映画『野火(2回目)』を観た(@立川シネマシティ)

立川シネマシティ(iスタ E列)で『野火』2回目観てきた。

hスタよりiスタの方が断然音の鳴りがいいわ。画面も大きいし。jスタに移っちゃったけどもしまた戻ってきたら今度は前から2列目で見よう。『野火』に関しては小説と映画が相互に補完関係にあるなということを再確認。映画は、小説の前半にあったとある台詞を後半のアノ場面にもってきたせいで、永松の不憫さが増してるんだよね。永松を演じる森優作くんの、夢を語る少年のようにまっすぐで純朴なあの声、あれがいけないのかな。今回は「猿も捕れるようになったしな」でちょっと泣きそうになり、『マッドマックス 怒りのデスロード』のニュークスがふいに重なってきた。若い子の承認欲求を満たしてくれるのはいつだってああいう支配的な年上の男なのよ(それを『凶悪』のリリー・フランキーが演じてるからもう…)。田村が代わりになれれば良かったんだけど、田村は永松を必要とはしてないし田村じゃ彼の寂しさを紛らわしてはくれない。


しかし、自主映画とはいえ、今回ほんとに金かかってる。あれだけの死屍累々を作るのにいくら使ったんだろ。汚れを表現するメイクが黒いだけじゃなく少し黄色味がかってるのがいい。あれだと兵隊が皆、臭そうに見える。なんとかしてパロンポンにたどり着きそこから日本に帰る船に乗るんだという思いだけを抱えながら死に絶えていく兵隊たち。道に連なる赤黒い屍の数々を見てたら、戦没者の遺骨収集をしてる人たちの「なんとかして骨だけでも日本に帰してあげたい」という気持ちの奥底にあるもの、戦争が終わってることを知らずに30年近くフィリピンの森の中で暮らし続けた小野田少尉のことが、ようやく本当にわかった気がした。この映画を観てから、小野田さん帰還のニュースに触れたかったよ。


劇場で売ってた関連書籍には台本が採録されてます。小説とじっくり読み比べたい方は是非。宗教的文学的側面はばっさりカットしてるけど、台詞はほぼそのままで、かなり忠実に映像化しています。

野火(のび) (新潮文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

塚本晋也×野火

塚本晋也×野火


市川崑版『野火』もいつか観なければ。



アップリンクさん、あの牧歌的で「生」のエネルギーに満ちあふれたタイの死体洗い祭りが収録されてる『ジャンクフィルム [釣崎清隆残酷短編集] [DVD]』を久しぶりに再上映してくれませんか? いま、無性に観たいです。映画に登場する屍の具合が近かったせいなのか、おびただしい数のせいなのか、、、。私も綺麗に洗って日本に連れて帰ってあげたくなったので。
ちなみに「タイの死体洗い祭り」とは↓こんな感じです。

ジャンクフィルム [釣崎清隆残酷短編集] EPISODE 12 華僑報徳善堂 火化先友法會
タイの民間レスキュー報徳堂が運営する龍山墓苑は隊員が運んだ無縁仏が土葬される場所である。敷地は広大だが次々と運ばれる遺体でじき飽和状態になってしまうため、機会を見て、新たな遺体の場所の確保のために古い遺体を掘り出して洗い清め、火葬に付す必要がある。なお、この行事を実質的に運営するのは敬虔な仏教徒の市民ボランティアだ。

感想は↓こちらが詳しい(うちも書いてるけど1行ぐらいだし、ネットで探してもたぶん瓶詰めさんとうちぐらいしか引っかからない)。
死体が教えてくれる、生の営み 『ジャンクフィルム 釣崎清隆残酷短編集』(@瓶詰めの映画地獄)
『野火』に関しても↓次のような体験を語ってくれている。
映画を観ながら想い出した、ある元日本兵の戦争体験… 『野火』(@瓶詰めの映画地獄)
10代の時にテレビで見た『カウラ大脱走』(『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督がプロデューサーとして携わったオーストラリア発のTV映画)が鮮烈に記憶に残っているせいで、“カウラ”という響きにはついつい反応してしまう。だからこそ、戦争映画というのはイデオロギーに染まる前の若いうちにたくさん経験しておいた方がいいんだよ。具体的な話の内容は忘れても、感覚だけはいつまでも忘れないから。
(追記:瓶詰めさんが2016年10月のサイト移転(http://eigajigoku.kill.jp/)に伴い過去記事ばっさり削除されちゃったんで、現在リンク先の記事を読むことはできません。いい記事だったのに。勿体ない・・・)


オーストラリアといえば、『アポカリプト』のメル・ギブソン監督が沖縄決戦を映画化するという。キャメロンも頑張って


『野火』の映画化にあたり宗教的側面をバッサリ削ぎ落とした塚本晋也監督だけど、本作の撮影後、役者としてマーティン・スコセッシ監督の新作『沈黙』(原作:遠藤周作)に参加。しかも隠れキリシタン役で。ソレ聞くと、宗教部分も組み入れた『野火』も観てみたかったかなあと思ったり。



公開4週目に入り、そろそろ上映終了となる劇場も出始めました。逆に9月からようやく公開が始まるところもあります。
興味をもたれたかたは↓こちらより最寄りの劇場をお探しください。
映画『野火』劇場一覧


東京は7月25日より渋谷ユーロスペース(9/18まで)と立川シネマシティ(終了日未定)の2館で上映中です。ユーロスペースでは終戦記念日である本日8月15日に限り、25歳以下は500円で観ることができます。また、17:00の回上映後には田村役を演じた塚本晋也監督と永松役を演じた森優作くんを呼んでのトークショーも行われますので是非。若い人こそ観るべき映画です。ちなみにユーロスペースの下の階にあるユーロライブでは17:20より『フルメタル・ジャケット』が上映されます。年のいった人は『野火』トークショーの回は若い子に譲って、代わりに『フルメタル・ジャケット』観るっていうのもいいと思いますよ。



関連記事:
『野火』への道〜塚本晋也の頭の中 (全8回)- シネマトゥデイ



というわけでNHKさん、『野火』はああ見えてPG12です。来年の夏は日曜深夜0時からEテレで放送するんですよ。え? だからPG12だって。大丈夫大丈夫。直前の夜11時に総合で『狂気の戦場 ペリリュー 〜"忘れられた島"の記録〜』放送しとけばショックも和らぐよ。



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