哀川翔が企画した映画『RUSH!』

哀川翔主演100本目を記念して三池組が総力をあげ企画・製作した映画『ゼブラーマン』が2/14(土)からついに全国ロードショーされる。それに先立ち、WOWOWでは今週、哀川翔主演作一挙放映祭りが催されているのだが、今晩深夜0時3分から放映される映画『RUSH!』(ASIN:B00005UDBI )は、翔さん自ら原稿用紙150枚にもわたる膨大な企画書を書いて作り上げた意欲作。当初、哀川翔は主演ではなく監督として参加する予定だったが、韓国側の主演女優がキム・ユンジンに決まったことで、釣り合いを考え主演もすることに。しかし監督と主演との両立は無理と判断し、監督は補佐で付いてた瀬々敬久にバトンタッチ。クレジットには「主演・哀川翔」「企画・あいかわ翔」で名を連ね、出演シーン以外でも現場に通いつめ撮影を見守りつづけるなど思い入れたっぷりに出来上がった作品なのである。


しかし、哀川翔ファンにとっての『RUSH!』ってどういう位置付けなんだろうなあ。傍から見るとほとんど眼中にないように見える。だから、哀川翔ファンでもある宮藤官九郎が、『ゼブラーマン』関連のインタビューで「哀川翔主演映画でどの作品が好きですか?」と問われるたびに『RUSH!』の名を挙げていたのは正直言って意外だった。本人もその自覚があるようで、「意外と『RUSH!』が好きなんですよ」という答え方をしている。「意外と」っていうことは、つまりあれだ。「哀川翔ファンで『RUSH!』が好きだっていう人はあんまりいないんですけど、僕は意外とこの作品の翔さんが好きなんですよ」という意味なんだろ。どうだ?


翔さんは尊敬する監督として、三池崇史黒沢清と並びこの『RUSH!』を監督した瀬々敬久の名前をよく挙げている。三池と黒沢はわかるのだ。がっつり組み合ってお互いのブランドを高めあってきた仲だからだ。しかし瀬々監督と組んだのは、『冷血の罠(1998)』『RUSH!(2001)』『超極道(OVA/2001)』の3本だけ。100本のうちたったの3本である。初タッグの『冷血の罠』は、製作したツインズジャパンの下田淳行プロデューサーから「哀川翔主演で1本撮ってくれ」と瀬々さんが頼まれて作った1本で、脚本は瀬々&井土紀州が担当。スタッフは黒沢清組でもおなじみの面々*1が名を連ねたので黒沢清っぽい雰囲気に仕上がっている。ただ、出来上がった作品を観ると、助演の西島秀俊が良すぎて、主演にもかかわらず哀川翔自体の影は薄かった。『RUSH!』で瀬々監督が補佐することになったのも、プロデューサーのご指名であり、翔さんの意向というわけではないようだ。それでも瀬々監督の名が挙がるということは、共に『RUSH!』を作り上げたときに見せた映画に取り組む姿勢が、哀川翔的にかなりインパクト強かったのであろう。それは完成披露試写会(2001.03.23)でのコメントにもよく表れている。


話を『RUSH!』に戻すが、この作品、私はかなり好きです。いろいろとあれなところもあるけれど、予想をいい意味で覆してくれたラストに免じ、そこらへんは全て帳消し!(笑) 本作では、ビザ切れで本国に強制送還されてしまったハニホー・ヘニハーが覆面プロレスラー役で登場し、哀愁漂ういい味醸し出してる。瀬々監督自身プロレス好きらしく*2、チープな画から愛情がにじみ出ている。


結局瀬々さんって人はファンタジーが好きなんだなあ。行き着く先はアナザー・ワールドですか。


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『RUSH!』舞台挨拶の模様1


*1:撮影・林淳一郎、美術・丸尾知行

*2:昨年公開された武田真治主演『SFホイップクリーム』ASIN:B0000AZSKP)はその趣味を前面に押し出した作品となっている