『ハッピーアワー』を観た&観に行く上でのご注意(@渋谷イメージフォーラム)

渋谷イメージフォーラム濱口竜介監督の5時間17分映画『ハッピーアワー』を観てきました(5時間17分とは言っても第一部〜三部に分割上映してるので休憩を挟みながらです。全回入替制&自由席の割に皆ほぼ同じ席に座っているので、会場に妙な一体感が。笑)。これね、すごい良かった。6時間にわたる長丁場だったけど、長回しが多い割に途中ダレることなく長尺であることが全然苦じゃなかった。スクリーンの向こうで暮らす人々の人生を“覗き見てる”というよりは、一緒にその場に居て彼女たちの人生に“立ち会ってる”気分で見入ってしまい、終わった瞬間「ああ、ここで終わるのか。もうちょっとだけ先が見たかったなあ」と思ったぐらい(なんなら6時間でも良かった)。


演技経験の全くない4人の女性がロカルノ映画祭で最優秀女優賞を獲ったことでも話題になった本作だけど、その触れ込みで観に行くと、冒頭延々と続く棒読み芝居に不安になる(汗)。しかし不思議なことに、出てくる人、出てくる人、みんな棒読み。「いくらなんでもそれはありえない」と思った瞬間、「あ、これは何かの演出なんだな」とピンとくるんだけど、演出意図についてはいまひとつよくくみ取れないまま、第一部修了。休憩の合間にロビーに貼られていた監督インタビュー読んでいたら、その答えがきっちり書いてあったので、これから観に行く人は忘れず読んで帰ってください。


でもこの連休中に行かれる人はご注意を。ほぼ満席です。しかも50分前にチケット買いに行って既に整理番号が50番台(地下スクリーンで108席)。ほとんどの客が三部まで見て帰るので、第一部のチケットが100番台なら第三部も100番台…。頸椎に持病を抱える人は「行ったら前の席しか空いてなくて首が死んだ。せっかくチケット買ったのに第三部まで見続けられなかった」てことにならないよう早めに来てチケット買ってから昼食とりに行ってください。


本作の第一部で、主人公たちが「重心に聞く」というテーマの身体コミュニケーションに関するワークショップを受けるんだけど、これがね、思いのほか面白かったのよ(ちなみにほぼアドリブだと思われるこのワークショップシーンを境に一本調子の棒読み台詞から自然な台詞回しに移行してゆきます)。一昨年公開された濱口監督の中編映画『不気味なものの肌に触れる』の初日舞台挨拶で、刑事役で出演していた河井青葉ちゃんが「監督から、この映画の続きを撮るまでに合気道を習っておいてほしいって言われた」て言ってたのね。当時は犯人制圧の際に合気道の技を使うからっていう意味なんだと思ってたけど、今回のワークショップシーンを見る限り、合気道の“技”ではなく「対峙した相手に気を合わせる」「触れた相手との身体的境界を無くし気を合わせる」という、合気のより原理的な部分を習って理解しておいてほしいという意味のような気がして、この先監督がこのあたりのことをどう突き詰めていくのか楽しみになりました。


映画『ハッピーアワー』公式サイト



『ハッピーアワー』を観に行った人は、この『不気味なものの肌に触れる』の予告を見ると、あのワークショップはここから始まってるんだなというのがよくわかると思う。


濱口監督の作品には“「深淵」が姿を現した”としか表現のしようがないカットが頻繁に出てくるんだけど、あれはなんなんだろう。


映画芸術 2015年 11 月号 [雑誌]

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これでやっと「映画芸術」の監督インタビューが読めるわ。


-追記-
本編とは特につながりがないんだけど、私の中では《身体》《境界》というキーワードで感覚的に“つながっている”ので↓こちらも貼っておく。

暗黒舞踏でお馴染み大駱駝艦ドキュメンタリー映画を観に行った感想です。