行定勲特集トーク(後半)、長澤まさみ×行定勲×福本淳×森直人

前半からの続き。


ここで『世界の中心で、愛をさけぶ』の話題に移り、『セカチュー』に亜樹役で出演してる長澤まさみトークに加わった。

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皆がお待ちかねのまさみちゃんということで、早速「出演されていかがでした?」と振るも、当のまさみちゃんは「いかがって言われても…」と口ごもり、予想通り冒頭からハラハラさせてくれる(笑)。監督の印象を聞くと「最初は暗い人だと思ってたけど、実際はすごくお喋りで、女の子が大好きな監督だった」と返答。監督に彼女のキャスティング理由を問うと「過去のシーンが瑞々しく輝いてないと現在のシーンが活きないので、誰がいいかと探してる時に『ロボコン』の試写を見て気に入った」と話す行定監督。「『ロボコン』で長澤が演じたのはちょっとダメな感じの女の子だったけど、あれは演技だろと思ってたら実物はもっとダメなやつで(笑)、初めて会った時はまともに話しもできなかった。最近は自然体といえば聞こえはイイが、自分の素に近い役しか演じない、演じられない役者が多くて、その点長澤は、実際はこんなダメダメなやつなのに、スクリーンではそれを感じさせないところが逆に良かった」と誉めてるのか貶してるのかわからないような褒め方をしていた。「産まれる前の時代のことだけど、とまどいはなかった?」と問われたまさみちゃんは、「自分は地方のすごい田舎に住んでいたのでこっちの方が雰囲気は似ていた」と答え、「大変だったシーンは?」という問いには、空港のシーンをあげていた。1日がかりの撮影で、朝からずっとテンションを維持しなければならず、それがとても大変だったそうだ。


本作は過去と現在の役者が常時スタンバイし、晴れてる時に過去のシーン、曇ってる時に現在のシーンを撮ってたようで、一日の撮影スケジュールは完全に天候まかせ。撮影助手として途中参加した福本氏は、渡されたその日のスケジュール表に、曇りと晴れ、両方のシーンが載ってるのを見て初めて、えらい現場に来てしまったと実感したらしい。スタッフにとって一番大変なシーンは、風が吹きすさぶ商店街のアーケードを大沢たかおが走り抜けるシーンだったそうで、たった2カットを撮るためにかかった時間が10時間。その間スタッフは、何度もゴミを飛ばし、その中を大沢たかおは走り続けたそうだ。


セカチュウ』を撮るにあたり、「今度こそ回想が現在に勝つ映画を撮るんだ」と気合い十分に挑んだ行定監督。撮影を担当した篠田昇カメラマンとは、PVやコマーシャル*1ではちょこちょこ組んでいたものの、本編でタッグを組むのはデビュー作以来。きっかけは「そろそろ本編を撮らないか?」という篠田さんからの誘いだったという。「篠田昇吉永小百合を撮ったらすごいだろうな」と思い『北の零年』をお願いしてたが、その前にちょっとウォーミングアップをと思い『世界の〜』も頼んだら結果的にこれが最後の作品になってしまった。本作は現在と過去のシーンで画のトーンを変えているのだが、「現在シーンでのモノトーンの色味は、篠田さんが何度もテストして作り上げたんだ」としみじみ語る福本カメラマンであった。


最後に近況。行定監督は1月に公開する『北の零年』の宣伝。「もうひとりのラストサムライを描いたつもりだ」と話す行定監督。海を挟んで二人のラストサムライを演じることとなった渡辺謙は、ハリウッドで『ラスト・サムライ』を撮った時、「地球の裏側にいるアメリカ人がもの凄く熱い明治を描こうとしているのに、日本にいる俺たちは何をやっているのだろう」とものすごい憤りを感じていたそうで、「その想いを『北の零年』にぶつけてくれたので是非見に来て欲しい」と語っていた。長澤まさみちゃんは1月から始まる倉本聰原作のドラマ『優しい時間』に出るとのこと。本人は「すごく大人なドラマに仕上がってると思うので大人の人にみてもらいたいです」とたどたどしく語ってた。行定監督に「何チャンでやるの?」と聞かれると「8チャンです」と照れ笑いする姿がかわいらしい。福本カメラマンは撮影を担当してる『恋文日和』の告知。また、少し時間が余ったので、客席から質疑応答を受ける一幕も。監督と長澤まさみの印象について質問された福本氏は、「長澤は監督の「カット!」の声で舌を出す姿がバカっぽかった(笑)。監督は女好きでよく喋る。役者やカメラマンだけじゃなく、衣装や照明など自分の意向が伝わるようスタッフ一人一人に何度も語る。この人の喋ってる時間が多いうちはまだまだ安心だなと思ってる」と語り、この日のトークショーはお開きとなった。



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トークは1時間ぐらいあったので、実際はもっといろいろ喋ってたような気がするのだが(特に『セカチュウ』関連)、まあ、覚えてるのはここらへんということで。今回のトークにより、行定作品で引っかかってたことのいくつかが解消され、すごく充実感のある内容だった。監督自身はすこぶる熱い人で、「日本映画と自分」ってことを常に考え、「日本映画に何かを仕掛けたい」という想いの強さが言葉の端々から伝わってきた。でも、意外と自分に自信が無いようで、しょっちゅう自己反省会開いてそうな印象も受けたり(笑)。対する福本さんは、冷静でマイペース。ネガティブ思考に陥りがちな行定監督の熱い想いを、冷静に受け止めポジティブな方へと持ち上げてくれるのが福本さんといったところなのかな。端から見ても「いいコンビだな」と思った。ウォーミングアップのつもりで組んだ『セカチュー』が篠田氏とは最後のタッグになってしまったけど、乗り越えたいと思い続けた親父に間近で成長ぶりを見てもらうことが出来たのは良かったんじゃないかと思う。「回想」「篠田昇」に注目して古い順に行定作品を見直すのも、なかなかに楽しいかもしれないと思った一日でした。


追記(2005/7/1付):
柴咲コウ主演のWEBシネマ「髪からはじまる物語 三部作」が行定&福本コンビで撮られています。そのときのスペシャルインタビューが↓こちら。
http://www.sony.jp/products/Professional/c_c/hdv/sample/special.html


*1:浜崎あゆみのPVやキムタクの出たJRAのコマーシャルなど。