真っ暗なスクリーンに浮かび上がった白い影・・・

1ヶ月ほど前にオーディトリウム渋谷で濱口竜介監督の特集上映をやっていたんですよ。
濱口竜介 レトロスペクティヴ


監督の『DEPTH』を観に行ったときに、風船を持った少年がエレベータに乗り込んでくるシーンが不気味でよかったので、恐怖映画でも撮ってたらちょっと見てみたいなあと思ったら、特集上映でやってた過去作の中に『Friend of the Night』ていう44分の中編作品があって、仕事で怖い話を書かなければならない主人公が、ネタに煮詰まってる最中、女友達から小学生の時に体験した怖い話を聞かせてもらうという内容だったので観に行ったわけです。

『Friend of the Night』2005年 / 44分
監督・脚本・編集:濱口竜介 / 撮影:濱口竜介、松本浩志
出演:鈴木里美、岡本英之、大平恵、梶尾翔平、櫻木麻衣羅 ほか


怖い話をする女友達と、それを聞く主人公とその彼女、たまたま遊びにきてた幼き姪っ子の表情を、時折場所を変えながら、回想シーンや語りの再現シーンを挟むことなくただ見せてゆくというすごくシンプルな作りの映画だったんだけど、物語の後半、女友達の話す怖い話が佳境にさしかかってきたところで、突然部屋が停電(※劇場じゃなくて映画の中の話ね)。何も映ってない真っ暗なスクリーンに怯えた少女の悲鳴だけが響くというシーンが結構長い時間続くんです。


ところがね、、、その何も映ってないはずの真っ暗なスクリーンに、見たんです。私は。白い人影がぼわあっと浮かび上がるのを。 ・・・いや、あのとき劇場にいた客の何人かもおそらく見てると思う、あの人影を。しばらくして部屋の灯りがつくと同時にその人影は消え、少女の悲鳴も止まるんだけど、【白い人影を映す】という演出があったわけでもないのに私には見えてしまったあの人影。あれはいったいなんだったのか。しばし考えてひとつの解に行き当たる・・・。

ついに、ついに幽霊が見えるようになったのか!(歓喜


なんてことはあるはずもなく、まあ、人影が映った瞬間すぐわかりましたよ。それが直前までスクリーンに長々と映し出されていた人物の《残像》だってことぐらいは。あまりにも長いことほとんど動かないその姿を凝視してたんでシルエットが目に焼き付いちゃったんだね。で、スクリーンが真っ暗になった後も輪郭だけ消えずに残っていたと。でもね、すごいタイミングよかったんだよ〜。電気がフッと消えた瞬間、怖い話を語る女友達の座っていたまさにその場所に白い人影がぼわっと浮かび上がり、真っ暗闇の中、恐怖におののいた少女の悲鳴だけが延々と響いて超面白かった。


というわけで、瞬き少なくて目に残像が残りやすいって体質の方は、いつかまた上映されたときに、白い幽霊(という名の“残像”)を観に行ってください。


作品についての監督インタビュー:


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