CX『ボクらの時代』トーク、三谷幸喜×佐藤浩市×吹石一恵

本日の出演者は、6/7(土)から公開される三谷幸喜監督、佐藤浩市主演『ザ・マジックアワー』の宣伝のためにブッキングされた“Wコウちゃん”の二人と、『新選組!!』で三谷脚本に参加し、佐藤とは『雪に願うこと』『魔界転生』等でも共演してる吹石一恵前回採録した三谷常連メンバーのトークにも通じる話が出たので個人的にメモしときます。ちなみに来週は真木よう子×江口のりこ×タナダユキだよ〜!

吹石「まず一番にあったのは私の中にあるイメージじゃない佐藤浩市さんがいたと思うんですよ。『ザ・マジックアワー』の中に。あ、こんな浩市さん見たことないっていう浩市さんがいっぱいいて、あれは…」
三谷「・・・まあ、佐藤浩市のことは置いといて(笑)」
佐藤「僕的にはもう(その感想だけで)充分なんで」
三谷「まあ嬉しいですよ僕だって。監督ですから。佐藤さんが光ってるっていうのは。そりゃあ僕は嬉しいけども、まあそればかりじゃないはずなんですよ、良さは。(笑いをこらえるフッキー)」
佐藤「あの、ナイフ舐めの一連とかね」
吹石「あそこ大好きでした!」
三谷「あそこは面白かったですよね」
吹石「あそこは脚本に全部書いてあるんですか?」
三谷「(一瞬固まり)・・・ま、な、何を言ってるんですか(焦る三谷)」
吹石「ええっ?(三谷の思わぬ狼狽ぶりにテーブルの上にあった花の置物を抱えて声もなく笑い出すフッキー)」
三谷「ちょっとそれ置いといてください。(フッキーから取り上げた置物を定位置に置き直しながら)ナニ言ってんの? 僕の映画だよ?」
吹石「はい、だからちょっとあの作品を見た後、可能ならば台本も読ませていただきたいとちょっと思った・・・」
三谷「(佐藤に向かって)だから僕の大ファンなんですよ」
佐藤「決めつけて」
三谷「卒論は僕のことなんでしょ?」
吹石「はい。ただなんだっけ・・・“三谷幸喜論”とかではなくて…」
三谷「タイトルなんでしたっけ?」
吹石「ひとり芝居における・・・なんか考察みたいなそういう…」
三谷「あのー、『なにわバタフライ』」
吹石「はい、戸田(恵子)さんのひとり舞台の台本を幸運にもお借りすることができまして、その節は…」
三谷「(佐藤の方を見ながら)まあ、それは僕のおかげっていう・・・ことですよね」
吹石「ありがとうございます」
三谷「でまあ、今回の映画も脚本を書いたのは僕で・・・」
吹石「そうですねえ。すっごく楽しかったんですよ、映画。あっという間でぐいぐい見入っちゃって、それでいろんな人が出てくるじゃないですか。メインキャストの他にも『え? こんな人がこんだけしか出てないのにここにも出てる!』『え? こんな人も?こんな人も?』っていう人がいて、すっごく楽しかった反面すっごく羨ましくて、その日の夜寝れなかったんですよね」
三谷「何故あたしがここにいないのかって?」
吹石「いないなあ・・・と思って」
三谷「ああ・・・なんでいなかったんですかね?(と佐藤に振る三谷)」
佐藤「(笑いながら)なんで俺に振る? 意図が分からないんですけど」
吹石「あのー、すごく私まだ子供の部分があるので、『新選組!!』が終わった後、三谷さんの『また吹石さん絶対に仕事しようね』っていう言葉をずっとここに持って、あれからもう3年ぐらいですかね。いつ来てもいい…」
三谷「いやあの、僕はウソは、ウソはつかないですから(笑うフッキー)、ほんとにイイ女優さんだなと思って…」
吹石「言ったんですよ! 浩市さん聞いてください。私には『3年後か4年後ぐらいに一緒にしよう』みたいな話を頂いてて、次のときには『そうだね。二十代のうちにはね』みたいなことになってて、なんかあたし足りないのかなあと思って、むしろそれを聞きに今日私はここへ参りました」
佐藤「ああ、それはじっくり聞いて頂きたい所ですねえ。やっぱ僕ら使われる側なんでね」
吹石「そうなんですよ!」
佐藤「それが弱いところですよね」
三谷「俳優さんていうのはどういうモチベーションで普段過ごしてらっしゃるのかなあっていうのがすごい気になるんですよね」
吹石「おっと、質問返しですか?(笑)」
三谷「ん? なにを・・・」
吹石「ずるいな〜〜〜」


(ここで佐藤・三谷が頼んだクリームソーダと吹石の頼んだウーロン茶(氷なし)が来ていったん休止。ひとしきり二人がクリームソーダについての思い出話をした後、フッキーが本題に戻る)


吹石「そろそろさっきの質問に戻っても…」
三谷「あ、あの舐めるところ?(「また話逸らされた」とばかりに声もなく笑うフッキー) 舐めるところは、あれは僕、台本には書いてあるんですよ。で、『3回ナイフを舐める』っていうシーンがあって、僕がお願いしたのは、1回目よりも2回目、2回目より3回目ってどんどん舐め方をエスカレートしてくださいってお願いしたら、ちゃんとそういう風に・・・あれは考えてこられたんですか?」
佐藤「考えてきました。あのーお恥ずかしいはなしね、初めて鏡を前に(と言われ状況を想像し吹き出す二人)、芝居の稽古をしたっていう…」
三谷「ほんとに?」
佐藤「はい。そういう経験がなかったんで、どう見えるであろうかっていうことをもとに考えたことってあんまりなかったんで、それを今回させて頂いたので、やっぱりあのー三谷さんは当て書きなわけじゃないですか。その人を想定して脚本を書いてられるんで、(台本を読むと)笑っちゃうんだけどすごく三谷さんの挑戦を感じるわけですよ。それはやっぱりその一行、『猟奇的な顔でナイフを舐めるダイキ』って書いてあるんですよ」
三谷「そうそうそう」
佐藤「猟奇的な顔?・・・っていう風に脚本に書いてあるってことは、そういうチャレンジなんだなと」
吹石「そうですね」
三谷「猟奇的に舐めるって書いたんだけど、どういう舐め方が猟奇的なのかって僕わかんないわけですよ(爆笑するフッキー)、委ねるんですよ。で、ナイフの舐め方ってそんなにバリエーションがないんですよ。でも3回違う舐め方みたいなのをたぶん書けば、お願いすれば考えてきてくれるだろうっていう、まあ信頼関係です(笑う佐藤)。すると見事にそれをやってくる」
佐藤「なんかでも、普通に投げっぱなされてる感じもしないでもないですけどね、こっちは」
三谷「まあ、ある意味そうですよ。思いつかないもん、ナイフの舐め方なんて(笑)。あんな舐め方するとは思わないですよ」
吹石「いやー、大笑いですよアレ!」
三谷「1回目はまだ分かるんですよ。人間の想像の範疇なんですよ」
吹石「でもなかなかたぶん、お芝居長年やっててもナイフ舐めるってそう出会わないですよね」
佐藤「ないですし、ある程度ナイフを舐めるって設定的なものは、漫画的にね、例えば『北斗の拳』とかの世界では分かるけれど、実写の中で・・・でもまあわかるんだけど、設定としてはわかるんだけど、なかなかやらないじゃないですか。誰もが」
三谷「(ひとごとのように)あれはナニを表現してるんですかね」
佐藤「なんなんだ、あれは・・・」
三谷「猟奇的って・・・」
吹石「それは逆に三谷さんはどういう意図で・・・(こらえきれず吹き出す3人)」
三谷「わからないですよ。いやほんとに、脚本書く時って自分のアイデアだけど自分のアイデアじゃないって部分があって、もうあるんですよ、そこに。埋まってるものが。それを僕は掘り起こしてるだけで。で、見つけて取り上げるみたいな感じ。で、これがどういう意味があるのか実は僕にも分かってないみたいなことって多々ありますからね」

↓この予告で流れるナイフ舐めシーンはおそらく「1回目」なんでしょうね。



ちなみに、自分が作品に呼ばれなかった時の気持ちをいろいろと二人に聞いてた三谷さんだけど、自分も脚本家として同じような経験をすることがあるということで、以下のエピソードを話してくれた。

三谷「ボクもありますよ。例えばボクの知り合いのプロデューサーとかスタッフがボクを入れないプロジェクトをすすめて『あれ? なんでボクに書かせてくれなかったの?』っていうのはすごいある。最初に『踊る大捜査線』を見たときに、『これ、ボクが書くはずなのに〜』みたいに思いましたもんね」
佐藤「(笑いながら)そうだったんスか?」
三谷「わかんないけど、すごい悔しかったのは覚えてる」
佐藤「書きたかったの? 踊る大捜査線
三谷「書きたかったっていうか、『あれ? なんでボクじゃないんだろう』って。だってみんな知ってるスタッフだし…」
佐藤・吹石「ああー・・・」
三谷「『なんだ、言ってくれれば書いたのに』みたいなのはありますけど、そういうのをバネにみんなね、頑張ってるんで(笑)」

それから三谷さんが佐藤浩市について「プロフェッショナルだ」とひとしきり褒めたあとに出てきたキリンビールCM「LIVE一番搾り」篇の撮影裏話が面白かったのでこちらもメモ。

三谷「すごいズルイのは、こないだCMを一緒にやったんですけども、ちょっとフリートークみたいな感じで。なんか普通な感じがするんだけど、言葉のセンテンスがすごい短いんですよ」
佐藤「(にやけ顔で、おもむろにクリームソーダのアイスをがつがつ食べ出す)」
三谷「僕はフリートークだから普通に喋ってるのに、決めゼリフみたいなのをポンポンポンって言うから、なんでそんな喋り方をするんだろうって思ってあとで聞いたら、CMだからね」
吹石「15秒・・・」
三谷「そうそう。ちゃんと編集点みたいなのを考えてるっていうのを一言も僕に教えてくれないわけですよ」
吹石「だってそんなこと教えたらねえ!」
佐藤「ねえ!」
吹石「三谷さんも『イイこと端的に言わなきゃ』ってこう…」
三谷「確かに考えてみたらそうなんですけど、ボク素人なんだから教えてくれればいいものを、言わないんですよ。それで終わった後に鼻高々で」
佐藤「(笑いながら)いやいやいや」
三谷「得意になって」
佐藤「いや、その前日にものすごくね、自信ありげなメールがくるんですよ」
吹石「いやあああ!」
佐藤「ね。『ボクの胸に飛び込んでらっしゃい』みたいなことをさ」
吹石「うわあああ!」
佐藤「前日にメールがくるわけですよ」
吹石「わけわかんないですね!」
佐藤「で、当日、撮影が終わった後に、『今日はいろいろご迷惑をおかけしました』て言われて(笑)」
三谷「ほんとにね、“新人つぶし”ですよ」。
佐藤「新人なんだ(笑)」
吹石「浩市さんが喋らせてる感じがします。三谷さんを」
三谷「すっごい悔しいのは、あれ見てると、(佐藤を指さし)ものすごく自然体な人と(自分を指さし)ものすごく作った人が同じ世界にいるみたいな感じになって、すごいイヤなんですよね」

というわけでこちらがそのCMです(笑)。確認してみてください。


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