「PFFアワード2008」15作品観賞してきたよ!

さすがに疲れた〜。寝るかと思ったが、なんとか頑張った。今年は時間の関係か監督の上映前舞台挨拶のみ。出演者の登壇はなし。ちょっと寂しい。でもあれ以上時間が遅くなるのは勘弁なのでこれで良し。


新人発掘という意味では個人的に大収穫でした。全作品感想書ければいいんだけど、(4年前ならともかく)現在は体力的かつ言語化能力的に無理なので、特に気に入った・気になった作品だけ。

Aプロ「無防備」(監督:市井昌秀※次回上映は7/23(水)16:45〜

これは、「すごい」っていうか、人によっては「ずるい」って思うかも知れない。某作品ではこれをCGで見せていて、その時ですら「すごいな」って思ったのに、こっちはホンモノでやってのけたからね。自分にとっては、裸足で農道を全力疾走し某所に向かうあたりが物語のクライマックスであり(ほんとに彼女のあの“走り”には高揚した。あのまま跳び蹴りさせたいぐらいに)、その後の展開もあらかた読めて完全にエンディングモードに入ってたこともあって、あそこまでやらなくても物足りなさは特に感じなかったんじゃないかと思う。けど、あの演出を最後のダメ押しで挿入してきたことにより作品としての強度は確実に増したことは否定できないし、実際私もしばらくは涙が止まらなかったわけですが、この手法って、かなり危ない諸刃の剣だよね。そこに至るまでの部分をきちんと作り上げてなきゃフィクションがリアルのインパクトに負けて作品のバランスが壊れてしまう可能性も大いにあったわけで、それでもこの手法をあえて選んだ監督の自信と覚悟は相当なもんだったんじゃないかなあと思います。

Dプロ「天狗の葉」(監督:斉藤貴志 撮影:栗原良介) ※次回上映は7/22(火)11:00〜

映像のクオリティの高さにビックリ。全カット宣伝用スチールとしてつかえるぐらいに画作りがしっかりしていて、構図がバラエティに富んでるので、台詞がほとんどないけど見ていて全く飽きない。塀の上をただ延々と歩いてるだけのシーンなのに何故こうも私の脳みそは喜ぶのだろう。ぶっちゃけかなり好みです(笑)。他の作品も観てみたい。ドキュメンタリー作家が撮る映像に近いんだよね・・・と思って調べたら、実際にドキュメンタリーも撮る人だった。
カメラをパーンさせてゆくと、孤独を抱えた少年の傍に思いも寄らぬ人物がひょっこり姿を現し、それまでとはまるで異なる穏やかな色がパーッと画面に広がっていくシーンが幾度か出てくる。これがとても心地良い。
本作に関しては監督のサイトで予告が見られるので、映像を見てピンとくるものがあった人は機会があれば迷わず観に行ってほしい。

Eプロ「つつましき生活」(監督:森岡龍 ※次回上映は7/23(水)14:00〜

確かに「森岡龍」といえば、私は『グミ、チョコレート、パイン』にも出た芸能事務所ブレスに所属する俳優の森岡龍くんしか知りません。でもさ、とっくに二十歳すぎてると思ってたから、PFFの公式に「森岡龍 19才」って書いてあるの見ても同姓同名の別人としか思ってなかったのよ。まさか「本人」だったとは。 しかも19才の子が撮る自主映画にしてはえらい手慣れていて、このクオリティならテレ朝土曜深夜1:25あたりにこっそり流しても絶対バレないと思う。作品自体は漫画家志望の青年と、彼の同居人であるスゲーうざったい性格の男友達とのやりとりを描いたシチュエーション・コメディなんだけれど、延々と続く“小学生男子”みたいなやりとりがおかしくもどこか共感できて、見てるうちにどんどん愛着が湧いてくる。深川栄洋監督の「私が幸せでいるという事」あたりが好きな人はかなりの確率で気にいるんじゃないのかなあ。もうちょと二人のやりとりを見ていたいので、もし監督と主演二人にその気があればシリーズ化希望。
『グミチョコ』インタビューで「美大に通ってる」って言ってるんだけど、クレジットに名前があったし、調べたら他の子の作品に脚本参加もしてるようなんで、通ってるのは多摩美なんだろうね。16才の時にひろしま映像展2005にも出品してたようなんで、結構筋金入りなのか。ちなみに、「動く森岡君が見たい」という方は現在NHK共同キャンペーン「コエだしてエコ」に出演中。


ちなみに、みんなしれーっとした顔でスルーしてるけど、これ大画面で見るときに限り「18禁」だよね(笑)。

Eプロ「症例X」(監督:吉田光希) ※次回上映は7/23(水)14:00〜

痴呆症をわずらう年老いた母親を自宅でひとり介護する無口で物静かな息子。手際よく家事をこなし、家と職場の往復で毎日がすぎてゆく。母子の会話はほとんどなく、上映時間の半分近くが「食事を作る→食べる→一服する→片付ける」という行動の繰り返しに費やされるが画面に単調さは感じられない(カメラ位置を毎回変えているよね?)。自宅を訪れたおばさんとのガスコンロをめぐるやりとりや「火のつかないライター」といった小物が伏線となり、物言わぬ男が抱える日々の重圧、緊張感が次第に明らかになってゆく。念入りにたばこの火を消す母、そのことに初めて気づく息子の姿に胸がじんと熱くなる。「いやだってあんた本当に頑張ってるよ。えらいもん。良かったじゃない、ちゃんとわかって。信用しなかった自分を責めてはいけない。」 愚痴も言わず頑張ってきた息子に、そう、声をかけてあげたくなる。
最後に一度ぐらい笑顔が見たいと思っていたので、エンドロールで願いを叶えてくれてありがとう。

Gプロ 「GHOST OF YESTERDAY」(監督:松野 泉) ※次回上映は7/24(木)12:45〜

自主映画って80分でも長いんですよ。なのに本作ときたら130分(!)にも及ぶ大作。しかも15作品中最後の上映ともなれば体力的にもう限界。正直「無理!」て思った。しかし意外や意外、大作といっても重厚な人間ドラマがうんぬんとかそういう重苦しい作品ではなく、ある種のホームドラマなんだけど、脚本がしっかりしていて役者の芝居も安定してるせいか、するすると見れてしまう。で、非常に気になるのが合間に入れてくる一風変わった演出。作品全体の雰囲気からするとかなり「異質」で「暴力的」なんだけど、実はこっちが本質なのかしらと思ってしまうぐらい何か惹かれるものがある。工事の音に合わせて子供達がバタバタ死んでいったりね、主人公たちがなごやかにトラックの運転練習をしてる横で行われる激しすぎるカーセックスとか、突然空から振ってくるテレビに、ボートの上で狂ったように笑うお母さん・・・あれはなんなのかなあ。

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