『演劇1』『演劇2』を観た(@イメージフォーラム)

11/23(金)まで渋谷イメージフォーラムで上映中の想田和弘監督観察映画第3・4弾『演劇1&2』を観てました。劇作家・演出家である平田オリザと彼が主宰する劇団・青年団に密着したドキュメンタリー映画で、2本連続してみると6時間近い大作でしたが、情報量が多いので退屈する暇がないぐらい。今後たびたび思い返すだろうコトバや事象がたくさん詰まってて刺激的でした。


ちゃんとした感想は5年後ぐらいに書くかもしれないけど(何故いま書かない?>私の中で現在進行形のものといろいろつながり過ぎてまとまる気がしないから)、さわりだけ書くととにかく平田オリザの書いた本がいろいろ読みたい。人の人格なんてペルソナの集合体、すなわちどこまでが皮(ペルソナ)でどこからが本体(本来の人格)なのかわからないタマネギのようなものなのに、「本当の自分探し」と称してタマネギを剥き続けるようなマネはやめなさい。皮だと思って剥いてしまったそれこそがキミの本体だよっていう話は面白かった。青年団ってよくよく考えたらまだ一度も芝居を観たことなくて、劇団名から昔ながらのもっとお堅いかっちりした芝居をやる劇団なのかと勝手に想像して苦手意識もってたので、それとは真逆の、こんなラフな口調の会話でくみ上げられた芝居なのかというとことにまず驚いた。映画の製作日誌『演劇vs映画』が劇場で売ってて即購入。ティーチインがあったので監督のサインももらった(笑)。映画の中ではほとんど排除されてた出演者へのインタビューが盛りだくさんなので、併せて読むとより理解が深まると思う(志賀廣太郎、古館寛治といった青年団俳優やスタッフとの座談会、平田オリザチェルフィッチュ主宰・岡田利規との監督対談あり)。

演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか

演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか


内容については、『演劇1』が“演出”に焦点を当てた内容で、『演劇2』は青年団の経営や行政との関わり、助成金についてのあれこれに生徒や教師相手のワークショップといった社会活動、ロボット劇やフランスでの演劇制作がメインとなってるので、時間的に余裕が無くてどちらか1本しか見れない人は参考にしてください。『演劇1』では平田さんの調整によって台詞の印象がどのように変わるのかって事例をたくさん見せてもらえるんだけど、特に印象に残ったのが、『冒険王』という芝居の稽古中、古館寛治さんの芝居を平田さんが手直しするシーン。指示を受けた古館さんは最初意図が掴めず「それになんの意味が?」て疑問を抱くのね。でも言われたとおりの行動をした瞬間、明らかに「そういうことか!」って何かを理解したかのようにコンマ何秒動きが止まり、その後情緒溢れる芝居に切り替えてくるのを観たときゾゾッときた。ああいう役者の芝居が変わる瞬間を目撃するのってほんと楽しい。


私自身、もともと人間もロボットも構造的には大差ないと考えているので、『演劇1』で見せた平田さんの演出方法と『演劇2』のロボット劇については今後いろいろ思い返すことが多くなると思う。特に台詞や動きを細かくプログラミングされたロボットと共演した俳優さんのコメントが興味深くて、生身の人間による芝居だけじゃなく、“受けの芝居”についても考えさせられた。ああ、誰か黒沢清の演出に焦点を当てたメイキングドキュメンタリー撮ってくれないかなあ。


尚、当日ティーチインで語った内容はほぼ書籍に載ってたので、それ以外についてメモ。

Q:2部構成にした理由は?
A:最初は1本にまとめるつもりだったが、最初にまとめた段階で4時間オーバーとなり、別の作品の書籍を書いてた経験から長い作品でも章立てにすると読みやすいということがわかってたので、2部か3部構成にわけることにした。2部に落ち着いたのは、3部にわけたとき3部目のラストシーンをどこに据えたらよいのかがうまく思い浮かばなかったから。


Q:ニューヨークで生活していて、外から観た日本はどんな風に映るのか
A:ほどなくしてすぐ消える感覚ではあるのだけど、空港で日本に降り立つといつも感じるのが、「サムライの国」だなということ。アメリカだと歩くときに頭がぴょこぴょこ上下するんだけど、日本人はサムライみたいにほとんど上下することなくすーーーっと平行移動してゆく。そういった日本に来て目についたものを作品内にいくつか盛り込んでいて、映画の中で窓を拭いてる清掃員を長々と映してる場面があるが、あれもそう。


Q:撮影中、平田オリザの奥さんも傍にいたと思うが、カメラの回ってないところで見せる奥さんへの姿は普段と違うものだったか。また、撮影に入る前とあとで平田オリザの印象が変わったか。
A:奥さん自身がもともと青年団の劇団員だったので、完全にプライベートな状態というのは無理。撮影前に青年団の舞台も観たし書籍も何冊も読んでいたので、印象が変わることはなかった。ただ、常に穏やかで丁寧な口調で話す平田さんが、劇団員が集まった場で何かを言うような場面では男っぽいガキ大将的な口調になることがあった。


そういえば、『演劇1』の最後に「佐藤真監督に捧ぐ」というコメントが入っていて、亡くなってからもうだいぶ経つのに何故いま?と思ったらその理由は書籍に書かれていました。↓こちらのインタビューでも語られているので気になる方は是非ご一読を。
【Interview】『演劇1』『演劇2』想田和弘監督 12,000字インタビュー text 萩野亮(@neoneo web)