BS日テレ「ぶらぶら美術・博物館 こども展」トーク、山田五郎が語るヘタウマの天才“アンリ・ルソー”

今回一行が訪れたのは、現在六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催されてる『こども展 名画にみるこどもと画家の絆』(4/19〜6/29まで)。そこで語られてた山田五郎のルソー解説が実に味わい深く、聞きながら絵を見るとじわじわくるので、いつか実物をこの目で鑑賞する時のために書き残しておきます。2010年放送の「#19 箱根 ポーラ美術館〜抱腹絶倒!?天然画家・ルソーの名画を満喫!〜」も是非再放送して!

ぶらぶら美術・博物館 #139 森アーツセンターギャラリー「こども展」〜ルノワール、モネ、ピカソ…かわいい名画が大集合!〜
出演:山田五郎おぎやはぎ高橋マリ子、千石伸行(美術評論家成城大学名誉教授)


山田「続いていっちゃいますかね、先生。今回の展覧会のポスターにもなってる・・・これです!」

〈人形を抱く子ども アンリ・ルソー 1904-05年頃〉


おぎ「きた!」やはぎ「出ました!」
山田皆さんの大好きなアンリ・ルソーです〜」
やはぎ「出た、この顔!」
全員「(笑)」
おぎ「これはオッサンを描いてるんですかね」
山田「ち・が・い・ま・す!」
やはぎ「これ、“こども展”ですよね?」
山田「こども展です。〈人形を抱く子ども〉です」
おぎ「オッサンでしょ」
やはぎ「なんでこども展なのにオッサンなんだろ。ヒゲが…」マリ子「しかも女の子ですか?」
山田「女の子です」
やはぎ「さすがだな〜」
おぎ「さすがだね、ほんとに」


山田「あのぉ、人形を抱いてる方の手を見てください…」

山田「…異常にね(笑)、異常に細い
おぎ「いやあ、すごいね」
やはぎ「なんでこんな手になっちゃったんだろ、身体に対して」
山田「そしてお気づきと思いますけども、首がありません
全員「(笑)」
やはぎ「確かこの人、(モデルの寸法を)ぜ〜んぶ測る人ですよね」
山田「そう。彼は、写実的な絵画を自分では描いてると思っていますから
マリ子「あれ?」 おぎ&やはぎ「(笑)」
山田「ぜ〜んぶこう測って描いて…」


山田「我々ほら、ルソーが何が苦手かを知っていますね」
おぎ「“足”ですね」
山田「足を描くのが非常に苦手で」
マリ子「そうなんですか?」
山田「いつも浮いたように見えちゃうわけ」
〈参考〉

山田「で、どうしたもんかっていうんで、(今回は)埋めちゃえ!ていう」

全員「(笑)」
マリ子「たしかに! 草の中に入ってる」


やはぎ「ほら俺、持ってる人形もさあ、ほっぺたから下がいかにも面白くてしょうがないんだよね」

おぎ「面白いよね。ひどいよね、あの赤!」
やはぎ「なんでさー、ほっぺの下、全部赤くしちゃうんだろうもう」
おぎ「ヘンな人形。坊主で」
山田「人形もかわいくない」


山田「マリ子さんはルソー初めて?」
マリ子「初めてです」
山田「元々この人はパリ市のセーヌ川を通ってくる荷物をチェックする税関の職員をやってたんですよ。30歳頃から絵を描き始めて、アンデパンダン展ていう無審査で誰でも出せる展覧会に出していて、64歳ぐらいになったときにピカソがルソーの絵を見つけて「これは凄い!」と。で、友達の詩人のアポリネールやなんかと一緒に「なんかルソーっていうものすっごいヤツがいる」と、「おもしろい!」っていうんで“ルソーを讃える夕べ”とか開いちゃって…」
マリ子「一躍有名に」
山田「飾り付けはピカソがやって、ルソーを讃える詩はアポリネールが書いて詠んで…」
やはぎ「ルソーは子どもいたんですか?」
山田「いたんですけど、ほとんど死んじゃってるんですよ」
やはぎ「これは誰なんですか?」
山田「これね、一説にはですね、皆さん覚えてますか? この絵(と言って持ってた絵を見せる)」

〈赤ん坊のお祝い! アンリ・ルソー 1903年


おぎ「ああ、覚えてます」
やはぎ「俺んちにありますよ、それ!
全員「(笑)」
おぎ「ありますよ。誕生日にもらったから」
山田ヴィンタートゥール美術館展に行ったときに見たこの〈赤ん坊のお祝い!〉。この子が大きくなった同じ子じゃないか説があるんですよ」

やはぎ「いや〜、どうだろう。似てるっちゃあ、似てるなあ」
山田「でも全部この顔だからね、アンリ・ルソーは」
おぎ「そうなのよ。だからわからないのよ」


千石先生「ルソーでひとつ頭に入れておきたいのは、子どもを描いたのはルソーが初めてじゃない。たくさんいるわけですよ。その前にもね。でも子どもみたいに描いたのは彼が初めてだね
マリ子「“子どもみたいに描いた”って(笑)」
おぎ&やはぎ「(マリ子の問い返しで“子どもみたいに”の意味が分かり、次々吹き出す)」
山田「あ、自分が、自分がね」
おぎ「自分が子どもなんだ」
千石先生「首がないとか足がとか、誰が見たって、素人が見たっておかしいと思うような描き方をあえてしてるわけですよ」
山田・やはぎ・マリ子「あえてなんですか?(笑)
山田「でも“あえて説”ってありますよね」
千石先生「いわゆるウケ狙いでね、あえて描いたのか、本人としてはこれが本当の姿のつもりで描いているのかね。そのあたりが…」
おぎ「だからね、一枚ちゃんとした絵さえあれば“あえて感”ていうのが出るんですけど…」
やはぎ「そうそう、納得できる」
山田「全部こうだから」
おぎ「…なんですよね」
千石先生「ヘタウマって言うけど、まさに天才的ヘタウマですよね」


ルソーの人物画はほんとじわじわくるのよね。フットボールしてるオッサンとか(ラグビーのことなのかなあ)。今回この絵を「こども展」のキービジュアルに据えた人はさすがだと思う。なんていうか、、、フットボールアワーののんちゃんを思い出す。


こども展はまだまだ開催中です。

こども展 名画にみるこどもと画家の絆4/19(土)〜6/29(日)まで
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
開館時間:10時〜21時(火曜日は17時まで 入館は閉館30分前まで) ※会期中無休


※音声ガイドのナビゲーターは竹内まりや(1台520円)。ジュニア版は「ケータイ捜査官7」のセブン役でおなじみ河本邦弘さん。
http://www.ntv.co.jp/kodomo/guide/index.html