CX『ボクらの時代』トーク、相島一之×浅野和之×小日向文世

お酒も入り少々酔っぱらいながらのトークとなった御三方。「人生の転機は?」という話題になり、それぞれが三谷さんについて語っていたので、HDDから消す前に書き起こしておきます。

小日向「役者目指してホントに役者辞めようと思ったことなんてないでしょ? 思ったことある?」
浅野「俺はないねー」
小日向「俺もないんだよ。だから転機って言われても・・・。浅野の転機はあれじゃないの? やっぱり賞を獲りまくった(相島爆笑)」
浅野「(苦笑い)違うよ」
小日向「舞い上がった」
浅野「舞い上がってないだろー? だからやっぱり、三谷さんと出会ったのがいろんな意味で仕事が変わってきたっていう…」
小日向「あー!正直言うとね、俺もね」
浅野「そうでしょ?」
小日向「いや、俺もぉ、劇団解散して、ドラマやり始めていろいろやってたんだけど、『HERO』ってドラマに行く前に『オケピ!』っていう舞台やったじゃん。それをCXのプロデューサーたちが見に来て…」
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相島「はい(と大きくうなずく)」
小日向「で、まあ、声を掛けられたっていう」
相島「ですよね! ボクもホントそう思う」
小日向「だから転機は実は三谷さんなのよ」
浅野「そうでしょ? やっぱり三谷さんでしょ? だからそうなんだよね」
小日向「アイちゃんは、でもずーっと三谷さんだもんね」
相島「おっきいですね。避けて通れないですね、ボクの人生の中では。つい去年やらして頂いた『コンフィダント・絆』っていうのがひさっしぶりに三谷が自分のために書いてくれたって、それがホント嬉しくって…」

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小日向「“自分のために”って、アイちゃんのために?」
相島「(大きく頷き嬉しそうに)あて書きじゃないですか〜!」
小日向「すっごいいいよね」
相島「ええ」


相島「俺ね、でもね、浅野さんで一番感動したのは『You Are The Top 今宵の君』ですよ」

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浅野「あれは三谷さんとの出会いですからね」
相島「あれはほんっとに観に行って、(鹿賀丈史さんが初日直前に)降りられたじゃないですか。体調を崩されて。それが何日前だったんですか?」
小日向「一週間ぐらい前じゃない?」
浅野「そうそう、一週間前」
相島「もう拉致されて、、、あれですよ、外国に飛ばされる番組あったじゃないですか?」
小日向電波少年
相島電波少年! あれとおんなじで、『浅野、今から来て』ってなんだか分からずに拉致されて…」
浅野「そうそうそう」
相島「稽古場に行って、もうずーっと。でも、たった何日間でよくここまでっていうか、3人しか登場しませんもんね。3人の人たちの・・・もう言葉が出なくって・・・(感極まりながら)その姿がもう『ああ、演劇だなあ』っていう」
小日向「(相島を指さしながら笑って)目ぇウルウルしちゃってるじゃん!(笑)」
相島「コヒさんだって、コヒさんだってそうじゃないですか!」
小日向「でも浅野あんときあれだろ? プロンプ入れながらやってたんだろ?」
浅野「(真顔で)もちろんだよ」
相島「なんか話聞いたらいろんな所に(カンペを)貼ってたんだって」
浅野「(真顔で)一週間じゃ無理だよ。いや、一週間じゃなかったのよ。最初4日間だったのよ。4日前で、ちょっとこれは無理だって言って、それで3日延ばしてもらったのよ」
小日向「初日を延ばしてもらったのね。しかしスゴイね!」
浅野「カンヅメになって。帰ったらできないから、台詞覚えるのなんてできないから。三茶のビジネスホテルだったんだけどそこに泊まって、夜の12時ぐらいまで稽古するじゃない? 帰ってからまた部屋で台本読むんだけどさ。・・・あんときね、よく昔のアメリカの漫画でさ、こっち側に天使がいてこっち側に悪魔がいて、悪魔が悪いことを囁くとこっちの天使が『そんなことしちゃいけないよ』とかいうのがあるじゃない?(笑) まったくそれと同じでさ、囁くわけよ。『おまえ、大丈夫なのか? こんなの引き受けちゃって』ってフッと思うわけ。するとこっち側から『もうこれは戻れないぞ。引き受けたんだから辞められないんだぞ!やるしかないんだぞ!』っていうのがフーッとくるわけ。で、ウワッ!ってなって(台詞覚えを)やりだすわけよ。でも今日は寝なきゃいけないなあって思って寝るでしょ? するとまたフッて目が覚めちゃって、もう寝れないわけ。面白かったのは、普通芝居の初日ってさ、ドキドキするじゃない? ぜっんぜんドキドキしなかった。」
小日向「どういう感じだったの?」
浅野「要するに緊張感がないんだよ、ある意味」
相島「100%で言うとどれぐらい覚えてたんですか?」
浅野「100%なんて全然なってない。とにかく初日を終えてからもどんどんどんどん台詞は入れてったわけ、ひとりで。で、(台詞が)さあ入りましたってなってきてからが…」
小日向「わかる!わかる!」
浅野「上がるんだよ。緊張するんだよ」
相島「面白いですねえ」
浅野「俺、あんなの初めてだよ。それまでは覚えなきゃいけないとかいろんなことがあってそういう意識が働かないの」
小日向「とにかく喋ることだけなんだよな。なにかこうある程度余裕が出てきたときに『ちゃんと見せなきゃ』って思ったとたんに、緊張するんだよな」
浅野「台詞がちゃんと入ってからは、失敗しちゃいけないなみたいなさ、初日のああいう緊張感なの」
相島「でもほんとに(あの舞台は)感動しましたねえ」


(板前に寿司を注文し、待ってる間、日本酒を飲む三人)


小日向「三谷さんに電話すっか? 『いま、収録してるよー』って」
相島「じゃあ、ちょっと電話してみます?」
小日向「最近、電話で話した?」
相島「電話では話してないです」
浅野「メールがね、すごいんだよ」
小日向「メールは結構マメにする?」
浅野「もうメールはね…」
小日向「ちゃんと送ったら返事来る?」
相島「いや、ビミョーですね」
小日向「でしょ? 微妙でしょ?」
相島「でも、ボクにしてみたら、メールでも嬉しいですよ。劇団の時はもう『みたに〜』みたいな感じだったけど、あいつには頭あがんないんですよ、ホントに。(突然思い出し)ねねねねっ!あれどうでした? 次公開するやつ。マジック…」
小日向「あ、『ザ・マジックアワー』? あれっ?あれー…」
相島「ボク、出てなーい」
小日向「アイちゃんはあれだ。『有頂天ホテル』はアイちゃんだもんな。あ、(と浅野を指さし)おまえも出てんだー!」
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浅野「有頂天はおまえ(小日向)も出てるじゃん」
小日向「有頂天は俺出てないよ」
浅野「あ、有頂天はね(相島爆笑)」
小日向「俺、意外とねぇ…」
浅野「いや、だけどさ、(小日向は)『俺、出れない』とかぶつくさ言うけど、でもその代わりちゃんとあれやってたんだよ。『ALLWAYS』やってたでしょ? ちょうど時期的に」
相島「え? 三丁目?!」
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浅野「やってたんだよ、ちゃんと」
小日向「それ関係ないだろ別に!(苦笑)」
相島「『ALLWAYS』もイイ役だったよねー」
小日向「じゃなくて、違う!ちがちがちがう!ちょっと待ってよ!」
浅野「今度の『マジックアワー』だってイイ役なんだよ〜」
小日向「いやいや、おまえの方がオイシイ役もってってるじゃないか」
相島「ちょっと待って!ちょっと待って。ふたりは出ててボク出てないからね」
小日向「だって(アイちゃんは)有頂天出てるもん。だって『コンフィダント』であて書きもらったんだよ? だから今一番オイシイのはこいつ(浅野)じゃないのかなあ」
相島「ああー」
浅野「だって俺、ほら、三谷さんが『一生ついていきますから』って言ったから(相島爆笑)」
小日向「誰が?」
浅野「三谷さんが」
小日向「(目を丸くして)ホントに?!」
浅野「そうだよ。もう言っちゃったから、あの人。やめとけばいいのに」
相島「ちょ、ちょっと待って。一回、電話してみます? いないと思うけど。ちょっと電話してみる?」
小日向「(どうぞと手で促す)」
相島「(携帯を取り出しながら)俺、怒られそうだなあ。ホントに怒られるのヤなんだよなあ。と言いながら(電話をかける)」
浅野「でも電話は出ないんじゃないかな」
(呼び出し中)
小日向「アイちゃんじゃね、出ないと思う」
相島「俺も出ないと思う。・・・はい」
小日向「留守電でしょ? すぐ切っちゃえ!」
相島「ちょっと待ってください。ちゃんと言いますからね」
小日向「いや、いい!いいって!」
相島「留守番電話です」
小日向「出ないんだよ絶対」
相島「出ないですね。でも実はすっごいドキドキしてるの。・・・ああ、はい。先生の声が聞こえるとね、やっぱり・・・。」
小日向「いいよ、もう。いいって」
相島「あ、もしもし。三谷ですか?」
小日向「出たの?」
相島「留守電です。えー、いまずっと三谷の話で盛り上がっていたので電話をしてみました。え、そんな感じです。コヒさんと浅野さんと相島の3人で呑んでおります。失礼します」


三谷さんの話だけにしようかと思ったけど、その後の「映像か?舞台か?」という話題も面白かったのでこちらも載せときます。

浅野「最近ほらあのー、(小日向を指して)軸足が変わっちゃったからね」
相島「いつも聞くんですよ。『コヒさん、演劇やらないんですか?』みたいな話をすると、コヒさんはいつも『アイちゃん、俺はね、演劇はヤなんだ』っておっしゃる」
小日向「そんなこと言うなよ! カットカット!(笑)」
相島「でもこれはすごいなんかよくわかるんですよ。コヒさんらしいなってすごく思うのが、映像だと自分の思った芝居をやったらいいんだ。もう撮ろうが撮るまいがカメラがこうやってくれるからどうでもいい。でも、演劇の場合は、どこかでバトルロワイヤルになると。ここで3人で芝居やりますって言ったときに、3人がみんな幸せになれればいいんだけど、どこかで『コヒさん、アクセルふかしたなあ。浅野さん、アクセルふかしたなあ。じゃあ俺もアクセルふかさなきゃダメじゃないか』とかって、どっかにバトルってあるじゃないですか。コヒさんはそれがもうヤなんだと。でもきっとそれは自由劇場でほんとに揉まれた人間の言うことだなあって、ボクはホントに思うんですよ」
小日向「わかんないですけどねえ」
浅野「(冷静に)いや、ただ年とってきただけだよ(相島爆笑)。体力なくなったんだよ」
相島「でもずっとそんなこと言いながらコヒさんやってるじゃないですか。浅野さんは舞台と映像、どっちが好き?」
小日向「こんなこと公に言っていいのかな」
相島「そうだよね! や、やめよっか?(笑)」
小日向「いや、両方とも好きなのよ。ホントに。だって演じるってことはかわんないから。ただ、映像だったらミスったら『すいません!』ってやればいい。ところが舞台はさ、、、俺、このあいだ『ミザリー』で、千秋楽の日だぜ? もうずーーっと、なんのアクシデントもなく来た訳よ。それが千秋楽。『よーし!今日でお終いだー!』と思ってリラックスしてパンッて出るじゃん。で、最初、俺、ひとりで喋るじゃん。で、バンッて出て、『ありがとう。ありがとう』って言った瞬間、台詞が全部飛んだのよ。出てこないんだよ。『えー、ありがとう』って言った後の『このショーを』っていう『この』が出てこないのよ。とにかく出てこないのよ。それで、一回そでに引っ込んだもん」
浅野「ウソッ?!」
相島「マジで?!」
小日向「で、舞台監督が見てたのよ、そでで。明らかにおかしいと思って。で、俺がバーッて(駆け寄って)行って『なあなあ、台詞なに?(台本見て)あ、これだ!』と思って」
浅野「すっごーい」
相島「ねえねえ、コヒさん。その1個の台詞が出てこなくても(少し飛んだ)ここらへんの(台詞)は出てきたりするじゃないですか。そこにポーンッていうのもダメだったの?」
小日向「だから俺ね、もうちょっと頑張ろうかと思ったんだけど、もうちょっと頑張って出なかったらパニクると思ったの。そうすると最悪のことになると思ったから」
浅野「あー、それはすごく冷静だよ」
小日向「その前にスッと戻っとこうって思ったの。だから、やっぱり舞台の恐ろしさなんだよね。舞台はそれがあるから怖いんだよ」
浅野「俺は逆に、舞台は何が何でも誤魔化してでもやらなきゃなんないっていうのがあるから、映像の方がちょっとそこでしくじったりすると周りにまたなんか、、、あれがスゴイ俺は疲れちゃうの」
小日向「(すごく意外といった顔で)へえーーーー!」
浅野「すごい気にしちゃうの、俺は。だって、全部もう1回やり直すでしょ?」
小日向「でも、映像も舞台も両方ともいろんな風にやっていきたいなと思うんだけど、やっぱ自分の中で克服したいのは舞台なんだよなあ。実は。俺、ほんとにねえ、舞台は“怖い”のよ。だからそれはなんなんだろうなあっていろいろ考えるんだけど、多分恥かきたくないんだろうね」
相島「なんか、恥をかいてなんぼっていうのもあるじゃないですか、役者なんて。」


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小日向「(ニコニコしながら)でも、ほんとに、なんかこんなー、いやーすごいなあ」
浅野「大丈夫ですか? 酔ってない?」
小日向「全然大丈夫」
浅野「ほら、口が・・・。ただでさえ滑舌悪い人だからね」
小日向「ていうかさ、やっぱりさ、役者ってさあ、撮られてると思うとなかなか崩れないね」
浅野「でも、酔ってるよ」
小日向「酔ってるよ。酔ってる酔ってる(笑)」
相島「でもヘンな方向にはいきませんもんね」
小日向「下ネタいかないもんね」
相島「今度そっちの方で話しましょうね」
小日向「浅野がまた好きだからねー(笑) 新宿とか」
浅野「よく言うよ!」

そんなこんなで、だいぶ酔いもまわってきたらしく、最後は誰がイチバン巧く「タバコを吸って消す人」を早送りで演じられるかを競い合ってました(笑)。



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