『これで、いーのかしら。(井の頭) 怒る西行』トーク、沖島勲×坂口恭平×九龍ジョー

昨年の11/23(火)に「第20回映画祭TAMA CINEMA FORUM」にて行われた『怒る西行トーク付き上映会のレポです。1年も前のトークショーですが、パソコン内を整理してたら出てきたので今更ですがあげておきます。ゲストは沖島勲監督と、当時『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』を刊行したばかりの若手建築家・坂口恭平氏。聞き手は九龍ジョー氏が務めました。トーク時間は40分ぐらいあって非常に面白かったんですが、あんまりちゃんと覚えられなかったので(汗)、この映画を作るに至った経緯や、沖島勲監督と坂口恭平さんの意外なつながりだけUPしておきます。


映画「これで、いーのかしら。(井の頭) 怒る西行」詳細( 2010年1月9日公開)


自分がいま取り組んでることと非常に親和性が高いということで、本作を大変気に入った様子の坂口さん。本作についての感想を問われ「教育映画的だと思った」と評したところ、「この映画は、熊本の大学で映画についての講義をしてたときに学生たちに語った内容を映像にしたモノだ」と答える沖島監督。なんでも、2007年までの5年間、熊本の大学で映画についての講義をしていたそうで、「フィルムは1秒24コマで、フィルムのここには音声データが入ってて…」みたいな技術的な話の他に、映画作りとは直接関係のないこと、、、たとえば、和歌の話や、子供の時の記憶を呼び戻す作業などに講義の3分の1を費やしており、それらをきちんと形にして残しておきたいと常々思っていたけれど、いちいち文字に書き起こして採録するのはめんどうなので映像にした、というのが本作を撮るに至った理由だそうです。


映画『怒る西行』は、脚本家であり劇映画監督でもある沖島勲監督自らがカメラの前に立ち、お気に入りの散歩コースである玉川上水を歩きながら目に入る風景についてあれこれ語ってゆくさまを記録した映画なんですが、ゲストの坂口さんもいま現在玉川上水について興味をもちさまざまな取り組みをしているそうで、しかも熊本出身、、、。そういった共通点があるから今回対談相手に呼ばれたのかと思ったら、実はそれだけじゃない。坂口さんが高校生のとき、建築の勉強をしようと受験先の大学を決めるときに、どこに入ったらいいのかよくわからなかったため、気に入った建築家が教えてる大学に行けばいいんじゃないかと思い立って建築家の書いた本を片っ端から読みあさったときに唯一ビビッときた建築家が石山修武(おさむ)さんという方だそうで、彼に弟子入りするために当時教授を務めていた早稲田大学を受験し見事合格。入学後、モヒカン頭で教授の部屋を訪れ「あなたに会いに来ました」と言ったら開口一番「ふざけるな」と怒られた、、、なんてエピソードも語ってくれました。それで、実はこの石山教授。何を隠そう、沖島監督の聞き手として本作に登場してる石山友美さんのお父さんなんだそうで、テーマ的にも人間関係的にもいろいろ縁があって今回呼ばれたのでした。


その石山友美さん(本作では【編集】としても参加)について、聞き役に徹しながらも的確に監督を誘導してゆく彼女の聞き手としての力量を九龍ジョー氏が褒めると、「当初聞き手はおかず自分がひとりで喋るつもりだった。彼女にはマイク持ちとして傍にいてもらう予定だったが、録音はちゃんとしたプロに任せた方がいいだろうということになり、現場での彼女の役割がなくなってしまったのでとりあえず聞き手として傍についててもらった」と語る沖島監督。ちなみに石山修武さんも本作を見ており(DVDで見たそうなので娘さんが編集中のものを観たのかも?とのこと)、友美さんには内緒で奥さんから連絡先を聞きだし「一度会って話したい」と沖島監督に直接コンタクトをとってきたそうです(追記:調べたらそのあたりのことを石山修武さんが自身のWEB日記に書いてました。興味のある方はこちらのページ内を「沖島勲」で検索かけてみてください 。沖島監督と石山さんで何やら紀行文を書くというとこまで話が盛り上がったようです)。



ちなみに本作で沖島監督はつげ義春の漫画「長八の宿」(江戸時代の天才・左官工、入江長八が装飾を施した伊豆に実在する宿「山光荘」をモデルにした漫画)についてチラッと言及してるんですが、この入江長八の作品を展示してる「長八美術館」の建築デザインを担当しているのが、偶然にも石山修武さんなんだそうです(坂口さん曰く、いまどきのモダンなデザインだけど左官職人さんを揃えコテを使って昔ながらの工法で仕上げた漆喰の美術館とのこと)。

リアリズムの宿―つげ義春「旅」作品集 (アクション・コミックス)

リアリズムの宿―つげ義春「旅」作品集 (アクション・コミックス)

そういえば、映画の中で沖島監督がこの漫画に出てくる富士山すらも住まいの一部に組み入れてしまおうとする男の話を引用しつつ「これは一種のユートピア感の中に入るんじゃないかな」と語ってる場面が出てくるんですが、それに捕捉して「〈ユートピア〉とは外部にあるものを内側に取り込んで作るもの。だからユートピアは外ではなく自分の中にあるのではないのか」といった話をすると、坂口さんがいま話を聞いてるホームレスの男性が似たような感覚の人らしく、彼はいま橋の下につくった一畳ぐらいの家に住んでいるんだけど、彼に言わせるとここは家ではなく寝室なんだと。橋が家の屋根で、街が自分の庭。水が飲みたければ公園へ、本が読みたければ図書館に行くんだそうで、沖島監督の言うユートピア感にすごく似たものを感じると共感してました。




ちなみに今年もそろそろTAMA CINEMA FORUMの開催が近づいてきたと言うことで、公式へのリンク張っておきます。
第21回映画祭TAMA CINEMA FORUM(2011/11/19(土)-11/27(日))
うわあ、黒沢あすかくるのか。光石研特集もある。てか行きたいのが日付かぶってる..orz。