呼吸が重視しているのは「酸素より二酸化炭素」というはなし

この一ヶ月、「呼吸」の勉強をして一番驚いたのが↓これだった。

息苦しくなるのは、酸素が足りないからじゃない。
二酸化炭素を吐き出せないからなんだ!

新型コロナの体験記や症例報告に目を通していると、息苦しさなんて全くないのに「CT撮ったら肺炎だった」「血中酸素濃度が酷く下がってた」という患者が結構な数存在していて、患者自身が首をかしげる様を何度も見かけたし、目にしたこちらも純粋に不思議に思ってた。


同じことはアメリカの救命医も指摘しており、「新型コロナ肺炎の場合、肺炎症状が何日も続き、酸素量が驚くほど低下しても患者自身は息切れを感じない」と報告。その理由について「肺胞が虚脱しても二酸化炭素が問題無く吐き出せているため息切れを感じないのだ」と説明している。(⇒「コロナ「突然重症化した人たち」の驚くべき共通点〜10日間救急治療室で患者を診た医師の見解〜 / The New York Times」)


「息が苦しくなるのは酸素が足りないからだ」と思うのが一般的だが、実際はどうも違うらしい。身体にとっては酸素が不足することよりも有害な酸性物質である二酸化炭素が増える方がより深刻な問題であるため、血中に二酸化炭素が溜まると息苦しさを感じ身体の外に吐き出すために呼吸が促される。酸素が足りなくなっても息苦しさを感じることはない。


同じようなことは他にもあり、「全力疾走後に呼吸が荒くなるのは、足りなくなった酸素を取り戻そうとしてるからだ」と一般的には思われているが、これも「全力疾走したあとは、増えた二酸化炭素を吐き出すために呼吸が荒くなる(呼吸回数と深度が増す)」のであって、二酸化炭素が吐き出し終われば呼吸は落ち着く。酸素はとっくの昔に足りているので、酸素が足りたから呼吸が落ち着くわけではない。仮に体内の酸素量が足りないのであれば、頑張って呼吸して酸素をいま以上に多く取るより、身体活動を強制的に停止させ、呼吸以外の活動による酸素の使用量をおさえる方が効率が良いし確実(「頑張って呼吸する」という行為は「酸素を必要以上に消費する」こととイコールなので本末転倒)。


なぜこんなことが起こるのか

呼吸には、深呼吸のように意識して行う「随意的呼吸」と、日常生活や睡眠時のように意識せず自動で行われる「不随意的呼吸」とがある。前者は「大脳皮質」によって支配され、後者は延髄にある「呼吸中枢」によって管理される。
意識せずに行われる呼吸は、血液中の酸素濃度、水素イオン濃度(pH値)、二酸化炭素濃度の変化にあわせ、呼吸の回数やリズムが細かく調整される。中でも、調整を担う「呼吸中枢」が最も重視してるのが「血中の二酸化炭素濃度」で、濃度が上昇すると呼吸数を増やして二酸化炭素の排出量を高め、濃度が低くなると呼吸を抑制して必要以上の排出を食い止める。排出が追いつかず二酸化炭素の濃度が高いままだと「息苦しい」という感覚が生じてくる。
一方、酸素濃度の低下に敏感なのは随意的呼吸を支配する「大脳皮質」で、低酸素時によくみられる呼吸症状が「息切れ(呼吸困難)」である。しかし「息切れ」の程度は呼吸中枢から各呼吸筋への指令増加と相関関係にあるため、酸素濃度の低下を大脳皮質が感知しても、呼吸中枢が無反応だと「息切れ」は起こらない。「息切れ」を起こすためには呼吸中枢の反応が不可欠だが、呼吸中枢は酸素濃度の低下にはあまり反応しないので、血中の酸素不足と二酸化炭素増加が同時に起こる必要がある。(⇒参考「呼吸困難のメカニズム(pdf)」)


なぜ呼吸中枢は酸素より二酸化炭素を重視するのか

ここからはとても長い話になります。


ソースがあまりに多すぎてもうぐちゃぐちゃになってしまったので深掘り用のリンク以外割愛しますが、これからまとめる呼吸の話は↓この本にあらかた載っています。

この本に載ってないことはググって頂くか、通りすがりの医療関係者もしくは医学・看護学生つかまえて確認してください。それでも確認できない内容は私の勘違いです(汗)。ちなみに説明がめんどくさいところは大幅にはしょってますが、豆知識は積極的に盛り込んでます。

まずは、二酸化炭素が吐き出されるまでの道のりからお話します

ヒトは食事によって摂取した栄養素(炭水化物・脂質・タンパク質)を、胃腸の消化酵素を使って「炭水化物→ブドウ糖グルコース)」「脂質→中性脂肪(グリセロール+脂肪酸)」「タンパク質→アミノ酸」へと分解し、小腸下部で体内へと吸収。吸収された栄養素のうち、中性脂肪はリンパ管を通って左鎖骨下静脈から血中に放出。それ以外のグルコースアミノ酸は一旦肝臓に送られ、運動や空腹など必要に応じて随時血中に放出される。そしてすべての栄養素は、最終的に脳、骨格筋、脂肪といった末梢組織の細胞へと運ばれ、インスリンなどの助けを借りて取り込まれ、「ATP」というエネルギー化合物や体温維持に使う「熱エネルギー」を作り出したり、緊急時の栄養源として貯蔵されたり、新たなタンパク質を作り出すのに使われる。(※生化学反応によってエネルギーを生み出したり、新たな物質を合成することを総じて【代謝】と呼ぶ)


細胞の大部分を満たしている「細胞質」では、【解糖系】と呼ばれる酸素を使わない嫌気的代謝経路によって栄養素(グルコース、グリセロール)からATPが作り出され、代謝産物として「ピルビン酸」が生まれる。次に、この代謝産物(ピルビン酸)と解糖系に入らない栄養素(脂肪酸)、そして「酸素」が、細胞質内に存在する「ミトコンドリア」に取り込まれ、【クエン酸回路(TCA回路)】と呼ばれる酸素を使った好気的代謝経路によって大量のATPを作り出し、その代謝産物として「水」と二酸化炭素が生まれ、解糖系で生まれたピルビン酸のうちクエン酸回路に入らずそのまま細胞質に残ったものが「乳酸」となる。
(※解糖系でグルコース1分子から作られるATPはたったの2分子。これがクエン酸回路に入ると24分子に増えるため、大量のエネルギーを生み出すのに酸素は欠かせない。また、疲労物質として毛嫌いされてる「乳酸」も、最近の研究では酸素があればATPへの変換が可能であることがわかり、低血糖時に使える緊急用エネルギー源として見直されている。⇒参考「乳酸の基本 -乳酸は悪者なのか?-」)
(※「脂肪細胞」のうち、血中の栄養素を脂肪に変換して貯蔵してるのが「白色脂肪細胞」、熱エネルギーに変換してるのが「褐色脂肪細胞(ベージュ脂肪細胞を含む)」。この2つを分けてるのは「ミトコンドリアの有無」で、ミトコンドリアを持たない白色脂肪細胞は熱エネルギーを作り出すことができない。ただし一部の白色脂肪細胞には寒冷刺激等を受けると褐色化して熱エネルギーを生み出すものがあり、「ベージュ脂肪細胞」と呼ばれ近年注目されている。⇒参考「脂肪細胞のベージュ化を促す調節メカニズムを解明、富山大|CareNet」)


細胞内のpH(水素イオン濃度)は通常7.0の中性に保たれており、水素イオンが増えるとpH値が低下して「酸性」に、水素イオンが減るとpH値が上昇し「アルカリ性」になる。水素イオンは「酸性の物質」が「水」と反応することで増えるため、水素イオンが増えることは酸性物質が増えることとイコールになっている。細胞内での代謝が亢進されると、乳酸や二酸化炭素炭酸ガス)といった酸性物質が増え、それらが水と反応し水素イオンを放出することで細胞内pHは徐々に酸性に傾いてゆく。代謝に関わる「酵素」は細胞内のpHが適正範囲から逸脱すると活性が低下しうまく働かなくなる。酸素があればATPへと変換できる乳酸と違い、二酸化炭素は細胞外へ排出する以外の道がないため、代謝の活性を維持するためには、二酸化炭素を速やかに排出し細胞内pHを適正範囲に戻す必要がある。
(※乳酸は酸素と反応してATPに変換することも可能だが、酸素の供給が滞るとATPに変換できず細胞内のpHを下げるので、そうなった場合は速やかに細胞外へと排出する必要がある。)


二酸化炭素の排出先となる血液はpH値7.4の「弱アルカリ性」。細胞内より水素イオン濃度が低く抑えられている。二酸化炭素の移動には、濃度の高い方から低い方へと移動する【拡散】という方法がとられてるため、代謝によって生まれた有害な酸性物質(二酸化炭素、乳酸等)は細胞・血液間の濃度勾配を利用し速やかに血液中に取り込まれることになる。血液内に移動した酸性物質のうち、乳酸は最終的に肝臓で代謝され、二酸化炭素は肺で肺胞内へと取り込まれ呼気に混じって体外へと排出される。酸性物質を排出したことで水素イオン濃度が低下した血液は、再び「弱アルカリ性」に維持される。
(※実際は他にも酸性物質があるんだけど、呼吸にはあまり関係がないので割愛する。気になる人は「不揮発性酸 腎臓」でググってください)。

二酸化炭素の排出を阻むもの

二酸化炭素の移動には常に濃度勾配を利用した【拡散】という方法がとられているが、スムーズに拡散させるためには、移動先の二酸化炭素濃度が常に低めに維持されてる必要がある。
大気中の二酸化炭素濃度は約0.04%(酸素は約20%)で大気500ml中たった0.2mlしかなく常に圧倒的に低い。外気と肺胞内の空気の入れ換え(【換気】と呼ぶ)がしっかり出来ており、肺胞や血管に器質的な問題がなければ、肺胞←血液←細胞への移動はスムーズに行われる。もし肺胞内の換気が不十分だと、、、例えば、「息を止める」「呼吸が浅い」などにより肺胞に溜まった二酸化炭素を十分に外に排出できない状態が続けば、肺胞内の二酸化炭素濃度は高いままとなり、出口詰まってどん詰まり。血液内にも細胞内にも二酸化炭素が滞留することになる。


ここまでが二酸化炭素の基本情報。


次に、酸素が細胞に届けられるまでの道のりについてお話します

吸気によって肺胞に取り込まれた酸素は、同じく【拡散】という方法で、肺胞→血液→細胞へと二酸化炭素とは逆のルートをたどって末梢組織に届けられるが、酸素は二酸化炭素と違って水に溶けにくく血液に直接溶け込むことができないため、赤血球内の「ヘモグロビン」に結合して血液内を移動する。


ヘモグロビンは「酸素親和性が急速に変容する」という性質をもつため、動脈血内の酸素濃度が基準値を少し上回るだけで速やかに酸素と結合し、少し下回るだけで結合した酸素を速やかに放出することができる。また環境によって変容を起こさせる基準値が変動するため、温度が低く・酸素濃度が高く・pH値が高く・二酸化炭素濃度が低い動脈血内ではよりたくさんのヘモグロビンが酸素と結合し、温度が高く・酸素濃度が低く・pH値が低く・二酸化炭素濃度が高い動脈血内ではよりたくさんのヘモグロビンが結合した酸素を放出する。この特性により、二酸化炭素が少なく酸素が多い「肺の動脈血」ではヘモグロビンの酸素結合が加速し、熱エネルギーの産生で温度が上昇し、代謝によって二酸化炭素が増え且つ酸素濃度が低下してる「末梢組織の動脈血」ではヘモグロビンの酸素放出が加速する。(⇒参考「ヘモグロビンにおける調節」「酸素解離曲線(pdf)」)


ヘモグロビンから離れ、血中に放出された酸素は、拡散によって酸素が不足してる細胞内へと取り込まれ、ミトコンドリア内でのエネルギー産生に使われる。


酸素の取り込みを阻むもの

肺胞での二酸化炭素排出がうまくいかず血中に高濃度の二酸化炭素が残ったままになっていると、肺胞から酸素を受け取る際にヘモグロビンと酸素の結合がうまくいかなくなり、末梢組織に供給できる酸素量が減ってしまう。

赤筋には酸素の貯蔵庫がある

酸素消費量の高い心筋や骨格筋には、万が一のときに備え、酸素を貯蔵するための「ミオグロビン」という色素タンパク質が存在している(筋肉の赤い色素がそれなので赤筋に存在する)。血中の酸素濃度が代謝に必要な酸素量に満たなくなると、貯蔵してた酸素分子が遊離し、ミトコンドリア内に供給される。ミオグロビンはヘモグロビンに比べ酸素結合性がおそろしく高いので、貯蔵した酸素が空になっても、肺胞からの酸素供給が再開されれば、ヘモグロビンが手放した酸素分子は真っ先にミオグロビンと結合し、速やかに貯蔵され、必要があるときまで手放すことなく大事に貯蔵される。



ここまでが酸素の基本情報。


要するに、酸素が不足すると大変ちゃあ大変だけど、当座のエネルギーを作り出すのに必ずしも酸素は必要ないし、血中に二酸化炭素が溜まると、そもそも酸素が取りこめなくなるので、「呼吸中枢」にとっては酸素濃度より二酸化炭素濃度の方が重要、ということになる。


呼吸中枢のモニター先を「酸素濃度>二酸化炭素濃度」にすることはできないのか

無意識の呼吸では、主に血中の二酸化炭素濃度をモニターして呼吸リズムをコントロールしていると説明したが、肺の機能が障害されて浅い呼吸ばかり繰り返すようになると、肺胞での換気が不十分となり肺胞内に残る二酸化炭素量が増えて血中から肺胞へうまく拡散できず血中の二酸化炭素濃度が常に高い状態に陥る。すると、呼吸中枢のモニター先が二酸化炭素から酸素濃度優位に切り替わり、血中の酸素濃度が低下すると「もっと酸素を吸い込め」と指令が出て呼吸が速くなり、酸素不足が解決すると呼吸が抑制されるようになる。モニター先が切り替わった状態で不用意に高濃度の酸素を吸引すると「もう十分酸素が有るから呼吸しなくて良い」と指令が出されて突然の呼吸停止を引き起こし、吐き出せなくなった二酸化炭素が体内に溜まり、血液が酸性に傾き意識障害に陥いるのでとても危険(※血液が酸性に傾く酸血症と血液がアルカリ性に傾くアルカリ血症の主な症状は↓こちらを参照)。
酸塩基平衡|“コレ何だっけ?”な医療コトバ | 看護roo![カンゴルー]


長々と語ってきたことをまとめると

生命活動を維持するためには細胞の中に酸素と栄養素を取り込み代謝によって大量のエネルギーを作り出す必要がある。しかし代謝が進むと、その代謝産物として生まれた二酸化炭素が細胞内のpHを酸性に傾け、代謝に関わる酵素の働きを弱めてしまうため、増えた二酸化炭素は速やかに細胞外へと排出しないと代謝活動が止まりエネルギー不足に陥る。細胞から血中に排出された二酸化炭素は、「呼吸中枢」がモニターで常に監視。血中濃度が適正範囲におさまるよう呼吸量やリズムを調整している。しかし肺胞の換気不足により、肺胞にたまった二酸化炭素がスムーズに外に排出されないと、細胞→血液→肺胞といった排出ルートが滞って血中の二酸化炭素が滞留し、ヒトは「息苦しさ」を感じるようになる。これを解消するには、滞留した二酸化炭素を外に吐き出すしかなく、十分に排出されれば「息苦しさ」はおさまる。


一方、血液→肺胞への二酸化炭素の排出が滞り、肺の動脈血に高濃度の二酸化炭素が滞留すると、ヘモグロビンの酸素結合能力が弱まり肺胞→血液→細胞といったルートでの酸素供給量は低下し身体は低酸素状態に陥るが、こういう時のために貯蔵してた酸素をミオグロビンから放出したり、酸素量にあわせて代謝活動を抑制すれば当座はしのげる上に、二酸化炭素の排出がスムーズにいけば低酸素状態はすぐに改善されるため、「呼吸中枢」は酸素濃度の低下に対する扱いが淡泊で、低酸素状態が慢性化したときだけ、モニター先を二酸化炭素濃度から酸素濃度に切り替え呼吸調整を行ってくれる。


酸素濃度の低下が常態化しない限り「呼吸中枢」はこれといった対処をしてくれないので、呼吸状態を見るだけでは低酸素状態を見抜くことはできず、気付いたときには重症化している。従って、低酸素状態の早期発見には、他の指標が必要となる。

代謝に関わる酵素とpHの関係についての説明が足りない」というツッコミもあるかと思うが、そこはねえ、なんつーか、泥沼にはまりそうだったので深掘りしてません。気になる方は↓こちらをお読みください。
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/biochem5.htm文系の方なら開いた瞬間に「ああ、うん、そうだね(汗)」てそっ閉じしたくなるこの気持ちを理解していただけるかと思います。一応私の中では酵素を除けば入口と出口が綺麗につながったので、ここまで調べがつけば問題ないです。
水素イオンも最初はスルーしたけど、これやらんと話がうまくつながらなかったので渋々勉強しました。
(⇒参考「NHK高校講座 化学基礎 第27回 水素イオン濃度とpH(pdf)」)


低酸素状態を見極める指標

低酸素状態の事例と症状をいくつか集めてみた。

  • 「酸素欠乏症(通称:酸欠)」

酸素濃度18%未満の環境に置かれた場合に生じ得る症状。個体差が大きい。酸素不足に最も敏感なのは「大脳皮質」。大気中の酸素濃度は約21%だが、それが16%に低下すると、呼吸数増加、脈拍数増加、頭痛、吐き気、集中力の低下といった症状が起こる。12%だと筋力低下、めまい、吐き気、体温上昇。10%は顔面蒼白、チアノーゼ、意識不明、嘔吐。8%で昏睡、6%でけいれん、呼吸停止となる。初期症状がありふれているので、気付いたときには既に危険な状態であることが多い。
(⇒参考「酸素欠乏症 - Wikipedia」)

  • 「貧血」

鉄分の不足によりヘモグロビンが減少したり、赤血球の数が減ったり、赤血球の容積が減ってヘモグロビン濃度が減少することにより、酸素運搬能力が低下する状態。多臓器・組織が低酸素状態になると、代謝に支障を来してエネルギー不足となり倦怠感を引き起こす。酸素運搬量を増やすために、血流量や呼吸量を増やして代償しようとすることで動悸や息切れが起こる。血色素であるヘモグロビンが減少するため、体の各部が蒼白する。貧血が徐々に進行すると身体が低酸素状態に慣れてしまい、相当強い貧血にならないと自覚症状が起こらない。
(⇒参考「貧血 - Wikipedia」)

  • 「起立性低血圧(脳貧血)」

急に立ち上がった時に血圧が低下すること。血圧低下により一時的に脳への血流量が不足すると、ふらつき、めまい、頭痛、複視または視野狭窄・眼前暗黒感、四肢あるいは全身のしびれ(異常感覚)、気が遠くなるなどの症状を起こす。
(⇒参考「起立性低血圧 - Wikipedia」)

  • 「高山病」

2400メートル以上の高山に登り酸欠状態に陥いる状態。主な症状は、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気(めまい)である。他に、顔や手足のむくみ、眠気やあくびなどの睡眠障害、運動失調、低圧と消化器官の機能低下からくる放屁などが現れることもある。
(⇒参考「高山病 - Wikipedia<」)

めんどくさい人はパルスオキシメータで動脈血の酸素飽和度(SpO2)を測るのが手っ取り早いです。
(⇒参考「よくわかるパルスオキシメータ(pdf)」)
PAO2、SpO2、SaO2、PaCO2、PaO2などいろいろ表記があるけど、O2は酸素、CO2は二酸化炭素、Pは分圧、Sは飽和度、Aは肺胞、aは動脈血、pはパルスオキシメーターを意味します。
(⇒参考「研修医レクチャー5 血液ガス・酸塩基平衡の読み方」)


逆に二酸化炭素を極限まで吐き出したらどうなるのか

もし肺胞に入ってる二酸化炭素を極限まで吐き出し、血中における二酸化炭素の増加を遅らせることができたらどうなるのか。実際にやってみるとわかるのだが、息を止めてもまったく息をしたいという気にならず、1分以上苦も無く呼吸を止め続けることができるようになります。
この機能を素潜りのテクニックとして応用したのが「ハイパーベンチレーション」という呼吸法。大気中の二酸化炭素自体はかなり少ないが、普通に呼吸をしただけでは吐き出しきれず、肺の中に結構な量の二酸化炭素が残ってしまっている。ところが大きな深呼吸を早めに何度か繰り返すと、肺の中の空気を極限まで入れ替えることができるので、血中から肺胞内へと移動できる二酸化炭素の量が増加し息苦しさを感じる時間を遅らせることが可能となる。潜ってる間、血中酸素は減り続けるが、二酸化炭素濃度がなかなか危険水域に達しないため、呼吸中枢が反応せず、「苦しい」「息をしたい」と思うことなく長い時間潜っていることができるようになる。しかし苦しくなくても現実に酸素は減り続けてるので、浮上した際の気圧変化で酸素分圧が下がりブラックアウトするというなかなか危険な呼吸法であるため、水泳競技では禁止されている(気圧変化で酸欠が進む理由は説明がめんどくさいので↓こちらを参照)。
【やりすぎ厳禁】ハイパーベンチレーションとは?」「住ムフムラボ コラム 第4回「大きく息をはいてみよう」

「呼吸中枢」と「大脳皮質」の指示が割れると「過呼吸発作」を招く

「大きな深呼吸を早めに何度か繰り返す」というこの呼吸が意図せず過剰に繰り返されるのが、過換気症候群やマラソンなどの直後に起こる「過呼吸発作」。二酸化炭素を吐き出しすぎて血中二酸化炭素濃度が急減すると、呼吸中枢は一時的に呼吸を停止させ、血中の二酸化炭素濃度を上げようと試みる。これに対し、大脳皮質は呼吸ができなくなる状態を異常事態と捉え、さらに呼吸させようと努力呼吸を促すため、「息が吸いたくても吸えない」という悪循環が起こり、ただの過呼吸から過呼吸発作へと悪化する。血中の酸素自体は足りており酸欠ではないので、数秒間息を止めたり、数秒かけて息を吐くなどして血中の二酸化炭素濃度を上げれば、呼吸中枢の反応がおさまるので、大脳皮質の反応も落ち着く。
(※以前は紙袋で鼻や口を覆い自分の吐き出した息を吸わせ体内の二酸化炭素濃度を高める「ペーパーバック法」が推奨されていたが、酸素不足や二酸化炭素過多により心不全や呼吸困難を起こすケースが出たため、現在このやり方は推奨されていない。⇒参考:「“過呼吸”の新常識「連鎖する」「ペーパーバッグ法は使わない」ってホント?〜とにかく口をすぼめて「息を吐く」〜」)

二酸化炭素濃度が下がって血液がアルカリ性になると

過呼吸発作に伴い、唇や手足のしびれ、筋肉の収縮・けいれんを引き起こすことがある。これは、二酸化炭素が減って血液のpHがアルカリ性に傾いたことで、血液中のカルシウムイオン濃度が低下。すると末梢神経の興奮性が高まり、筋肉の持続的な硬直を引き起こすため、一度起こったしびれや痙攣が止まらなくなる。呼吸を整えて血中の二酸化炭素を増やせば発作はおさまるが、なかなか痙攣が止まらない場合は、ポカリなどで水・ナトリウム・電解質(イオン)を速やかに補ってあげることが有用。こむらがえりも原理は同じなので、血中のカルシウムイオン濃度が正常値に戻ればおさまる。⇒参考「アルカローシス - 12. ホルモンと代謝の病気 - MSDマニュアル家庭版」「健康ア・ラ・カルト 【2)脳と神経】 4)突っ張る痛み、突然体中に | 公益社団法人 鳥取県医師会

おまけ:全力疾走後に「咳き込み」が起こるメカニズム

運動後の過呼吸といえば、全力疾走後に咳込む場合がある。本来鼻で空気を吸い込んでいれば、気道に流れ込む空気は人肌程度に加温・加湿された状態となり、大気中の異物も鼻毛によってあらかた除去されるため、気道への異物侵入と粘膜の炎症を最小限に抑えることができるのだが、直接口から大量の冷えた空気を取り込むと、気道の内側を覆う粘膜が乾燥によって炎症を起こしやすくなり、粘膜から流れ出す粘液に塵やホコリなどの異物が絡め取られて小さな痰があちこちで発生。それを吐き出すために咳き込むんだそうです。⇒参考「アスリートにひそむ運動誘発ぜんそく、予防と治療は | 朝日新聞デジタル


尚、咳や痰が発生するメカニズムについては↓こちらで配布されてるPDF「お母さんのための解体新書LESSON7 咳はどうして出るの?(2)」がイラスト付きでとてもわかりやすいので、基礎知識として入れといて損はないかと思います。
http://www.shionogi.co.jp/amr/


せっかくなので検証

ステイホームで時間はたっぷりあったため、安静時の自分の体温と呼吸変動を調べてみた。記録に使うのは体温計と時計(温度計・湿度計付き)。体温が上がったな、下がったな、汗かいてきた、汗引いた、呼吸が荒くなってきた、呼気が長い(深い)、吸気が長い(深い)、どっちも落ち着いたなど、テレビ見ながら自覚できる変化があったときの時刻・体温(気温・湿度)・発汗有無・呼吸症状などをメモ。これに食事の時刻と食事内容をメモし、安静時に自分の体温・呼吸・汗がどのように変動・連動し、食事の影響がどの程度あるのか観察したところ、「吸気(吸い込む息)が呼気(吐き出す息)より長くなることはあまりない」ことがよくわかった。
呼気/吸気の対比は不思議なもので、運動時は同程度に長く深く、運動後は2:1ぐらいで呼気の方が深くなる(たまに息止まってる)。また食後30分もすると、心拍数があがり、呼吸が荒くなる。呼吸は呼気のみが深い場合と、吸気もおなじぐらい深い場合が変則的に繰り返される。そのうち体感温度も上がって発汗が始まる(体温は食後しばらく0.5〜0.7℃ぐらい上昇)。「インスリンは食後30分〜1時間にもっとも分泌される」と言うけれど、毎回それぐらいの時間差で代謝が上がり始めるので、「ほんとにそうなんだね」と感心する。お暇な方は是非お試しあれ。



というわけで春の自由研究はおしまい。
見直すとまた書き足したくなるから、ここでほんとにおしまいにします。


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