『きょうのできごと』を観た(@テアトル新宿)

テアトル新宿で観てきました。GW最終日で皆やることないのか、今週で上映終了の割に「まだいけるんじゃねーの?」ってぐらいの混みっぷり。入りは8割弱といったところで、20〜30代を中心に男女半々。女性客の方が多いのかと思ってただけにちょっと意外。


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映画の詳細は以前の日記を参照。原作は未読。んで、感想。


面白かったです。正道くん(柏原収史)家でのやりとりはどれもこれも好きだしツボだし、西山(三浦誠己)のやたらリアルなカラミっぷりとか、みんなでテレビゲームしたり、輪から抜けて買い出し行って一人になってる時の雰囲気とか、そういう日常の些細なあれこれが、なんかこうしみじみきちゃうんですわ。まあ、あちこちで口にされてる感想なんで、これ以上は省略。キーワード辿って読んできてください。


というわけで、ここから愚痴モードに入る。非常に好きなタイプの映画だっただけに、可愛さ余ってというか、「んー、なんでそうするかな。そんなもんいらんのじゃ!」と愚痴りたくなるところが多々あったので、これからぶちまけるっす。


以下、ネタバレ。


自分でも失敗したなと思うのは、行定監督がこの映画で表現したかったり伝えたかったことを、あらかじめ知っちゃってたこと。「ドラマチックなことなど何も起こらない映画を撮りたかった」って言うから期待しちゃったですよ。まあ、勝手に期待したのはこっちなんであれだけど、主役7人衆(+池脇千鶴)の話だけじゃ映画として持ちませんか? 面白味に欠けますか? 実際に撮影してみて、編集したフィルムつないでみて、それでもこのままじゃもの足りないって思ったのなら、やっぱり行定監督とは感性合わないんだなと諦める。映画的に地味だからという理由で挿入されたドラマチックな2つの出来事(「ビルに挟まった男」と「座礁したクジラ」)、ホントに必要だったのかな。確かに、平々凡々な日常の良さを浮き彫りにするため、何かと対比させる必要があったのは分かる。だったらニュース映像+αぐらいでもいいんじゃなかろうか。あそこまで2つの話、特に「ビルに挟まった男」の話に時間を割く必要があったのかは疑問。観てるこちらが、7人の織りなすうだうだと心地よい空気にどっぷり浸って、この時間がいつまでも続かないかなあと気持ちよくなってる時に、ビル男の話を長々やられると気が削がれるわけですよ。邪魔して欲しくないわけですよ。あの話は話で面白かったけど、でも要らん。この映画に余計な装飾は不要だと思う。


「日常はこんなに豊かなのに、何故そんなにドラマを求めるのか?」(by行定勲


“全ての出来事が実はつながってる”って設定、実は非常に好きなんですよね。京極夏彦“妖怪シリーズ”大好き人間ですから。でも、それを表現するために必要以上にドラマを盛り込んじゃっちゃあ、本末転倒だとは思いませぬか、監督。


それと、あそこも気になったんだよな。物語の中盤で正道君が事故るシーン。「普通の人にはそんな簡単に劇的なことは起こらん」「でも劇的な事が起こる可能性は紙一重である」ってことなんだろうけど、車にひき逃げされときながら、かすり傷ひとつで済んだ“違和感”の方が先に立ち、病院行かなくても大丈夫か?とか映画のラストで死ぬんじゃないか?とかそんなことばかり気になってしまった。それから、みんな「中沢(妻夫木聡)が真紀ちゃん(田中麗奈)の自慢してノロケる」っていうんだけど、ノロケるほど中沢君が真紀ちゃんにラブラブなようには見えないんだな。ま、そのおかげで、けいと(伊藤歩)に嫉妬する真紀ちゃんの気持ちはよく伝わってきたんだけど…。うーん。中沢君が映画作りたいとかいう話も唐突だったし。それから、わざわざ『きょうのできごと』ってタイトルつけてるのに、「きょうのできごと」を意識させようと台詞の中にちょこちょこ出されるのもクドかった。正道くんがニュース映像見て呟く「世の中にはいろいろなことが起きてるんだなあ」って台詞も、そんなんいちいち言わなくてもニュース見りゃ分かるって、と思ったり…。親切すぎて鬱陶しい。
物語は7人を中心に進んでるようで、なんかそうでもないのも居心地悪かった。中心線が微妙にずれてってるというか、おしりが外に流れてゆく感じ? 一度はバラバラになった7人が、ドラマチックなことを求め、クジラのいる(はずだった)海岸で再び合流、でも結局何もなくて終わる、、、というのが映画のラストで、それ自体はおさまりが良かったんだけど、7人全員集まらず、かわち君(松尾敏伸)一人だけ別のところに行っちゃったってのが、なんかまとまりきらない感じなんだな。そのまとまらなさがいいんですよっていうことなら、やっぱ行定さんとは感覚合わないかも。


以上、ネタバレ終了。



そういえば、一番年下に見えた松尾敏伸が、実年齢じゃ一番年上だったのには驚いた。ぶっきーは老け顔だからいいとして、柏原収史や三浦誠己よりも上かよ、と(笑)。柏原収史は、『エースをねらえ!』の“千葉ちゃん”といい、今回の“正道君”といい、役者としてすごくいい方向にいってると思う。“おまえら可愛すぎメンバー”(田中麗奈池脇千鶴伊藤歩)では、けいと(伊藤歩)が一番可愛かったっす。


好きな作品だけど細かい部分は正直苦手、というのが自分にとっての『きょうのできごと』でした。劇場を出たら、深川栄洋監督『私が幸せでいるという事』の愛らしいバカップルが無性に観たくなってた。



追記(2004年11月):
スンマセン。感想撤回します。行定監督の旧作『ひまわり』を観た後に再度本作を観直したら、初見で不満に感じた点がすべてオッケーになりました。新たな感想は後日また改めて。