葬儀にまつわる奇妙な出来事

父親の葬儀はいま流行りの自由葬だった。実はうち、神主の家系なんで(といっても父は継いでないけど)、私が子供の頃などは「うちは神道だから金かからなくていいぞー」と言ってたはずだが、親戚の葬儀をいくつか取り仕切ってるうちに、慣習化した葬儀にまつわる故人そっちのけのどうでもいいいざこざや出費にほとほと嫌気がさしたらしく、自分の時は、香典供物宗教一切無し、ほんとに故人と親しかった者にだけ来てもらうお別れ会形式の葬儀をプロデュースして死んでった。参列者は親族とごく親しい友人だけで*1、父が生前作ってた参列者リストを元に、そこに名前の載ってる人にだけ葬儀の場所と時間を教えて来てもらった。半密葬みたいな形なんで、葬儀にこちらのあずかり知らない全くの他人が来ることは基本的にあり得ないはずたっだ。。。


ところが、葬儀の前日、見知らぬ男性から実家に電話がかかってきた。電話をとったのは母。聞かれたのは明日の葬儀の時間。相手が名前を名乗ったので母もあっさり答えたが、それは母のまったく知らない人物だった。父の知り合いかもと思い住所録を調べたがそんな人はいないし、第一、父の知り合いなら遺族が電話口に出た時点で多少の世間話はするだろう。


「泥棒じゃないの? 葬式でみんなが出払う時間を確かめたんだよ。きっと香典狙いだね」


それはありうる。しかし、うちは通夜のときも香典もらわなかったので、それ狙いで入るならご愁傷様な泥棒だ。あぶないのは葬儀費用として銀行からおろしてきた150万近い現金。これが盗まれたら大変。ということですぐさま隠し場所を思案した。


突然の泥棒疑惑騒動に、葬儀当日はドキドキである。戸締まりを厳重にしたが、いったん葬儀場に行ってしまえば夕方まで帰ってこない。隠し場所を探り当てられないことを祈りながら家を出た。


葬儀が始まっても参列者の中に見知らぬ顔はなかった。記帳名簿を見ても電話の人は来ていない。やはり泥棒なんだろうか。ドキドキ、ドキドキ。


そして全てが終わり夕方に帰宅。鍵、かかってる。家の中、荒らされてない。150万、無事だ!



結局あの電話はなんだったんだろう。謎は残されたまま。皆さん、葬儀のときは、見知らぬ人からの電話にお気を付けて。


*1:しかもこの人が来ると場が悪くなるって親族はリストから外してあった。