劇団ラッパ屋第47回公演『君に贈るゲーム』を観る(@紀伊國屋ホール)

ラッパ屋の最新公演『君に贈るゲーム』を観劇。今回はコロナ禍ということもあり、劇団を2チームに分けて同じ役をまるごと入れ替え上演するという初の試みだった。


脚本・演出 鈴木聡

役名 サイコロチーム ジャンケンチーム
課長 おかやまはじめ(58) 熊川隆一(62)
教授 木村靖司(60) 松村武(カムカムミニキーナ)(52)
スーツ 宇納佑(63) 中野順一朗(49)
ヤング 林大樹(32) 浦川拓海(38)
マダム 谷川清美(演劇集団円)(55) 岩橋道子(53)
お局 ともさと衣(45) 椎名慧都(劇団俳優座)(28)
エコバ 弘中麻紀(53) 大草理乙子(66)
秘書 岩本淳(56) 武藤直樹(59)
会長 ?(声のみ) ?(声のみ)

ジャンケン→サイコロの順に観賞。Wキャストといっても年の差が離れてる場合も多く、ひとつひとつの台詞の裏に、それを発する役者のイメージに見合ったバックボーンをこちらが勝手に付加してしまうため、同じ人生を同じ言葉で語っても50代が語る姑の介護と、60代の語るそれも違うし、アラ還とアラフィフ、アラフィフとアラサーでは印象や重みがかなり変わり面白かった。ていうか、、、マダム役の谷川さんと岩橋さんって実年齢的には同世代だったのか(谷川さんのあの貫禄はどこから?) 課長役もおかやまさんより熊川さんの方が年上なのも驚き。同じスーツ役でも宇納さんは証券マンぽいし、中野さんは個人で株やFXやってそうだし。異なる印象の役者に同じ人物を演じさせた結果、イメージによって言葉の意味をこんなにも取り違えるんだって言う実証実験にもなっていて面白い。チームの組み合わせ変えたらまた印象変わりそう。


路地裏の小さなボードゲームカフェに集まった年齢も経歴も異なる常連客達が、「会長」と呼ばれていた常連客に自宅へと招かれ、15歳の少年が夢をもてるゲームのプロットを考えて欲しいと頼まれるお話。ゲームとは選択の連続だ。では、自らの人生をどうだったろう。進学、就職、結婚、、、それらはすべて自ら選択してきた道だったのだろうか。自ら選択し決断したことっていうのは意外に少なくて、なんとなく周りに流されるままそちらの道を選ばされてきたのではないだろうか。そしてそれは別に悪いことじゃない。すべてを自分で選択しなければ前に進めない人生はそれはそれできつい。



私は自分の人生に大きくかかわることで悩むことってほぼ無いんだけど、いったん悩み出したら「石橋を叩いて叩いて叩きまくった結果、この橋は叩きすぎて強度が危うくなってるだろうから渡らない!」と決断をする性格だということを熟知してることもあり、決断できない事態がもたらされないように自分自身に対し外堀を埋めてゆくというか、石橋叩きループに入りそうな問題はあえて流れに身を任せ、決断に対する後悔や精神的負荷を極限まで緩和しながら生きてきた人生だったように思う。


「やらぬ後悔よりやって後悔した方がいい」という意見をよく目にするが、やらぬ後悔よりやってしまったことへの後悔の方が断然強いタイプなので、後悔しそうな行動はひとまず「やらない」と決断するか、流れという名の運命に身を委ねると、失敗した時に「これも運命」と諦めがつきやすく、心身の負担が軽く済む。「やっぱり人任せにせず自分で決断すればよかった」という後悔なんぞ微塵も起こらない。それは「どうせ自分で決断したらもっと酷いことになってたに決まってる!」という確固たる自信があるからで(どんだけネガティブ?)、迷って迷って決断したら最悪なものを引く経験の積み重ねが、いまのこの私の「即断即決出来ない問題は流れに身を任せた方がうまくいく」という感覚を強化していったのだろう。そして実際、いま、人生うまくいっている。


人には向き不向きがあるので同じ方法をとる必要はないし、『激レアさん』観ても、自分で選択し決断しどんどん突き進んでいくタイプと、流れに身を任せていたらあられもないところまで来てしまったタイプと両方の成功者がいるので、人生なんて、自分で決断しようがしまいが、選択しようがしまいが、自分が後悔しない方へと常に身を預けていれば最終的になるようになるんじゃないのかな。


ただ、そんな自分にも今年に入ってからちょっとした変化が訪れた。給湯器が壊れたショックがあまりに大きく、一時的に過度なストレスがかかったせいなのかはわからないが、恐怖や不安に直結する神経回路が1本どこかへ飛んでいってしまったようで、気持ち悪いイラストとか見ても全然怖くないし、石橋を叩いても1回ぐらいで済ますことが明らかに増えた気がする。これも老化の一種なのか(だから老人は怖い物しらずなのか)。姓名判断だと「大器晩成」なので、いよいよその晩成が来たのかも知れない。


、、、て、なんの話だ? お芝居の感想じゃなかったのか? 



ラッパ屋の公演を初めて観たのは1996年『凄い金魚』。観たと言ってもテレビでなんだけど、ちょうど大学卒業して就職もせずバイト生活を送ってた頃かな。それから26年、役者さんも恰幅が良くなったり、頭が白くなったりし始めたが、変わらずいつも、人生の悲喜こもごもを笑いに変えて提供してくれている。この先も、こうやって一緒に歳を取って、公演にいくたび、自分の人生を振り返るのだろう。


そういえば、「会長」役って誰だったんだろう。Wキャストの中、唯一どちらにも出演してたんだよね(声だけ)。

喬太郎師匠だったのか。。。