『ボクらの時代 笑う門には親子の絆SP』トーク、柄本明×柄本時生×柄本佑×角替和枝(柄本ファミリー)

正月に放送された特番でのトークがあまりに面白かったので全篇ノーカットでご紹介しておきます。生々しい親子の会話と唐突に繰り出される母と弟の奇跡的天然ボケが爆笑の仕上がりだったにもかかわらず、13分という非常に短い時間しか放送されなかったのが残念。是非通常の30分枠でまた呼んでもらいたいです。もしくは「柄本家が選ぶ今年の邦画ベストワン」を毎年の恒例行事にしてください。

和装姿の四人がおせちを前にまずはビールで乾杯(※時生クンは未成年なのでお茶で乾杯)


全員「あけましておめでとうございます!(とグラスをつきあわせる)」
「あんまりこうカチカチ(と音を立てて)やっちゃいけないんだよ。」
明「そうなの?」
「うん。」
和枝「(ビールをぐいぐいと飲み干し)うま〜い!」
明「じゃあ、いただきましょう。」
和枝「いただきま〜す!」
時生「俺はこれ欲しいな。ひとつ。」
和枝「いきなり伊勢エビですか?」
時生「だから喰ったことないからさ。」
和枝「どうですか? 生まれて初めての伊勢エビは。」
時生「うん・・・(しばし口の中で伊勢エビの味を確かめる)」
和枝「どう?」
時生「・・・お!(「やべえこれ超うめえ」って顔したまま微笑みが抑えきれない)」
和枝「(笑)」
明「(※なんか言ってるが声が小さくて聞き取れない)」
和枝「あたし? 久しぶりに四人揃うのは珍しいからさ。」
時生「四人揃うって滅多にないからね。」
明「佑とは映画館で会うね。」
「そう。オヤジとはよく会う。和枝ちゃんとも会ったことあるよ。」
和枝「そうなんだよね。だいたいね、家で会わない。」
「会わない。」
時生「映画館で会うんだよ。」
和枝「何ヶ月も家で顔見ないなあと思ったら映画館で会うというさ。」
「オヤジがなんかのロケの帰りでね、だってこんなガラガラ*1持って映画館に居たんだもん。」
時生「なんで会うんだろうね?」
「去年面白いの多かったよ。」


和枝「去年見た映画でナンバーワンは? as ナンバーワン。」
「去年 as ナンバーワン・・・(考え中)」
時生「俺は『ぐるり(のこと。)』かな。」
明「俺は足立正生。・・・あれは一昨年か?」
「あれは一昨年だよ。」
時生「『テロリスト(幽閉者)』でしょ?」
時生「それは、だってそしたら俺もそれを言うもん。」
和枝「自分が出てるとこの子(時生)さあ、意外とね、身びいきがあるのよ。」
時生「・・・“身びいき”?」
「ほら自分が出てると…」
明「いやそれは本人が…」
時生「“身びいき”ってナニ?」
「だからそれはあの・・・」
(しばし微妙な沈黙が流れる)
時生だから“身びいき”って意味を教えてくださいよ!
明「・・・やっぱり勉強が出来ないよね。(一同笑)」
「大学はムリだな。」
明「だって何度も呼ばれたもんな、学校には。」
和枝「何度も呼ばれた、学校には。それで学校に呼ばれた後にさ、とくとくと二人で…あたしもう切なくなっちゃうからさ、コーヒー一杯飲まないと帰れないわけよ。そいでさ、時生と二人で珈琲屋に入ってコーヒー飲みながらさ、(時生に)『何度も呼ばせないでくれるか?』って言うの。『ガンバレよ!』みたいなことを言うんだけど、また何ヶ月か経つと…」
「こいつの頑張りは全然頑張らない頑張りだよ。」
明「(爆笑)」
「ホントにおまえの頑張りは頑張らない頑張りだよ。なんなの? あの頑張り。」
和枝「そいであんたたちの学校は遠いじゃん? 遠いからさ、一日仕事なのよ。」
時生「オヤジも夜9時頃に来たときあったよね。」
明「ある。」
「そうすると、オヤジが行くとまた怒るでしょ。」
時生「オヤジ怒んないよ。」
えっ?!
和枝「怒んないよね。」


「俺、昔から思ってたけど、和枝さんに怒られるときってさ、笑いを我慢するのが…」
全員「(爆笑)」
「笑っちゃうんだよねえ。」
時生「笑っちゃうよね。」
「和枝さんが怒ってるのってすげえ笑えるんだよ。」
和枝「なんで?」
「スゲエ真剣に怒ってるとき…」
時生「ほんとに、ほんとに笑けてくるんだよね。」
「あのー、『なんで勉強しないんだ』っていう話、、、『なんでおまえそんななんだ?』って話をしたときに、『あんたは、マリオとかゼルダから何を学んだんだ! 諦めない心だろ!』って言ったときは俺ビックリしてもう。」
全員&スタッフ「(大爆笑)」
「だってそれで笑うと『何笑ってるんだ?』っつってまた怒るんだよ。」
和枝「だってそうじゃーん! だってあんな大変なゲームを最後までやりきるなんてさあ、何を勉強をするのよ。“諦めない心”でしょ?」
全員「(笑)」


「で、どうですか? ボクと時生くんが俳優になってるのは。」
明「いや別にあれだけど、家庭環境は家庭環境だから、まあそういうとこでは普通の家と違うかもしんないけど、どうなんですかね?」
時生「だってニイチャンが『美しい夏(キリシマ)』の時は嬉しかったでしょ?」
明「そりゃ嬉しいよ。」
時生「やっぱり嬉しかったでしょ?」
明「そりゃ嬉しいよ。時生だってそうだよ。」
和枝「時生の『すべり台』のときだって嬉しかったよ。すっげえ嬉しかった。」
時生「俺がやるって話をしたときは、和枝ちゃんはなんか『やめろやめろ』っていろんな人に言ってたね。」
和枝「そんなことない。やめろやめろなんて言ってない。」
時生「言ってなかったっけ。」
明「でももう同じ仕事をしてるということの利点で言えば、やっぱり仕事の話が出来るって言うのはあるよね。」
「(時生に向かって)オヤジとか和枝さんが出てるのは全部見るでしょ?」
時生「全部はムリだね。」
「全部はムリか。」
和枝「見切れないでしょ。」
時生「全部は見切れない。」
「新作は見るでしょ?」
時生「新作は見る。」
「結構オヤジはいっぱい出てるんだよ。オヤジも和枝ちゃんもいっぱい出てるの。」
時生「そう。で、最近俺がちょっとビックリしてることは、ドラマ出たでしょ?」
「あ、『流星』!」
時生「『流星の絆』。それにちょっとビックリしたのね。珍しいじゃん。映画じゃなくて連続ドラマに出たっていうのが。」
明「そりゃあ札束になることだからさ、呼ばれればどこにでも出ますよ(とはぐらかす)。」
和枝「息子さんたちはさあ、例えばお父さんが役者でいらっしゃるわよねえ。」
時生「うん。」「はい。」
和枝「そういったときにアドバイスとか戴いて、これは大事な言葉だなあとか思われたことござる?
時生「・・・ござる?
明「(笑)」「誰?」
和枝「(照れ笑い)」
時生「ごめん(笑)。オヤジは結構言うよね。」
「結構言うよ。『客はバカにしろ』って。『敵なんだからなー!』って。」
明「ああ。」
「仲良くしようとすると。」
和枝「『客と仲良くするな』っていうのはよく言う。」
「『ちょっとでも近づいてみようとしやがれ…』みたいなのを怒鳴ってるのをあそこで初めて聞いて、それは勉強になってる。それは覚えてる。」
時生「俺はあと『声』って言われた。」
「うん。『声を探せ』って言われた。」
和枝「そうそうそう。それはわかる。でもわかんないでしょ? 言われても。声を探せってどういうことなんだろう?って。考えるでしょ?」
(「いいや大丈夫。二人はわかってるよ」って感じのジェスチャーをする明)
「でもそれは…」
時生「それはなんとなく。」
和枝「それは身に付く? っていうか勉強になる?」
「勉強になる。」
時生「勉強になる。全然勉強になる。」
「(時生と二人で明の方を見ながら)オヤジほど素晴らしい人はいないよ。」
時生「(半笑い顔で)ほんとだよ。」
「勉強になる。」
(二人におしぼりをなげつけようとする明。避ける二人。)
時生「父親の“形見(かたみ)”だよ。」
全員「・・・(爆笑)」
「(時生の頭をペシッと叩きながら)もうほんとに、ほんとに、学が無いのがもろバレ。」
時生「(苦笑い)」
明「おまえだから何度も何度も学校に呼ばれたんだよ。なんて言ったの?いま」
「父親の“形見(かたみ)”って言ったんだよ。」
時生「“鑑(かがみ)”って言おうと思ったんだよね。」
「“鑑”って言おうと思ったのに“形見”って言っちゃったのか。」
時生「うん。」


和枝「私が思うにね。あんたたちはやっぱり劇団の子だなって思う。小さいときからさ、常に劇団ってものが身の回りにあってさ、学校から帰るときに本多劇場に「ただいまあ」って帰るわけじゃん。」
時生「そうだったね。」
「ああ、そうだったねえ!」
時生本多劇場が家的な感じだったんだ。」
和枝「小学生だからランドセル背負って本多劇場にただいまーって帰ってきて、一日遊んで、夜の公演が終わるまで夕飯も弁当買ってきて楽屋で食べて…」
時生「うんうんうん。」
和枝「それで一緒に帰る。そういう生活してるからね。」
「面白かった。」
和枝「あのさ、そでが暗いじゃん。劇場って暗いじゃん。それが子供心にも楽しかったんじゃないかなって思う。あんた楽しそうだったもん、来るとさ。」
時生「楽しかった。迷路みたいだしさ。」
和枝「だからさ、あんたたちは特殊って言っちゃあ特殊だよね。だからこれからもまあ仲良く…」
時生「締め?」
和枝「うん、してもらいたい。」
時生「いやでもあの…」
「だから《ET×2》*2っていうのを(二人で)作ってるから。」
和枝「まあこれであんたたちに彼女ができてよ、結婚でもしてみなさいよ。あんたたちがどれだけ女の意見に左右されるかって考えたら、あたしゃほんとに暗澹たる気持ちになるね。」
明「おい、言ったれ(と時生をうながす)。」
時生「(和枝の方を向いて)来月から、ワタクシ、一人暮らしをします。」
「(和枝に向かって)・・・だって。」
和枝「(憮然とした表情)」
「どこ?」
時生「祖師谷。」
和枝「(無言で首を横に振る)」
「(時生に向かって)ダメだって。」
和枝「なんで祖師谷なの?」
明「知り合いが多いからいいんだって。」
時生「何故かって友達が多いんだよ。」
和枝「ほーら、見なあ! 友達が多いんだって友達とつるんでさあ、わいわいわいわい言いたいがために一人暮らしをするんだったらさ、そんなの意味ねえじゃん!」
「意味無い。」
時生「ああほらもう、だんだんこういうこと言い出す。」
「ちがうちがう。」
明「なにをしようと一人暮らしだよな。」
時生「そうだよ。ねえ。」
「いや、一人暮らししたいのもわかるけど…」
和枝「だって一番さみしいと思ってるのはさ、えもっちゃんだよ。」
「あきちゃん結構寂しがり屋だからね。」
時生「あきちゃん♪」
「あきちゃん♪」
明「・・・うっせーよ(と照れ笑い)。」
「だからなんかルールを作ろうよ。一人暮らしするならするでいいから、ルールを作ろう。週1で帰るとかさ。」
時生「ああ、それは約束した。」
「みんなが居る時間に。」
時生「ニイチャンもだよ。」
「いや俺も帰りますよ、それは。」
和枝「(憮然とした表情で)嘘ばっかり。」
「(苦笑)」
時生「ニイチャンも結構嘘つくよね。」
和枝「嘘ツキだよ!ほんとに嘘ツキだよ!」
明「嘘つきじゃない人間なんていないもんなあ。」
和枝「えもっちゃんそう言いながらさ、なんかさ、達観したようなイメージ大事にした発言するのやめてくんない?」
時生「(笑いながら)そうだよ、そうだよ。」
「イメージ発言だよ。やだよねー。」


和枝「こうしてるとずっとこのままで終わっちゃいそうなので、今年の抱負。」
時生「どっちから? 俺から? ニイチャンとまた芝居をやると思うのでそれを頑張るのと…」
明「学校は?」
時生「大学? ・・・どうなの大学は? 行ってほしいの? 和枝ちゃん。」
和枝「うん? もういいな、どうでも。」
「もういいよ。別に。」
和枝「やりたいことがあるんだったらさ、大学に…行きたいんだったらさ、行けばいいし。」
時生「その代わりお金は(和枝ちゃんが)払うんだよ。」
和枝「自分の金で。」
時生「え? なんで俺が出すの。」
和枝「苦学だよ、苦学。」
時生「やだよ、そんなの。」
「(俺の今年の抱負は)早寝早起きだね。」
時生「ずるいよ、それ。」
「ほんとに早寝早起きだなと思うから、最近夜寝るの遅いし。(次は)和枝ちゃん。」
和枝「そうだなあ。私はとにかく『秘密の花園*3だね。それを成功裏に納めて。」


和枝「(時生に向かって)あんたニイチャン好きだよねえ。」
時生「俺ニイチャンねえ、ニイチャンよりカッコイイ人間いないと思ってるから。」
「(得意げな顔で親指をつきだす)」
時生和枝「(笑)」
「明、ヨロシク!(とオヤジに握手を求める)」
明「(差し出された手をはたく)」
時生和枝「(爆笑)」
和枝「どこが好きなの?」
時生「あのね、どこが好きなの?って聞かれたら何も出てこない。」
「なんだよ、それ。」
明・和枝「(笑)」
時生「だけど、俺は大好きだよ。」
明「でもね、兄弟仲いいのがずーっと続いてね、結構金銭問題なんかでものすごく仲悪くなったりすると大変なことになりますよ。」
和枝「あ、意外にね。」
「長い目でみればってこと?」
和枝「オヤジの遺産相続みたいなことになってさ。」
「つーか、新年いきなり死ぬ話はやめようよ。」
和枝「ああそうだね。めでたくないね。」
明「・・・抱負は言ったの?」
時生「抱負は言ったじゃんか。」
明「そうか。」
和枝「はい、親方様。」
時生「親方様。」
明「佑がさっき言ったように、“早寝早起き”かなあ。」
和枝「(笑)」
「なんだよ。」
時生「やめろよ、それ。」

コレはね、動画で見た方が断然面白いのだが致し方ない。オヤジが「足立正生」って言って、息子二人が即座に「テロリストでしょ?」って返せるあたりが柄本親子らしいですね。実に仲のいい親子でした。


*1:仕草から察するにキャスター付きの旅行鞄

*2:「いーてぃーかけるに」と読む。柄本佑・時生による演劇ユニット

*3:1月から始まる舞台。演出:角替和枝、出演:柄本明ほか