『同じ月を見ている』を観た(@シネコン)

先々週に観てきました。客は20人ぐらい。


映画の詳細は以下の通り。

『同じ月を見ている』 11月19日より全国東映系にて公開 


【監督】深作健太【脚本】森淳一【撮影】北信康【原作】土田世紀
【出演】窪塚洋介/エディソン・チャン/黒木メイサ/山本太郎/松尾スズキ/岸田今日子/菅田俊/竹井みどり/春田純一/伊藤洋三郎/モロ師岡/水川あさみ /西田健/三谷昇
106min/2005年


【STORY】10才の時に出会った恋人・エミ(黒木メイサ)の心臓病を自分の手で治したい・・・その一心で医者への道を志す熊川鉄矢(窪塚洋介)。医者になり、エミとの結婚を控え、幼い頃から抱き続けてた夢の実現を目前に控えた彼の元に、もう一人の幼なじみドン(エディソン・チャン)が刑務所を脱走したという知らせが届く。ドンは7年前、エミの父親の命を奪った山火事の犯人として服役していた。彼の脱走がエミと関係してることを知った鉄矢は、今の安らかな生活が壊されるのではないかと不安に苛まれた。ドンには幼い頃より不思議な力があり、鉄矢は彼との間にエミには言えぬある秘密を抱えていた……。

同じ月を見ている [DVD]

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窪塚洋介復帰作・・・として観る分には楽しめたかなと。嫌な奴といい奴と両面チェックできたし、クライマックスの感情を吐き出す姿を観てると、やはり戻ってきてくれて良かったなと思う。クールな外見に反し、これほどまでに強く、熱く、迷いなしに、自分の感情を剛速球で相手にぶつけてくる役者は他にいないから(『魔界転生』はそこを封印したのが若気の至り)。事故のせいで丸くなってるのでは?と危惧したけど、変わらず健在だったことが確認できて一安心。余談だけど、窪塚の対極に位置するのが山田孝之だと個人的には思ってる。彼の場合は、吐きだした感情が相手に届くことなく再び自分の元へ戻って来ちゃうので、周囲に気持ちをぶつけて回らなきゃならない『め組の大吾』のような役はツライが『電車男』みたいなのはハマる(ドラマ、舞台と比べても、山田孝之電車男が一番良かったと思う)。


原作は読んでないが、ドン役を当初窪塚がやる予定だったという話は、映画を観る限り信じがたい。ドン役を演じたエディソンは適役だったと思う。山本太郎は今回非常にオイシイ役だった。同じみのチンピラ役ということで期待通りの安定した演技力見せてたし、台詞も一番いいのもらっちゃってズルイ(笑)。ただ、監督が肩入れしすぎで作品のバランスがおかしくなったのは頂けないかなと。窪塚・黒木・エディソンのパートを魅力的に描けてないのに、山本太郎に肩入れしちゃいけんでしょう。本作は『同じ月を見ている』というタイトルなだけに「月」が何度も出てくる(この演出がまた…。ノーコメント)。しかし主人公3人が見上げたどの月より、山本太郎が最後に見上げた月がイッチバン良い月(=意味のある月)に見えるってのは、作品としてどうなの?


監督は深作健太。この人が決して小さくはない映画を何故こうも次々と撮れるのかよくわからないので、実質的監督デビュー作となる本作で「深作健太」としての魅力が垣間見れればいいなと期待した。ところがこれが結構「うーん・・・」と唸ってしまう。登場人物の心の機微を描くのはかなりうまくない。役者自身の力でなんとか持ってる感じ。特に前半を観てると「この人に頼らなきゃいけないほど映画業界は人材不足なの?」という思いが募る。ただ、後半、都会を離れてからクライマックスに至るまではそれなりに見せてくれて面白かった。ハッタリ映画の世代交代がうまくいかない現状を思うと、若手の割に妙な大作感を醸し出せるというのはある意味貴重。次回作は押井守が脚本を担当する『エルの乱 鏖殺の島』だし(原案はこちら。第5回日本映画エンジェル大賞入選作)、芸能の継承、深作家一子相伝(なんてあるのか?)の何かにもう少しだけ期待してみようかと思う(やっぱりどうしても欲しいのよ、この分野の監督。だからもうちょっとドラマ部分の演出うまくなるか、紀里谷和明みたいに中坊魂全開でゆくか、息をもつかせぬストーリー展開でもって力業でねじ伏せて!)。


個人的に一番気に入ったのは岸田今日子の家でエディソン(ドンちゃん)が絵を描いてるシーン。けど、ここだけちょっと雰囲気違うので、それを求めて次を観に行ってももはやそこには無いと思う。


本作の功労者↓
「同じ月を見ている」制作過程(@早川剛の主に日本画)