんじゃない?と思うんだけど、『怪奇大家族』で演出したのがキュートでノスタルジック、ほんのり色っぽくて一途な愛にほろっとするミーバー星人&赤線つや子の怪って、全然作風違うんですけど…(汗)。豊島、山口監督に比べ、演出の振り幅が掴めない監督さんです。ホラー作品以外も撮ってるので、『怪奇大家族』はそちらの路線なのかも。ま、そんなことは自分で確かめて来いというわけで、ホラーではないセルフ・ドキュメンタリー作品『川口で生きろよ!』が、来年、アテネ・フランセ文化センターで上映されるとのこと。
『名探偵 一日市肇』 (山口雄大監督)
坂口拓演じる名探偵・一日市肇が大活躍する探偵コメディ。「一日市肇」は今年の夏に公開された板尾創路主演『怪奇穴人間』にも出演したキャラクター。『〜穴人間』で一目見て以来、そのダンディでスマート、且つお茶目な魅力にすっかり虜になってしまった身としては、上映作品中一番のお目当てでした。作品の出来は期待以上で、面白かったし格好良かった(嬉)。4話あり、中でも少女人形ジザベルの活躍する第3話がひたすら爆笑。映画で笑い泣きしたのは初めてかもしれない…。そういえば会場で一人、ものすごくデカイ声でバカ笑いしてる人がいて「すっげーツボにはまってるんだなあ。よしよし」なんて思ってたら、声の主は豊島監督だった模様(公式レポ参照)。主人公の名前は「一日市肇(いっかいちはじめ)」だが、ベースになってるのは「金田一耕助シリーズ」でも「金田一少年の事件簿」でもなく、テレ朝土曜ワイド劇場の名作、天知茂版「明智小五郎シリーズ」。お約束の名探偵による“無理な変装シーン”も毎回出てきます。しかもそれがジザベルの回ではすごいことに…。「え、まさか!? だっていくらなんでもそれは…。ほんとに? 肇ちゃん、ほんとにそれに変装してるの?」 あまりに無理強引な展開に観てたお客さんもあちこちで笑い死に。屍の山が出来上がっておりました。来年、渋谷のアップリンクファクトリーで上映されるということなので、これは是非観て体験していただきたい。