『着信アリ』を観た(@シネコン)

どこもかしこも上映終了モードに入ってたとはつゆ知らず、危うく見逃すとこだった(汗)。水曜レディースデイということもあり8割の入り。客層は中高生ばかり。


結論から言うと、ビビるのは音響ぐらいで、幽霊描写は大して怖かないです*1。ホラーを見慣れてる人が怖さを期待しても、まあ、セオリー通りというか巷に溢れる最近のJホラー程度の怖さしか得られない。柴咲コウはさばさばしすぎてあまりホラー向きではないかな。吹石一恵は良かったです。こう書くと「なんだ、つまんないのか」と思うかもしれないが、怖くなかっただけで個人的には面白かったです。『牛頭』の時も思ったけど、この監督は途中から映画のテイストがどんどん変わってゆくんだなあ。中高生たちがあっけにとられてたぞ(笑)。


たまに、『リング』や『呪怨』で貞子や伽椰子が出てくる様に「笑っちゃって恐がれなかった」*2という人がいるんだけど、今日初めてそういう人たちの気持ちが分かった。三池監督は特に笑わせようって気はない。たぶんない。それなのに、ああ、まさかこんなにも笑いのツボを押されるとは(笑)。パンフレットを読むと、監督自身はホラーが苦手で、本作を撮るにあたり『リング』『呪怨』も観たが怖くてだめだったらしい。そういうのも関係してるのか? 周りで女子高生が「こわー」って言ってる中、肩を震わせながら口元を押さえ、声を出して笑いたいのをグッとこらえているのは非常に苦しかったです。


で、どこがそんなに笑いのツボだったかというと、


以下、ネタバレあり


、、、廃墟と化した病院で柴咲コウがゾンビ化した幽霊ママに威されまくるシーン(堤真一が駆けつけるまでの場面)なのだ。
例えば、前半の山場である吹石一恵の身体巻き巻き首チョンパシーン*3なども笑えるシーンではあるのだが、これの場合は「描写があまりに凄すぎて思わず笑ってしまった」という類の笑い。ホラーにおける笑いの質としては正当なものである。しかし、廃墟病院でのゾンビ幽霊ママの行動は、明らかに違う。なんだろう…。真面目に怖がらせようと思って作ったのに出来上がったのはバタリアンだったって感じか? 逆さ吊り天井で背後からススーッと近づいてくるシーンはまだ良かったが、ゾンビ幽霊ママが、自分のヅラひっつかんではずしてみせたり、指をありえねーってぐらいにのけ反らしたりするのは、正直コントかと思った。また、柴咲が「きゃーーー!!」と悲鳴をあげながらズザーーーーーッと引きずられるとこなども、引っ張られるタイミングがあまりに見事でかえって笑いを誘う。確かに、吹石一恵も身体巻き巻きのとこでありえねーって方向に手首やら腕やらバキボキとたくさん曲げてたけど、あれは人間がやってるからキモイのだ。人間が人間じゃない形になってゆくから「このひとなんかおかしいです。やばいです。やばいです」って脳みそが危険信号出しまくり、見ちゃいけないものを見ちゃったようないやーな感覚や恐怖感が得られるわけで、既に人間とは異なる造形になってる幽霊ゾンビ母さんが、吹石一恵を真似て(いや、こっちがオリジナルか)ありえねー方向に指をぐにゅ〜って曲げても、「ほーら、見て!見て! 怖いでしょー。私もこんなに指が曲げられるのよー」って自信満々見せびらかしてるようにしか見えず、余裕たっぷりな様がかえって可笑しい。


でもやっぱ一番キたのは、ホルマリン漬けの肉塊を戸口にズズズッと差し出してくとこだろうな(笑)。


柴崎の目前に並ぶ病室の扉が、手前からゆっくりとひとつづつ開き、中から真っ白な腕がにゅ〜っと伸びては、戸口に一瓶づつ、ホルマリン漬けされた乳白色の肉塊が入った大瓶をズズズズッと差し出してゆくんだけど、2つ3つ連続して差し出した後、その光景に気をとられ腰抜かし座り込んでる柴咲の膝元にススッと白い腕が伸びて、ホルマリン漬けの胎児を入れた大瓶が彼女の膝にそっと乗せられる。悲鳴をあげた柴咲はそれを床に叩きつけ逃げ出すが捕まり引きずられるという一連のシークエンス…。


これはねえ、根本的な部分を取り違えてると思う。確かに<病院にホルマリン漬けの胎児・臓物・肉塊>というのは<理科室に人体模型>と同じぐらい定番の恐怖アイテムである。切り落とされた人体の一部、奇形脳腫、屍骸となった胎児の姿など、昔は人間であったものがただの肉塊に変わった気持ち悪さや、それでいて今にも動き出しそうな生々しさに、恐怖や薄気味の悪さを覚えるのは確かなんだけど、それを怖がらせる対象に見せるときに幽霊が自らの白腕晒しちゃだめでしょ。そんなの一種のネタばらしですよ。ああいうのは動くはずの無い気持ち悪い物体がひとりでにズズズッと動くから怖いんだもん。理科室の人体模型だって、一人で動いて迫ってくるから「うわっ、なんだこいつ!? 幽霊に憑かれてるのか? 魂入ってんのか?」てビビりまくるわけで、もしこれが幽霊に脇の下抱えられながら迫ってこられたら笑っちゃうだろ。それに幽霊ママさんさあ、そのホルマリン漬けの中の肉塊や胎児とあんたに何の関係があるの? あんたはそのホルマリン漬けの患者を治療した医者でもなければ、胎児の母親でも、水子憑き幽霊でもないでしょ? ということは、柴咲コウを怖がらせるためだけにそれ探してきたんだよね? でも、よ〜く考えよ〜♪ そもそもあんたは幽霊なんだからあんた自身が十分恐怖の対象なわけで、その姿で散々ぱら柴咲威かした後に、何故ホルマリン漬けなんて自分とは縁もゆかりもない定番アイテムに頼ろうとするかなあ。どうせやるなら、素材の持ち味をそのまま生かすんじゃなく、もう一手間ぐらい加えようよ。なんか今までライブ感覚で威かしてきたのに、ここだけ計画性や演出みたいなのが見え隠れして、「幽霊さんも、自信満々に出してきた割には、ベタネタで来たなあ。ひねり無しかい!」なんてツッコミいれずには観てらんなかった。しかもおおトリが<胎児のホルマリン漬け>ってこれもまたベタ(爆)。


あ、美々子ちゃん役の子は良かったです。よくぞ見つけてきたなあと感心した。何がって、もちろんです(嬉)。死体写真として観客に初お披露目された時は、演出上のっぺらぼう顔にCG加工されてたにも関わらず、実物も同じ顔なんだもん(爆)。目鼻立ちが異常にのっぺりとしていて、加工後の写真とまったく同じ造形(これにはちょっとビビッた)。それでいて、母親役の女優さんにも似てるから、吹石一恵を襲った幽霊を母親の方と誤認しても仕方ないなと思えてくる。


ネタバレ終了


結論! 演技は柴咲コウの方が上だが、悲鳴は『呪怨2』のノリピーの方が上! よってノリピーの勝ち! 



三池監督が以前に撮ったホラー映画『オーディション』は観てない。グロもサイコもオカルトも血しぶきも臓物も異形も全然へっちゃらだが、身体的に痛そうな映画だけは苦手なのだ。『イン・マイ・スキン』とか絶対観に行けない。今回勇気を出して観てみようかとも思ったが、柴咲コウ演じる由美の母親が、劇中で深爪しそうなぐらい足指の爪を切ってるシーンを観てやめた。あんなの1時間半も見せられたら神経にさぶイボできる。

*1:だからビデオで観るとまったく怖くないと思う

*2:ブラウン管から貞子が出てくる時の特撮のしょぼさ、階段から伽椰子が這って降りてくる姿の仰々しさが妙に可笑しいらしい。私自身は貞子登場シーンは2週間ぐらい部屋のテレビをつけっぱなしで寝てたぐらいビビった。伽椰子が降りてくるシーンも、ビデオ版で初見した時、いやーな感じが終始漂うばかりで可笑しいという感覚にはならなかった。ただ『呪怨』の清水崇監督に関しては、ホラー描写が伊藤潤二系だから笑ってしまうのはある意味仕方ないのかもしれない。現にビデオ版『呪怨2』は、階段シーン以外なら私自身もかなり笑った(ニョロニョロ伽椰子大発生、フライパンで頭部パコーンなどなど)。

*3:これ見たら無性にヒグチンスキー監督の『うずまき』が観たくなった。大杉漣もいろんなとこがぐるぐる巻いてたなあ