青春Hシリーズ第1弾『making of LOVE』を観た(@ポレポレ東中野)

「“青春”と“H(エッチ)”が盛り込まれていれば何を撮ってもOK」という〈青春H〉シリーズの第1弾として、いまおかしんじ監督『ゴーストキス』と共に2週間限定交互上映されてる古澤健監督の新作『making of LOVE』を観てきました。試写はもちろん公開後の評判も高く、かなり小規模宣伝だったにもかかわらずこちらの想定してない範囲まで反響が広がってるとの前情報が入り、「いったい何が起こってるのか」とおそるおそる観に行ったわけですが、いやこれ全然心配することなかった。オカルトミステリーとコメディが絶妙に融合した青春恋愛ファンタジーの快作(青春Hという縛りがなければ“怪”作になってたかも)。ラストの力業も含め非常に古澤監督らしい映画にもかかわらず、人を選ばずいろんな人にオススメできるしオススメしたくなる作品に仕上がってました。


上映は残すところ水曜と金曜の2回しかないので見に行ける方は是非。非常に混んでるので時間ギリギリになる方はお気をつけて(土曜日は立ち見が出たそうです)。感想は既にいろいろ出てるのでまずはそちらをどうぞ。


◆感想リンク集◆
http://blog.yomiuri.co.jp/popstyle/2010/08/post-fbcc.html
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20100901/E1283266409498.html?_p=1
http://eigajigoku.at.webry.info/201009/article_2.html
http://sukifilm.blog53.fc2.com/blog-entry-698.html
http://twitter.com/#search?q=%E5%8F%A4%E6%BE%A4%E5%81%A5
http://d.hatena.ne.jp/throwS/20100902/1283399017 ←はてな関係の感想リストあり

『青春Hシリーズ making of LOVE2010年/日本/84分
監督・原案・脚本・編集・出演:古澤健 出演:藤代さや/川上洋一郎/佐伯奈々
【STORY】監督のふるさわは、青年・翔太ら数名のスタッフと共に、「愛」をテーマにした自主映画の制作を開始した。色気と華を求めるふるさわ達は、以前撮影中にすれ違った美女・ゆかりに接近し、映画に起用しようとする。ビデオカメラを回し、様々な男達と関わりを記録しているというゆかり。ふるさわは彼女が持って来た大量のVHSを観る為、翔太の部屋に上がりこむ。暇があればVHSを観るふるさわと翔太。ふるさわの知人を発見したふるさわ達は、彼を問い詰めるが、ゆかりに関する記憶を全て無くしていた…。

ポレポレ東中野 | 『青春Hシリーズ making of LOVE』公式サイト | 青春Hシリーズ公式サイト

このあらすじ・・・。いろいろなものが隠匿されすぎでしょ(笑)。サムネイルが既にアレなので行き着く先はだいたい想像通りでしたが、青春エロチックコメディだと信じて疑わなかったので、ミステリー要素であんなにもぐいぐい引っ張ってもらえるとは想像だにしておらず非常に楽しかった。


取り急ぎ告知。東京での公開は残すところあと2日。9/8(水)、9/10(金)の21:10からポレポレ東中野にてレイトショー。上映後(22:40頃)に監督とゲストによるトークショーあり。ゲストは、9/8(水)が松江哲明監督、9/10(金)が鎮西尚一監督です。後半戦ということもあり手厳しい評もズバズバ言ってくれる相手を呼んだということで、特に明日の松江監督の回は古澤監督曰く「公開ダメ出しになるんじゃないか」とのこと(一方の松江監督は自ブログで「古澤監督と楽しい映画話を目指す」と言ってますが果たして…)。尚、月曜のゲストだった佐々木敦さん情報によれば、松江監督は当日夜9時までドミューンで生放送。終了後『making of LOVE』のトークショーに駆けつけるらしいです(雨になりそうだけど大丈夫かな)。詳しくは↓こちら。

http://dommune.com/
9/8(水) 19:00 - 21:00
「実写版"セルフ・ドキュメンタリー"映画監督・松江哲明が出来るまで」
出演:松江哲明 司会:佐々木敦
※番組内で山岳セルフドキュメンタリー「それでも妻は登った」(吉野和彦監督)を放送するとのこと

また交互上映となってる9/9(木)『ゴーストキス』上映後にも古澤健(『making of LOVE』監督)×いまおかしんじ(『ゴーストキス』監督)トークショーあり。相互割引が実施されてるので既に『making of LOVE』を観た方はチケット半券をお忘れ無く。


上映期間中、アクトビラで限定配信されてるそうです。対応機器のある方はこちらでもどうぞ。
青春H making of LOVE (@アクトビラ)


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というわけで、ここからは個人的な感想を。多数の人に指摘されてる部分はバッサリとカットし(感想リンク先読んでください)、間違った予断を与えるので未見の人にはあまり読んでほしくない感想を書いていきたいと思います。
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実はこの映画には少しおかしなところがあるんですよ。まあ「おかしい」と言っても、作品内で語られてる「記憶」と「記録」の話とは合致するし、意図的にやってるようにも見えるので、そのうちどこかでネタばらしがくるんだろうと思って待ってたけど、結局最後までこなかった…。感想を漁ってみると気になってる人は他にもいる様子。でも自分と同じような意味合いで反応してる人は特に見つからなかったので、私個人の興味なりなんなりが影響し気になってるんだと思う。で、そんな時にふと思い出したのが高橋洋監督の↓このツイート。

@Full2yn 『making of LOVE』の感想を言おうとするとどう書いてもネタバレになりそうで困る。明らかに自分がやりたい方向性と重なる部分があって、そこに一番反応したのだが、それが何か言おうとするとネタバレというか誤った先入観が。
1:33 AM Aug 15th Echofonから Full2yn宛


観客を失うとかではなく、素で見て貰いたいということです。細部の反射から流れが生まれてくる映画でしょう。 RT @Full2yn: @sodomunoichi ネタバレ、僕は気にしません。それで観客を失うとも思わないので、批判含めて聞きたいです。
12:33 PM Aug 15th Echofonから

高橋さんはいったいこの映画のどこに反応したんだろう。高橋監督の『恐怖』や『狂気の海』(感想はこちら)は少なくない影響を“私個人の興味”に与えてるので、とても気になる。解禁される日はくるのだろうか。



ちなみに私が気になったのは次の箇所。ラストについてのネタバレもあるので、未見の方は絶対に読まないでください。
↓↓↓↓↓↓ここから先は作品を観てからお読みください↓↓↓↓↓↓


撮影風景に密着するタイプのフェイクドキュメンタリーの場合、使われてる映像は基本的に劇中の誰かが撮った映像ということになると思うんですね。監督自らがカメラを回してることもあれば、同行する撮影スタッフやメイキングスタッフが撮るという場合もあるでしょう。手持ちカメラでとられた映像ならばたとえ姿は見えなくてもそこには必ず《撮影者》が存在し、撮っているのが誰かというのも会話等から自ずとわかってくるというもの。ところが本作に関してはいまこの映像を撮ってるのが誰なのかというのがよくわからない。最初は監督や撮影スタッフが交互に撮り合ってるのか思って見てたんだけど、監督はいつもカメラ前に姿を晒してるし、カメラを回してる姿を撮られてることも多い。撮影スタッフは何人かいるんだけど、たまにしか出てこず、監督のプライベートにまで密着し傍でカメラを回してるようなスタッフがこの中にいるようには見えない。メイキングスタッフが常駐しているという設定でもない。手持ちカメラの映像がずっと続くことからも、誰かが撮ってることは間違いないのだけど、監督もスタッフもカメラマンに話しかけるときは常に一方的で、《撮影者》がそれに受け答えすることはない。しかも次第に、第三者が入る隙などないように思える親密なプライベート空間にすら入り込んでくるので、「なんだかんだいってフィクションだから、本作に関しては全てが厳密にドキュメンタリーとして撮られてるわけではなく、第三者的な視点を部分的に映像として混ぜ込む演出方法をとってるんだな」と自分なりに納得しかけるんだけど、そのたびに被写体が《撮影者》にちょっかい出して来て「これは第三者的視点などではない! すべての出来事を撮影し記録してる誰かが確かにここに存在してるんだ!」ということを主張してくるから困る。もともとこの映画には「記憶なんていい加減ですぐ忘れちゃう。だから一部始終をカメラで撮影し、記憶の代わりに記録として残しておくんだ」という考えのヒロインが出てくるため、あらゆる場面を記録し続けるこの姿無き《撮影者》もヒロインと同じく「記憶」と「記録」を象徴する存在としてこの映画に存在し、いずれヒロインと共にその正体が明かされるんじゃないかと思ってたわけですよ。でも終盤になると撮影者としての存在感も徐々に薄れ始め、最後に活躍したのは別のカメラでした。



トークショーで監督が語ってたんだけど、本来なら最後にVTR型の惑星を宇宙に浮かべ「あれがアカシックレコードだ」と言わせる予定だったと。予算の都合でCGが作れず断念したそうだけど、「記憶」と「記録」の話が終盤に行くにつれフェードアウトしてくので、このシーンは頑張って入れて欲しかった。