PFF前夜祭『死者の書』を観た(@渋谷東急)

行ってきました、PFF前夜祭。上映されたのは川本喜八郎監督の新作人形アニメーション死者の書』。客層は年齢高め、男女半々、8割ぐらいの入りだったと思います。撮影に使われたセットや人形の展示もあって、カメラ持ってくれば良かった…。主催者の話によると、前夜祭を催すのは今回が初めてとかで、久しぶりにPFFが渋谷に戻ってきたその記念、ということらしいです。新人監督をプッシュするという主旨とはズレた人選だけど、まあいいじゃないか記念なんだから、みたいなことだそうです(笑)。川本監督は、現在チェコの映画祭(?)に呼ばれてるらしく、今日の舞台挨拶は欠席。その代わりビデオレターが流れました。


『死者の書』公式サイト

死者の書 [DVD]

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んで、まずは映画の感想から。



公開はもうちょっと先ということで当たり障りのないとこでいくと、原作は折口信夫死者の書。未読故に、“郎女(いらつめ)という女性が、若くして非業の死を遂げた大津皇子の亡霊と出会い、その彷徨える魂を慰める物語”という程度の認識で観賞。観終わって、「原作未読ってのは無謀だったかもしれない…」とちと後悔した次第(汗)。
主人公・郎女の声をあてたのが宮沢りえ。彼女、発声が良くなったねえ。知らずに観たら最後まで気付かなかったかもしれない。黒柳徹子がちんちくりんな婆役で出演。声のしわがれ具合が役柄に合わせた“作り声”というより彼女の“地声”にしか思えず、時の流れを感じました(サンダーバードのペネロープはもういない…)。でも非常に味のあるキャラで、お持ち帰りしたいぐらい。
通常より動きがなめらか*1。カメラワークのせいもあるかもしれないけど、動きもほんのりスピーディーで、奥行きのある構図の中に7,8体の人形がそれぞれ好き勝手に動くもんだから、『スモール・ソルジャーズ』あたりのCGアニメを彷彿とさせ、とても今風な印象を受けました。亡霊となった大津皇子が覚醒するシーンなど幻想的な場面は絵との融合も激しく、川本喜八郎というよりはユーリ・ノルシュテイン風。「友情アニメーション」という形でクレジットされているので、実際にノルシュテイン本人がそのパートを手がけてたのかも知れないけれど、そこらへんの真実はよくわからないので、「川本喜八郎=人形劇」というイメージのいまだ抜けない自分が、アニメーションアニメーションした絵に川本監督を結びつけられなかっただけかもしれないです。長い黒髪をなびかせ、服をはためかせながらふらふらと歩く郎女がすごく色っぽかった。


奈良時代の話ということで、平城京の全景模型(書き割りの背景じゃなくて模型なの!)が出現。学生時代、バイト先で古い時代の町並み模型を作ってた身としては、ああいうの見ると懐かしくなっちゃってね。多摩美にスタジオ作って撮影してたらしいけど、「植生の葉っぱはやはりスコッチブライトなんだろうか」とか「いいなあ、模型作りてー」とか、そんなのばっか考えて、その間は全く映画に集中できませんでした(いかんいかん)。2回目からは大丈夫だと思うので、原作読んでからまた改めて観たい。


公開は来年の春、岩波ホールになる予定だそうです。製作費を得るため“ひとコマサポーター制度”をとっていたということで、映画の最後に出資者の名が延々とクレジットされてました(赤川次郎、大山のぶよ、岸田今日子三谷昇ジェームス三木などの名もあり)。サポーター向け試写会では、抽選で、川本監督が制作した人形(実際にアニメーション撮影ができる関節付きのもの)が3体、プレゼントされるそうで、当たった人は悶絶するだろうなあ・・・

*1:一説によるとモーフィングを使用してるんじゃないかという・・・