映画『野火』を観た(@立川シネマシティ)

立川シネマシティ(jスタ E列)で塚本晋也監督の新作『野火』を観てきました(東京では立川と渋谷ユーロスペースの2館で上映中)。

なんというか、ほんとにね、ほんとに立川で塚本晋也を上映しても客入らないのよ。もう、スタッフの俠気だけで毎回何週間もかけてもらって大変感謝してるけれど、いつ行ってもどの作品に行っても客が10人いるかどうかの劇場で「いつもすまない」と心苦しくなりながら観に行くのが定番なのが立川でかける塚本作品なんだけれど、今回は違った。こんなにお客さんが入ってる中で塚本作品が見れるなんて初めて。嬉しい。予約の時点でさほど人が入ってなかったのは、客の大半がネット予約とは無縁の年輩者だったからなのね。さすがですよ。戦争ものとあれば、誰が監督してようが関係なく観に行ってくれる。有り難い客だ。・・・と、上映が始まるまでは思ってた。でもね、見終わった後、すげえグルグル考えたよ。お年寄りが見ても意味ないのよ。若い子に見せないと。後が続かないのよ。子供の時に「はだしのゲン」読んでトラウマくらった身としては、「絶対に戦争させたくないなら若いうちに戦争に対するトラウマを植え付けるべき!頭で考えさせるのはそれからでいい!」派なので、それに最適な映画をせっかく塚本晋也が親の遺産を食いつぶしてまで作ってくれたのに若い子に観て貰えないという現状が歯がゆい。せっかく新宿・渋谷で上映してるのに観に来てるのはおっさんばかりで観たら絶対救われる人がいるはずの10代20代の女性がまったく観に来てくれない『紀子の食卓』並に歯がゆい。もういっそのこと公開一巡したら、一回戦争映画であることは完全無視して、渡辺文樹商法に則り「退席者続出!」「これ観た中学生が夜中熱出した!」「家に帰ったらポルターガイストに襲われた!」とかいうキャッチーな煽りを入れつつホラー映画として公開し直してもいいんじゃないかと。


本作は痛いシーンがちゃんと痛そうに撮られていて、手榴弾で吹き飛ばされるシーンはもちろん、戦闘機からの機銃掃射が線上にいる兵士たちの肉体をかまいたちのようにそぎ落としてゆく様がとにかく痛い。あれは絶対逃げたい。当たりたくない。でも避けられる気がしない(汗)。また、白旗をあげて米軍に投降するシーンがとにかく秀逸で、相手が白旗あげて投降してきたらノーサイド。敵兵であろうが寛容に受け入れるのが米側の戦争のルール。だけど、「白旗あげたら終わり」なんてルールはわが町わが村を戦場にされ兵隊でもないのに殺された現地人からすればまったく関係のない話で、戦場の当時者は撃ち合ってる兵隊だけじゃないのに、あんたらどっちも白旗あげた瞬間そのこと完全に忘れてただろってことに対する憤りや「忘れるなよ!」ていう心の叫びを象徴的に描いたシーンとしては出色の出来だと思う。


ちなみに『進撃の巨人』とはしごで観てきたんだけど、突然平和の壁が崩れ堕ち戦場に引きずり込まれたものの志願してくる兵隊は口減らしや政府からの補助金目当ての素人ばかり。いざ戦闘になったらパニクって勝手な行動を起こし隊を窮地に追い込むわ、上官は兵隊を楯に一足先に撤退するわってことを描いてる『進撃の巨人』と『野火』の食い合わせは結構いいのでオススメしておきます。もちろん観る順は『進撃』→『野火』ですよ。尚、立川シネマシティでは、8月8日より『日本のいちばん長い日』、8月22日より『この国の空』も公開されるので併せてどうぞ。『野火』は4週は確実にやると思うので、『この国の空』と入れ替わりになるのかどうかが鍵ですね。あとは夏の大作ラッシュが落ち着いた頃に1週間限定『野火』アンコール極爆上映があるのかどうなのか。また金曜より、立川の『野火』上映時間は夜の回が復活します。原作読んだらまた観に行こう。

野火(のび) (新潮文庫)

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