指針作成により、バラエティ番組への締め付けは更に強化されるのか?

先日、驚きのニュースが配信された(2009.10.30付)。

バラエティー番組、民放連が指針づくりを BPO提言へ(@asahi.com)


NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会は30日、バラエティー番組制作にあたって制作者が留意すべき実務的な指針をつくるよう日本民間放送連盟に提言することを決めた。規範や倫理からの逸脱が特徴の一つであるバラエティー番組に倫理上のルールを求めるのは異例だ。


 委員会の中にも「表現の自由」の観点から慎重論が根強くあった。だが、性的表現やいじめ、差別と受け取れる表現などに視聴者の抗議が相次いでいることを重視し、指針を求めることに踏み切った


 民放の多くは、民放連の倫理規定「放送基準」に従って番組をつくっている。だが、この「放送基準」には、報道番組には1章をあてて規定を設けているものの、バラエティー番組に関してはまとまった規定がなかった。


 委員会は、放送基準とは別に、バラエティー番組に特化した新たな指針をつくるよう来月半ばまでに求める。川端和治委員長は「バラエティー番組が表現の自由の幅を広げてきたことは生かしつつ、厳しい指摘に対応することが必要」と話した。

BPO、バラエティー番組の制作指針作成求める(@YOMIURI ONLINE)


BPO放送倫理検証委員会は同日、下品な表現などバラエティー番組の問題点を審議する臨時委員会を開き、日本民間放送連盟(民放連)に対し、番組制作上の実務指針を作るよう求める意見書を、来月17日に出すことを決めた。


 意見書は、これまで同委員会に視聴者から寄せられた批判をもとに、「下ネタがある」や「内輪ネタで盛り上がる」など20件前後の問題点を指摘する


 川端和治委員長は委員会後、「視聴者が指摘した問題をクリアすると共に、制作者を萎縮させることなく、より自由な表現ができるような指針作りが必要」と述べた。

記事を読んでると「来年以降バラエティ番組の表現規制が加速化するんじゃないの?」「ついにテレ東お色気番組死亡宣言?!といった不安にかられたので、いったいどういう流れでこんな事態になったのか、ここに至るまでの経緯を軽く追ってみた。


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BPO放送倫理・番組向上機構)』の放送倫理検証委員会は、昨年9月の「第17回放送倫理検証委員会」において、「個別に審議するほどではないが放送全体の倫理水準という意味では見過ごせないバラエティー番組が散見される」とし、バラエティー番組の演出方法や質の問題について事例を積み重ねた上でまとめて検討することを決定した。


冒頭の記事の中に「性的表現やいじめ、差別と受け取れる表現などに視聴者の抗議が相次いでいる」とあるが、議事録を調べてみると、事の発端はどうやら↓この番組にあるらしい。
TBS 「リンカーン」、浜田雅功のセクハラが問題に(@探偵ファイル)


それに関する審議の概要が↓こちら。

第17回 放送倫理検証委員会 2008.9.12  
(議題:「お笑いタレントによるセクハラシーンについて」)


これ以降も、クイズ・情報・アイドルなど様々な種類のバラエティ番組に関するクレームがあいつぎ、毎月なんらかの番組が議題にあげられている。

第19回 放送倫理検証委員会 2008.11.14 
(議題:「事実誤認があり訂正放送したニュースバラエティ番組」ほか)
第20回 放送倫理検証委員会 2008.12.12 
(議題:「歴史上の人物の扱いに問題があった深夜のバラエティー番組」「事実誤認があり訂正放送したニュースバラエティー番組」ほか)
第21回 放送倫理検証委員会 2009.1.9 
(議題:「建設中のマンションをPR的に扱ったバラエティー番組」「まとめて議論する予定のバラエティー番組についての中間報告」ほか)
第22回 放送倫理検証委員会 2009.2.13 
(議題:「ブログを捏造して放送したクイズバラエティー番組」「制作スタッフにやらせのインタビューをしたバラエティー番組」ほか)

09年3月、クレームのあった15番組について担当委員が内容を分類。

第23回 放送倫理検証委員会 2009.3.13
(議題:「バラエティー番組の問題点について」)


4月、バラエティ番組全体に対する具体的な審議が始まる。議題対象となった15番組だが、具体的な番組名やクレーム内容は明かされていない。

委員の意見を読むと、普段の報道の印象とは異なり冷静な意見で占められている。ただ、具体例があげられていないので、視聴者からどういった内容のクレームがきて何故それを是正しなければならないかという部分がいまひとつよく見えない。バラエティといってもジャンルは多岐にわたり、放送時間が異なれば視聴者層も異なるわけで、そのあたりのクレームをどう判断してゆくのか。


7月、集中審議に入る。

第28回 放送倫理検証委員会 2009.7.17
(議題:「バラエティー番組の問題点についての集中審議」)


これを報じたニュース(2009.7.17付)。

BPO、バラエティ番組の「放送倫理」を俎上に(@MSN産経ニュース)


放送倫理・番組向上機構BPO)の放送倫理検証委員会は17日、バラエティ番組の放送倫理問題について審議入りすることを決めた。性的表現や事実の歪曲などをめぐり、番組を特定せず、NHKと民放全局を対象に9月に意見を公表する予定。川端和治委員長は「制作体制が不十分で、内容を制作会社やタレントのトークにすべて委ね、放送時にきちんとチェックされていない傾向がある」と指摘した。

「性的表現」がセクハラのことなのかエロ番組のことなのかトーク内での下ネタのことなのかいまひとつよくわからない。「事実の歪曲」というのは“やらせ・自作自演”のことなのかなあ。


引き続き、9月11日の議事概要(※8月はお休み)。

第29回 放送倫理検証委員会 2009.9.11
(議題:「バラエティー番組の問題点について」)

こちらも冷静な意見が続く。ニュース報道だけ見てBPOからケンカ売られたみたいな気分になったが(苦笑)、個々の委員の意見を読むと、基本的にバラエティの良さ、バラエティらしさについてよくわかってる人たちがバラエティを守るためにはどうしたらいいのかといった立場で審議してるといった印象が強い。


冒頭で紹介した10月30日の議事概要については、日が浅いためまだ掲載されてない。しばらく注意して動向を見守ってゆきたい。



余談だが、先月10/10(土)に放送された『フジテレビ開局50周年番組 記録よりも記憶に残るフジテレビの笑う50年めちゃ2オボえてるッ!』で、昨今の規制強化に対する不満を口々に述べる出演者の姿をあえて長々と放送してみせたのは(というよりこの番組を作ったこと自体)、裏にこういった動きがあったからなのかなあと邪推(関連:フジ開局特番で再認識、規制に弱い今のバラエティー


まあ、規制強化に関してはネットの普及も一役買ってるだけに難しいところです。



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ちなみに、BPOには上にあげた「放送倫理検証委員会」の他に「青少年委員会」というのがあって、バラエティ番組に対しいつも辛辣な意見を言ってくるのはこちらの委員会。

第93回 放送と青少年に関する委員会 2008.9.22
(議題:フジテレビ『カスペ〜地上最大のTV動物園』の「赤ちゃんVSコブラ」のコーナー、フジテレビ『FNS27時間テレビ』の「車のペンキ塗り」のコーナー、TBS 『リンカーン 真夏の芸人大運動会』の「手作り弁当タイム」での司会者のセクハラ行為、TBS 『リンカーン』の"ゴムパッチン"のコーナー)
第94回 放送と青少年に関する委員会 2008.10.28
(議題:「回答のお願い」に対する「回答」について( TBS 『リンカーン』 の司会者による女性芸人へのセクハラおよびゴムパッチンのコーナー、フジテレビ『カスペ〜地上最大のTV動物園』の「赤ちゃんVSコブラ」のコーナー、フジテレビ『FNS27時間テレビ』の「車のペンキ塗り」のコーナー)、日本テレビダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の罰ゲームを考える企画)
第95回 放送と青少年に関する委員会 2008.11.25
(議題:「回答のお願い」に対する「回答」について(日本テレビガキの使いやあらへんで!!』の罰ゲーム))
第97回 放送と青少年に関する委員会 2009.1.27
(議題:日本テレビとバラエティー番組について意見交換、日本テレビAKBINGO!』ほか)
第98回 放送と青少年に関する委員会 2009.2.24
(議題:TBS、フジテレビとバラエティー番組について意見交換、フジテレビ 『めちゃ2イケてるッ!』ほか)
第100回 放送と青少年に関する委員会  2009.4.28
(議題: フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!「笑って笑って景気回復DGやねんスペシャル!!」』、日本テレビ所さんの目がテン!』ほか)

第101回 放送と青少年に関する委員会 2009.5.26
(議題:フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』4月11日放送分の局からの「回答」および5月16日放送分について、ほか)
第102回 放送と青少年に関する委員会 2009.6.23
(議題:フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』、サンテレビの深夜番組 『今夜もハッスル』ほか)
第103回 放送と青少年に関する委員会 2009.7.28
(議題:フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』制作担当者との意見交換、サンテレビ『今夜もハッスル』の回答について、親が見せたくない番組トップ10についての中学生モニター報告ほか)
関連:サンテレビお色気番組 男子中学生68%が「打ち切り困る」
第104回 放送と青少年に関する委員会
(議題:TBS『アッコにおまかせ!』、フジテレビ『はねるのトびら』、テレビ朝日仮面ライダーディケイド』ほか)

報道されてた「下ネタがある」「内輪ネタで盛り上がる」「性的表現やいじめ、差別と受け取れる表現」の概要がなんとなくわかってきた。毎回実施してる中学生モニター報告が面白いね。同じBPOでも「青少年委員会」ではなく「放送倫理検証委員会」が出す意見書なら通常の範囲内で落ち着きそうな気がする。


しかし『めちゃイケ』(苦笑)。頭からビニール被せた件でこんなに何ヶ月も討議されてたんだなあ(やっぱり普段の行いがアレだからか)。というわけで何年先になるかはわかりませんけど、『めちゃイケ』終了の際には、“思い出に残る歴代クレームランキング”を発表し、問題シーンをカウントダウン形式で一挙オンエア。どんなクレームがどれだけあって、結果そのコーナーおよびスタッフはその後どうなったのかをまとめて紹介し、みんなで「ひでえwこれはひでえw」と反省しあってほしいです。・・・え? も、もちろん後学のためですよ。決まってるじゃないですか。え?『アドレな!ガレッジ』『草野キッド』終了時も「最終回だから総集編ではクレームランキング上位にくるような酷い映像ばかり集めてやり逃げしてほしい」とか言ってた気がする? えーとそれはそのあのー、、、気のせいです。気のせい。あ、誰か来たみたい。んじゃね!