『放送禁止 劇場版〜密着68日復讐執行人〜』の<真実>とは【解決篇(8割確定?)】

再見したら新たな真実が判明したので大幅に書き換えます。また記憶があいまいで不明瞭だった箇所もだいぶ補完しました。初見時に書いた考察は↓こちら。

お暇な方はどこがどう変わったのか読み比べてみてください(9月20日追記:再々見したらまた新たに確認したいことが出てきたので【9割】から【8割確定】に変更。さすがにもう見に行けないので、早くDVD出してほしい)。


↓ネタバレにつき、この先は劇場版をご覧になってからどうぞ。
↓↓↓↓↓↓↓




前回同様、12年前のいじめ事件から時系列順に追ってみます。記憶が曖昧な箇所は【】でくくりました。


平成7年(1996年)、神奈川県にある横浜市立静那○高校で悪質ないじめ事件が起きた。いじめのターゲットは神野留麻(当時17才)。主犯格は留麻のクラスメイトで医者の息子である深町和彦、いじめグループには校内一の美人・内田貴子や留麻の幼なじみ・江口来実(当時17才)もいた。服を破られたり、数十万をせびられたり、持って来れないと援助交際を強いられるなど、かなり悪質ないじめがクラス内で行われていたが、担任の高岡輝男はその事実を知りながらこれを見逃していた。当時のクラスメイトの証言によれば、江口は留麻のことをなんとか助けてあげたいと思いつつも、いじめがどんどんエスカレートしていったことで、今度は自分がいじめられるのではないかと思うと怖くてやめることができずにいたという。


留麻は映像ジャーナリストの古茂田俊作に相談。古茂田はいじめグループに接触をはかるものの、スクープ映像を撮ることが目的だったため解決に向けた介入は何もせず、留麻に対するいじめはどんどんエスカレートしていった。ある日、主犯格の深町は江口にビデオカメラとガソリンの入ったポリタンク、ジッポライターを渡し、「留麻にガソリンをかけて焼身自殺するよう脅し、その様子をカメラで撮影してこい」と命令する。留麻と学校の倉庫に入った江口は、入り口付近にカメラを置き、ポリタンクの蓋を開け留麻に突きつけるが、ガソリンを被ることを嫌がった留麻に突き飛ばされ、ポリタンクごと床に倒されてしまう。咄嗟に江口が落としたライターを拾い上げた留麻は、ライターの火をつけると、倒れた衝撃で床上に流れ出したガソリン目がけて投げつけた。火はまたたくまに燃え上がり江口に引火。留麻はすぐさま入口へと走りだし、カメラをとりあげていったん外へ逃げようとするが、江口の様子が気になったのか、カメラをかまえたまま振り返ると、火だるまになった江口が突然こちらに駆け寄り、炎に包まれた彼女の手がカメラへと伸びて・・・(ここで録画が止まる)。


近所からの通報で消防がかけつけ、全身黒こげで絶命した江口と、顔に大火傷を負い意識不明の重体となった留麻を発見。警察は生徒達への聞き込み調査を行い、生徒(おそらく主犯格の深町)から「江口が留麻にガソリンを被って自殺するよう強要してた。冗談のつもりだったのに留麻が真に受けたようだ」という情報を入手。身元不明だった2人の女生徒のうち、全身火傷で死亡した女生徒を神野留麻、顔に大火傷を負って意識不明の重体に陥ってる女生徒を江口来実と判断し、マスコミに発表した。


警察は意識が戻り次第生き残った江口(実際は留麻)から事情を聞く予定だったが、彼女をいじめの主犯格とした内容のドキュメンタリー番組が古茂田によって発表されたことで事態は急転。マスコミはいじめグループを激しく非難し、主犯格とされた江口の自宅や入院中の病院にマスコミがおしかけるなどの報道被害が発生。担当教諭の高岡を中心に学校側は「いじめの存在は知らなかった」と会見で釈明。しかし、一部の生徒からは「教師は見て見ぬふりだった」との声もあがっていた。両親を早くに亡くし妹と二人暮らしだった留麻の兄・神野光留(当時20歳)はマスコミの記者会見で「妹は殺されたようなもんです。法で裁けないのなら犯人をこの手で殺してやりたい」と涙ながらに訴えた。江口の葬式が終わった頃、ようやく意識を取り戻した留麻だが、己が焼き殺した江口と間違われ、いじめの主犯格として糾弾されてることを知り、マスコミから逃れるように失踪。消息を絶つ。


いじめドキュメンタリーによって知名度を上げた古茂田はそれ以降もスクープ報道を連発。しかしやらせや捏造が多く業界からの評判は良くなかった。主犯格の深町は父親と同じ医者の道へと進むが、医療ミスでいくつものトラブルを抱えていた。内田貴子はその美貌をいかし、“メグ”という源氏名でホステスに。結婚詐欺で客の男性をだましては数百万の金を得ていた。そして担任教師だった高岡は、事件から12年経った平成19年(2007年)4月10日、関東近郊にあるとある高校の校舎から飛び降り自殺した。「告発!これが淫行教師・高岡の正体だ!」との怪文書が校内にまかれており社会的制裁に耐えられなくなっての自殺だと思われる。そのビラには女生徒(?)とベッドに寝てる写真と共に、これまでに犯した数々の暴行事件のこと、妻や娘のこと、そしてかつて生徒達のいじめを見逃し、成績を餌に女生徒を暴行するなどの行為に及んでいたことなどが暴かれていた(注:被害者が不登校になった等の文面も見受けられたので、ここで語られてる「いじめ」が例のいじめ事件のことだけなのかはついに判読できなかった。DVD発売時に確認必須)。


番組制作会社に就職していた留麻の兄・光留(32歳)は、妹の担任だった男の突然の自殺の理由が知りたくて独自に取材を開始。怪文書を入手し、飛び降りた学校の生徒から「先生が死んだのは数年前に起こしたレイプ事件のせいで、シエロという闇サイトに復讐を依頼されたからだ」との情報を得る。すぐさまシエロの管理者・七川ノラムにコンタクトを取った光留は、高岡の自殺から1週間後、神奈川県・横浜市のとあるビルの一室にある「ジーンベリー企画」という会社を訪ね、管理者・七川ノラムと対面。仮面をつけて現れた彼女にインタビューを試みる。シエロの理念を淡々と語る仮面の女。「私たちはあるポリシーのもとに行動してます。わたしたちの行動は反社会的なものではなく、警察や裁判所、司法では裁かれないことを私たちが独自に審査し公正に判断して鉄槌をくわす。いわば正義の集団なのです」と言い、「私たちの活動を撮影し世間に公表してほしい」と提案する。光留が断ると「あなたに選択の余地はない」と脅迫。


数日後、仮面の女からの連絡で、六本木にある高級クラブのナンバーワンホステス・メグ(本名:内田貴子)への復讐に密着することになった光留。復讐の依頼人は「ミルク派の男子(みるくはのだんし)」と名乗るサラリーマン。今年3月、彼女から結婚を餌に数百万円近くを騙し取られたという。彼女にだまされた男は他にもいて被害総額は1000万円を超すという。仮面の女は男たちを雇って彼女への復讐を開始。光留は密着取材の合間に、メグが勤める高級クラブのホステスから話を聞き、「メグが前の店で結婚詐欺みたいなことして男から金をだまし取ったって聞いた」との情報を入手する。尚、“メグ”こと内田貴子はかつて留麻をいじめてた人物だが、真相を知らない光留はそのことに気づかない。


メグへの復讐が終わった翌日、入院した彼女の様子を撮影しに病院へ行った帰りの車中で、「こんなことしてるといつか警察につかまるぞ」と忠告する光留。しかし仮面の女は「警察に私たちを掴まえることは出来ない」と全く意に介さない。メグを騙した男の身元を訊いても「彼はネットで雇った。私が誰なのか彼は知らないし、私も彼が誰か知らない」と答えるだけだった。


数日後、仮面の女から再び事務所に呼び出された光留。シエロの取材をしたいと思った動機を訊かれたので、高岡を告発する怪文書を突きつけ「高岡の自殺もおまえらの仕業なんだろ」と問いつめると、仮面の女の様子が急におかしくなり、「どうやらあなたは知りすぎたようだ」と呟き、「死して沈黙するか、それとも私たちの協力者となるか、2つにひとつ」と光留を脅迫。一度は激しく拒否したが「命を落としたとしても? それにあなたにだって家族がいるでしょ?」と脅され「家族は関係ないだろ」と激しく動揺する光留。


次のターゲットは悪徳ジャーナリストの古茂田俊作。依頼人は「丸いな遺伝子(まるいないでんし)」と名乗る女性。父親がある事件の容疑者にされ、「えん罪を晴らしてやる」と近づいてきた古茂田によって、逆に父親を犯人とする番組をでっちあげられ、窮地に陥った父は自殺。その直後、真犯人が出頭してきたという。今回は撮影だけでなく宋野登津雄という男になるよう指示される光留。先に参加してた宋野真津(29歳)という女性と数週間にわたり夫婦を演じ続けた。


この時真津は光留の前で、復讐のために雇われただけの人間であるかのように振る舞っていたが、彼女こそが本当の七川ノラム、シエロの真の管理者だった。何も知らない光留から「なぜこんなことをしてるのか」と問われ「すべてはノラムのため」と答える真津。


架空の夫婦をでっちあげ、古茂田を騙すことに成功した仮面の女は、スクープ映像を撮ろうと部屋に入ってきた古茂田を襲い、「わかりませんか? よーく思い出してください。どうです?騙された気分は」と問いかけ、一連の出来事が全てやらせだったこと、そしていま、古茂田自身が己のよくやる方法でかつて行った捏造事件の報いを受けてることをアピールした。そして二度と彼がカメラのレンズを覗けないよう、硫酸をかけて目を潰した。


古茂田への復讐を終えた後、真津をラーメン屋に呼び出し仮面の女の正体を聞き出そうとする光留。真津は「彼女は復讐という名の亡霊に取り憑かれてるんです」と言い、光留が留麻にたどり着けるよう「あの記事見たんでしょ? 彼女のサイトをもう一度よーく見てください」というヒントを残し店を後にする。席には彼女が忘れていった1本のビデオテープが残されていた。しかしテープは専用のデッキがないと再生できない古いタイプで、当日すぐに中身を確認することはできなかった。


次の復讐ターゲットは医師の深町和彦。依頼人は「村の初孫(むらのはつまご)」と名乗る40歳の会社員。15歳になる息子を深町の医療ミスで亡くしたという。復讐のレベルは「E:殺害」だった。しかし彼はこれ意外にも少なくとも二件の医療ミスを抱えており、取材中も包丁を持った遺族から命を奪われそうになっていた。光留をつれて病院に赴いた仮面の女は偶然その現場に遭遇。帰りの車中で「急がなくては。あの男だけはなんとしても私たちの手で」と呟いた。


再生デッキが届き早速テープを確認する光留。しかし劣化が激しく撮影内容を確認することができなかったので、後日業者に映像の復元を頼むことに。真津のヒントを頼りにシエロのサイトをくまなくチェックした光留は、「シエロ=江口」であることに気づき狂ったよう笑い出す。そしてかつての留麻のクラスメイトを訪ね歩き、いじめ事件の真相を調べ上げ、これまでの復讐ターゲットが皆、妹を死に追いやったいじめ事件の加害者だということに気づく。


事務所に仮面の女を呼び出した光留は、取材の結果を報告し、復讐サイト・シエロの管理者が江口来実だという事実を本人につきつける。仮面の女は復讐の動機についてこう答える。「私にはあの子が取り憑いてるの。私を呪ったあの子が言うの。あなたを殺すわけにはいかない。死よりももっと恐ろしい罰を与えてやる。私を殺した社会を呪い、復讐の連鎖を広めなさいと」「彼女が命じるの。復讐を、もっと復讐をと」。「復讐なんて馬鹿げたことはやめろ。何も殺さなくたって」と止める光留だが、仮面の女は聞き入れない。


数日後、恋人とふたりで沖縄へとバカンスに出かける深町。しかしこの恋人はシエロが仕込んだ協力者であり、胸元には古茂田を襲った仮面の女が身につけていたのと同じ十字架のネックレスが光っていた。彼女は深町が席をはずした隙に遅効性の毒(ヒ素)を飲み物に盛り、知らずに飲んだ深町が苦しみ出すと、彼を車に乗せ人気のない海辺へと運んでいった。海辺には、先に車で現場に着き二人の到着を待ちかまえていた仮面の女がいた。苦しむ深町を車中に残し、仮面の女が乗ってきた車に乗って海辺を後にする協力者。残されたのは、仮面の女、深町、そして撮影のため別の車で深町のことを追いかけてきた光留の3人だった。


解毒剤を見せながら、苦しむ深町を追いつめる仮面の女。その様子を見守る光留。しかし、以前光留にかけられたコトバを思い出した仮面の女は、突然復讐を思い止まり「彼を殺さなければ、私も留麻も、留麻の呪いから抜け出せるかもしれない」と言って深町に解毒剤を打とうとする。が、そのとき、取り返しのつかない悲劇が彼女を襲う。。。


砂浜に倒れた彼女に近づき仮面をとった光留は予想外の事態に直面し混乱する。そして彼女の首にかつて自分が妹に贈った黒い石のネックレスを見つけ、仮面の女が焼け死んだと思っていた妹・留麻だということに気づき泣き叫ぶ。


その日の夕方、海辺にて3人の遺体が発見され、一人は医師の深町和彦、一人は番組制作会社社員・神野光留、もうひとりは身元不明の女性だと報道された。


 * * * *


初見でわかる<表のシンジツ>は、「12年前の事件で焼け死んだのは江口であり、死んだとされていた留麻は生きていた。そしてシエロに密着取材していたスタッフは留麻の兄・光留だった」ということ。江口と留麻の入れ替わりについては、劇中に出てきた依頼者の名前「みるくはのだんし(=死んだのは来実)」「まるいないでんし(=死んでない留麻)」でも指摘されているが、残るひとつ「むらのはつまご(=ご真津はノラム)」が波紋を呼び、既に出されていた「シエロ管理者・七川ノラム(=カミノルマ)」の情報と併せ、「真津は留麻」なのか、それとも「真津はノラム(=シエロの管理者)ではあるけど留麻とは別人」なのかといった議論を呼んでいる。状況証拠だけ見るとどちらにもとれるので、私自身は「真津や光留の芝居」と「いきなりの整形ネタ」が納得できないという理由から「真津≠留麻」をとっていたのだが(詳しくは以前に書いたのでそちらを参照。長文なのでここには書きません)、再見して新たに判明したシンジツ、すなわち<深町の恋人役として登場した協力者の正体>を組み入れてストーリーを再構築した場合に、いくつかの問題は残るけれども、「真津≠留麻」より「真津=留麻」にした方が都合がいいという状況になってきたので、「真津=留麻」説をとりつつ『放送禁止 劇場版』及び『放送禁止6 デスリミット』に隠された<裏のシンジツ>に迫ってみたいと思います(といってもまだ詰め切れてないので随時加筆してゆきます)。

留麻が復讐に取り憑かれた理由

当初「加害者への憎しみ」が彼女を復讐へと駆り立てているのかと思ったが、深町らへの怨みのコトバがまるで聞かれないことや「私にはあの子が取り憑いてる」等の発言を聞く限りどうもそうとは言い切れない。むしろ、幼なじみの江口来実を憎しみにまかせ焼き殺してしまったという「罪の意識」こそが彼女を復讐の連鎖へと駆り立てているように思える。留麻が意識を取り戻したのは自分の葬式が済んだ頃であり、己の手で焼き殺した江口と取り違えられ、その家族に看護されながらいじめの主犯格として糾弾されるという皮肉な運命によって、留麻は「死よりも恐ろしい罰を来実から与えられた」と強く思い込み、内なる江口に命じられるまま復讐に取り憑かれていったのではないか。彼女が留麻を名乗らず江口のまま皆の前から姿を消したのは、マスコミからの糾弾に耐えられなくなったというよりも、いずれ自分が江口でないことがバレて江口の死の真相が明らかにされてしまうことを怖れたからではないのか。「なにも殺さなくたっていいじゃないか」と兄に詰め寄られたとき、留麻はその仮面の下で何を思ったのだろう。。。

「仮面の女」は二人(もしくはそれ以上)いる

ボイスチェンジャーで声を変えているのでわかりにくいが、「仮面の女」は少なくとも二人存在している。古茂田に復讐する際に光留に指示を与え続けていた仮面の女はそれまでに登場していた仮面の女とは別人である。よく見ると「体型が明らかに違う」というのもあるが、古茂田の復讐時に現れた仮面の女はいつも首に十字架のネックレスをかけている。彼女がこれをかけてるのは古茂田の時だけだ。そして、これと同じネックレスをかけているのが↓に記す「深町の恋人」である(彼女は、真津が光留に呼び出されたラーメン屋にも登場し、「替え玉あります」と書いた張り紙の下でラーメンを食し、真津が店を立ち去るときに「替え玉ひとつください」と頼んでいる)。

「深町の恋人」役を演じた女性の正体

「深町の恋人」として登場するかの女性は、その役割の大きさから考えても「ネットを介して金で雇った他の協力者たち」とは一線を画す存在である。彼女は、深町に近づき毒を盛るだけでなく、古茂田の復讐時には、留麻の代わりに「仮面の女」として登場。古茂田を殴り倒して硫酸をかけるという大役まで担ってる。何故彼女はそこまで深くこの復讐プロジェクトに関わっているのか。それは彼女が復讐にとりつかれた「もうひとりの人物」だからではないのか。


古茂田を襲ったときの彼女の言動には不可解な点がある。留麻の「替え玉」として復讐執行人役を担ったにしては、あまりに感情的で真に迫りすぎているのだ。留麻以外で古茂田に憎しみを抱いてる人間と言えば「江口来実」の名が思い浮かぶが、彼女は既に死亡し自分がいじめの主犯格にされてることすら知らない。となると、残るはあとひとり。そう、古茂田の復讐をシエロに依頼してきた人物である。当初は名前が名前だけに依頼自体留麻の創作ではないかと考えたが、どこをどう探しても彼女以外に動機を持つ人間が見当たらない。
古茂田の復讐を依頼してきたのはとあるえん罪事件の被害者の娘。「父親のえん罪を晴らしてやる」と言葉巧みに近づいた古茂田は、逆に父親を犯人とする番組をでっちあげ、父親を自殺へと追い込んだ。直後に真犯人が名乗り出たため父の汚名は晴れるが、古茂田を信じたばかりに、騙され、裏切られ、その結果父親を亡くした娘の怒りは、復讐を第三者の手に委ねることではおさまりきらず、自らの手で古茂田に鉄槌を喰らわすことを切望しノラムに頼みこんだのではなかろうか。「わかりませんか? よーく思い出してください」という問いかけは、その言葉を発した女性の背景を考えるとえん罪事件のことだと考えた方がよりしっくりくるし、背景を知った上で再見すると、彼女が古茂田に投げかけるコトバのひとつひとつに信じて裏切られた人間の怒りの感情を読み取ることができる。


尚、古茂田への依頼がホンモノならそれ以外の依頼も留麻の創作ではなくホンモノなのではないかという疑いが出てくる。結婚詐欺にせよ医療ミスにせよ、光留の独自取材によって似たような事例があったことの裏付けはある程度取れている。また、留麻自身に復讐サイトを立ち上げるだけの動機があること(自分に取り憑いた「あの子」が復讐の連鎖を広めろって言ったとかなんとかってあれです)、サイトがなければどうやって冤罪被害者の娘と知り合ったのかという謎が出てくることなども考え併せると、復讐サイト・シエロは2005年から実際に運営されてるサイトであり、復讐の依頼もサイトに送られてきたものからチョイスされた「ホンモノ」だという可能性は捨てきれない。

「真津=留麻」説を受け入れた根拠

古茂田に見せる真津の芝居が「いじめ事件」ではなく「えん罪事件の捏造」を想起させるために仕組まれたものだとすると、いじめ事件を想起させるような発言の数々は、どれも無意識や偶然によって生みだされたものということになる。そうなると、真津の言った「昔は優しくてお兄ちゃんみたいだった」(『デスリミット』参照)というコトバも、古茂田に「登津雄を演じてる男性は神野留麻の兄・光留だ」と知らせるためにあえて言った「台詞」ではなく、久しぶりに光留と再会し昔のように楽しく会話したことによってうっかり出てしまった真津の「本音」とみるのが妥当だということになる。むしろそう考えないと逆に不自然。いまのところ、光留のことを「お兄ちゃんみたい」なんて呼べる人物は、留麻か幼なじみの江口ぐらいしかいないので、死んだ江口を除外すると、残った留麻が「真津」ということになる。
(尚、最後に仮面の女を演じた人は真津さんの中の人だと思う。理由は、真津さんの中の人って立つときちょっと内股になるんだよね。最後の仮面の女も内股だったし、刺されたときのうめき声も真津さんっぽかったので、最後の仮面の女は真津さんの中の人が演じてると思う。)

「白いパンプス」が意味するもの

『デスリミット』を見るとわかるのだが、古茂田が真津に会いにマンションを訪れると、いつも玄関には「白いパンプス」が置かれてあった。マンション内に真津以外の人間がいるとは考えにくいので真津の靴であると思われるが、つまさきに花があしらっており、カジュアルな格好の真津には不釣り合いなデザイン。むしろ白いワンピースを着た仮面の女が履いていそうと思ったら、案の定劇場版では「七川ノラムとして登場した仮面の女」「最後に殺された仮面の女(=留麻)」「ホステスを襲った仮面の女」がこの靴を履いて登場した。ところが同じ仮面の女でも「古茂田を襲った十字架ネックレスの仮面の女」がこのパンプスをはいて登場する映像はいまのところ見つかっていない。また、古茂田が初めて真津のもとを訪れた時に仮面の女は駐車場で待機しており古茂田より先にマンションに着くことは不可能だったにもかかわらず、玄関には白いパンプスが置いてあった。よって「真津=白いパンプス」「シエロ管理者・七川ノラム=白いパンプス」「仮面の女(留麻)=白いパンプス」は確定事項。また制作サイドから「村の初孫(=ご真津はノラム)」というヒントが出されているので、「真津=シエロ管理者・七川ノラム」となるのかどうなのか(字余りの“ご”が気持ち悪い)。

残された問題点

ひとつめは、ボイスチェンジャーの問題。劇場版では仮面の女の声のほぼ全てにボイスチェンジャーが掛けられている。かけられていないのは、初めて事務所を訪れた光留に「どうぞおかけになってお待ち下さい」と声をかけたときだけ。ところが、『デスリミット』では仮面の女には一切ボイスチェンジャーがかけられていない。全て地声のまま。しかも全く同じシーンが劇場版にも収録されてるのに、劇場版ではちゃんとボイスチェンジャーがかけられている。これはどういうことなのか。替え玉トリックはボイスチェンジャーがないと成立しないのだが・・・。


二つ目がビデオテープの問題。警察は生徒から「江口が留麻に焼身自殺を強要し、その模様をビデオカメラで撮影しようとしていた」という情報を入手していたはずだが、何故ビデオカメラの映像を調べようとしなかったのか。仮にビデオカメラの存在を教えられてなかったとしても、傍に落ちてたら当然中身をチェックするだろう。では何故それをしなかったのか。考えられる理由はひとつ。現場のどこにもビデオカメラが落ちてなかったから。顔に大火傷を負った留麻にカメラをどこかに隠すだけの余力があるとは思えない。じゃあ誰が現場から持ち去ったのか。そして何故そのテープを真津が持っているのか。


あと、些細なことかもしれないが、毒を盛られて苦しむ深町を車に乗せるときに付き添っていた男女のうち、右側にいたオレンジ色のシャツを着た女性の履いてた靴とパンツをいまいちど確認したい。どうもその後に出てくる「仮面の女(=留麻)」の服装と似てる気がするのだが…。もしそうなら、オープンテラスにいた時点で見切れてる可能性もあるのではないか。そのあたりを最後にもう一度確認したい。あと、光留が二度目に事務所を訪れたときにスレ違った女性もね。首に十字架のネックレスをかけていたのかどうか。
(9/20追記:確認した。その結果、靴はわからないがパンツは違った。オレンジシャツの女性はあの店のウエイトレスで、オープンテラスで深町と彼女に飲み物を運んできていた。また、光留が事務所を訪れたときにすれ違った女性は確かに十字架のネックレスをかけており、真津ではなかった)


 * * * *


というわけで、やっぱりまだまだ謎の残る『放送禁止 劇場版』。池袋での上映も残すところあと1週間。皆さん、悔いのないように!w ちなみに9/19(金)20:00の回はトークショー付きです。


 * * * *


-追記(9/20)-
再々見して新たに出てきた疑問がいくつかある。DVD発売時に確認したい。


↑で「仮面の女は二人いる」と書いたが、ホステスを襲った仮面の女もまた「別の人間」、しかも「男」である可能性はないのか? 留麻が深町のことを「あの男“だけ”は私たちの手で」と言ったこと(「ホステスも古茂田も直接的に手をくだしたのは別の人間なので、あの男だけは自分の手で殺したい」と言ってるようにも聞こえる)、光留にどんな人が協力してくれるのかと尋ねられたとき「人によって理由はさまざま」(←この発言はうろ覚えで正確ではないです)と言ったことが引っ掛かる。古茂田を襲ったのが直接的被害者であったえん罪被害者の娘なら、ホステスを直接的に襲うのも「結婚詐欺にあった被害者の男」だったとしてもおかしくない。またホステスを襲った仮面の女だけ他の二人とは違い「身体のラインを隠す服装」だったのがどうしても気になる。ただし、例の「花のついた白いパンプス」を履いてるので、依然として留麻である可能性は否定できない(逆に留麻でないと白いパンプスの法則が崩れるので、ここは慎重にいきたい)。


それから、光留が仮面の女に車中インタビューを撮ってるとき、その車を運転してるのは誰なのか? 



-追記(09/2/27)-
ついにDVDが発売されました。

放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人 [DVD]

放送禁止 劇場版~密着68日 復讐執行人 [DVD]

尚、特典映像ではある人物の口を通してこの事件の裏に隠された《真実》が語られてます。これ見ると、思ってたより壮大な話になっており、いままで議論してきたことや残った謎なんかがぶっちゃけどうでもよくなるぐらいの破壊力があります(苦笑)。従って、DVDで初めて劇場版に接するという方は、自分なりに散々議論・考察・妄想しまくった最後に特典映像を見た方が(いやむしろ一生見ない方が)作品を十二分に楽しめるんじゃないかと思います(だってさあ、ああいう設定にしちゃったらなんでもありじゃん。殺された被害者以外の関係者全部“復讐執行人に雇われたサクラ”でもありになっちゃうじゃん。なんでもありはつまんないよ)

ちなみに今年の初夏に劇場版2が公開されるそうです(となると新作は4月改編期に放送かな?)。



関連:「放送禁止」シリーズ関連過去記事一覧