「お化け屋敷」における恐怖演出のポイントとは

少し前に『BS熱中夜話 遊園地ナイト(後編)』という番組内で“お化け屋敷”が取り上げられてた。ゲストには、90年代より「楳図かずおのパノラマ怪奇館」を始め数多くのお化け屋敷を手がけてきたお化け屋敷プロデューサー・五味弘文氏が呼ばれ、実際に自身で行った恐怖演出を例に客を怖がらせるためのポイントをいくつか明かしてくれていたので書き留めておきたいと思う。

ポイント1:ストーリーへの強制参加

◇例1「赤ん坊」
入り口で客に赤ん坊の人形を手渡しゴールまで持ち歩かせる。これにより客を強制的にストーリーに参加させることができる。
◇例2「黒髪とクシ」
手渡されたクシでお化け屋敷の中に佇む長い黒髪の女性の髪を丁寧にすいてあげないと先へとつながる扉が開かないという演出。強制参加させることでお化け屋敷と客の関係性を強めてゆく。

ポイント2:客の想像力をかき立てる

◇例1「鎖」
カップルの手首を鎖でつなぎ、パーテーションで仕切られお互いの姿が見えない(ただし握り会った手が通る程度の隙間は開いている)通路を歩かせる。声しか聞こえないので、パートナーの側で何かが起こっても想像で補うしかなく、膨らんだ想像力のせいでより恐怖感が増したり、パートナーに気を取られてるうちに自分がオバケに不意打ちで驚かされたりする。鎖で繋いでるので、どちらかが先に逃げるといったこともできない。ゴールした後にお互いの状況を伝え合うなど、お化け屋敷を出た後も長い時間盛り上がることができる。
◇例2「出口と入口を並べる」
全てが作り物だと思ってる客を怖がらせるためには如何に客の持ってる想像力を膨らませられるかが重要。入口で並んでる時点から既にお化け屋敷に半分入ってるようなものなので、その段階から不安感を煽るべく、出口から出てきた客のリアルな反応を見せることでこれから入ろうとする客の想像力をかき立てる。


また、お化け屋敷を造る上で気をつけていることとして、「いかにして客を怖がらせるか」ということ以上に「いかに客を楽しませるか」ということが大事だと語っていた。「なぜ外からの強い刺激を求めるかっていうと、【辛さ】の場合は【美味しさ】、【恐怖】の場合は【楽しさ】を求めているから。恐怖を通り越した時にうわーっと楽しさがくるってことが大事で、辛さのみを追求して美味しさを置き去りにするとどんどん味が不味くなってしまうのと同じで、怖さばかりを追求して楽しませることを疎かにすると客は離れてゆく。すごい怖いものを求めている客にはすごい楽しいものを同時に与えてあげるとその客は満足する」というのが五味さんの理論。だからお化け屋敷づくりにおいては「怖さ」と同時に「楽しさ」というものを常に頭の中においておけば間違えることはないとのこと。