「事件報道ガイドライン」と『足利事件』報道についての社内検証状況まとめ

逮捕当時の報道について自ら検証を行ってる新聞社が出始めているようなので、若干ではありますがまとめてみました。対象としたのは大手4社(読売・朝日・毎日・産経)と地方(東京新聞)の併せて5社です。

1)検証結果を公表した新聞社

当時の報道内容について、最も早く検証記事を掲載したのは「毎日新聞(6月11日付朝刊)」でした。

足利事件:毎日新聞記事検証 事件報道、重い課題 「犯人」前提の表現も

毎日では昨年12月に「裁判員制度と事件・事故報道に関するガイドライン」を作成。検証作業はこれに照らして行われたようです。


毎日新聞から12日後れで発表したのが「産経新聞(web 2009.6.23 23:06)」。

【足利事件】一部先走った報道 本紙新ガイドラインで検証 1/2ページ
【足利事件】一部先走った報道 本紙新ガイドラインで検証 2/2ページ

こちらの検証作業も今年初めに社内で作成した「事件・裁判報道ガイドライン」に照らして行われたようです。「女児との関係性を求めるあまり、先走ったとみられる報道もあった。」というところまで書いてるのはえらいですね。



読売・朝日・東京新聞についても「足利事件 検証」「足利 報道 検証」というキーワードでサイト内検索をかけてみましたが、それらしき記事を見つけることはできませんでした(ただし、私の検索の仕方がまずくて見つけられなかっただけかもしれません)。



※読売新聞、朝日新聞については、以下のブログが独自に検証を行っておりますので参考までに。
報道の自己批判を忘れた足利事件の社説 
足利事件 一部マスコミの菅家氏への侮辱報道を暴く!(朝日・読売報道より)


追記(09/6/26付)
ようやく読売新聞に社内検証を求める社説が出た・・・と思ったら、捜査、裁判の徹底検証を求める社説でした。
足利事件 捜査、裁判を徹底検証せよ(6月25日付・読売社説)
「なぜ、捜査当局が白旗を揚げる事態となったのか。裁判所はチェックできなかったのか。徹底した検証が必要である。」
「恣意(しい)的な運用を行えば、警察、検察の信用は地に落ちる。そのことを忘れてはならない。」
私もそろそろ読売さんの徹底検証記事が読みたいのですけど・・・(もう無理かな。あまり興味なさそうだし)。余談ですが、個人的に読売新聞社児童ポルノ問題についてすごく熱心だという印象があって、マイケル・ジャクソンが亡くなった時の報道も第一報の見出しは「性的虐待疑惑、大豪邸…派手な暮らしぶりも話題に」でしたし、このあたりは徹底していてスゴイと思います。


追記(09/6/27付)
「読売新聞(web 2009年6月27日07時29分)」の検証記事が出ました。

足利事件、読売新聞報道を検証…DNA一致発表疑わず

逮捕直前に他紙に先駆けてスクープ報道した「少女を扱ったビデオや雑誌を愛好している」(のちの家宅捜査で発見できなかった)という情報がどういった経路で入手された情報なのかも掲載されてます。ただし、“ロリコン趣味”といった見出しで糾弾記事を書いておきながら「予断や偏見を読者に与えた可能性はある」という書き方は逃げすぎだと思います。ちなみに、産経・毎日同様、読売新聞でも昨年3月に「事件・事故 取材報道指針」というガイドラインを作成し、運用を始めたようです。


追記(09/7/9付)
東京新聞(2009年6月29日朝刊)」の検証記事が出ました。

再審開始 足利事件18年目の真実<5> 当初から『犯人視』報道 本紙の検証

東京新聞ガイドラインでは、例え容疑者が犯行を認めていても「不当におとしめることは許されない。近所の人の憶測を裏付けなしに記事にせず、情報の出所を示して、信頼できる情報を節度を持って書く」と定めているとか。また「当時の報道は菅家さんを「犯人視」する報道に満ちていたと言わざるを得ない。」「一九九二年二月の初公判から確定までの間、菅家さんや弁護団の無実の訴えに正面から向き合い、きちんと取材しようという姿勢が本紙には足りなかった。菅家さんは無実だという視点から、捜査の矛盾点などを継続的に報道してきたのはフリージャーナリストと民放テレビ局の記者だった。菅家さんの再審開始の決定は、司法の敗北であると同時に、大手メディアの敗北でもある。」というところまで踏み込んで書いているのはえらいですね。


残るは朝日新聞だけとなりましたが、こちらの記事によれば6月24日紙面で検証記事が掲載されたようです。ただし、ネット上には公開してないのか、いろいろと検索かけてみたのですが該当記事にたどりつくことはできませんでした。

2)各新聞社が独自に作成した「事件報道ガイドライン

新聞・放送各社が加盟する日本新聞協会は、昨年1月、「裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針」なるものを発表しました。これを受けて各新聞社では各々独自にガイドラインを作成。今年初め頃からそれに基づいた報道がなされているようです。ガイドラインの内容がいくつかWEB上に公開されていたのでピックアップしておきたいと思います。


産経新聞
 産経新聞 > 会社・IR情報(事件・裁判報道ガイドライン) 09年2月21日公開
(※産経新聞社サイトのTOPページ上部にある「会社・IR情報」をクリックすると左サイドバーにリンクあり)


東京新聞中日新聞社
 東京新聞(中日新聞社) 事件報道ガイドライン・その1 | その2 09年3月より実施
(※東京新聞(または中日新聞)のTOPページ の右サイドバーにある「おしらせ」という項目の直下にリンクあり)


毎日新聞
独立したページというのは見つからなかったのですが、↓こちらの記事で詳しく言及されてます。
 毎日新聞 「開かれた新聞」委員会 座談会(その1) 情報出所、明示に努力


先ほどの日本新聞協会の指針は「加盟各社は、本指針を念頭に、それぞれの判断と責任において必要な努力をしていく」という一文で締めくくられており、読売・朝日の大手2社もこの指針に基づいたガイドラインを当然作成していると思われるのですが、サイト内を検索しても会社案内を見ても見つけることができなかったので、実際のところはよくわかりません。


追記(09/6/27付)
『ジャーナリスト』08年11月号によれば、読売新聞、朝日新聞共同通信は既に昨年中にガイドラインを作成し運用を開始しているようです。

 すでに読売は08年3月に「事件・事故取材報道指針」を、朝日は六月に「裁判員裁判と事件報道」を策定済みであるし、共同も9月「事件報道のガイドライン」「記事・見出し表現見直し」をまとめた。これらは一様に、情報の出所の明示や発表報道・供述報道に関し、読者をミスリードしないための細かなルールを定めている。


関連サイト:
Pressnet 日本新聞協会取材と報道に関するルール集
YOMIURI ONLINE(読売新聞)
asahi.com(朝日新聞社)
毎日jp(毎日新聞)毎日新聞社
MSN産経ニュース産経新聞社
東京新聞(TOKYO Web)


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