『放送禁止6 デスリミット』の<真実>とは?【宋野登津雄編】

劇場版公開まであと1週間。明日は試写会も行われるので、ネタバレされたくない人はいろいろと気をつけつつ情報漁ってくださいね。


先日、「放送禁止封印BOX2」が届きました。ご丁寧に、劇場版のDVDを入れるスペースまであって(笑)、「ああ、これでホントにこのシリーズもいったん終了かもしれんなあ」としみじみ感慨に浸りつつ、「それならそれで劇場版をがっつり楽しむべ」と今朝は朝からずっと『放送禁止6 デスリミット』を見返してたわけですが、その甲斐あって隠された<真実>にようやく辿り着くことが出来ました!・・・と言いたいとこですが、意味のわからん映像が多すぎて上手く裏のストーリーにつなげられないので、今回はドラマ部分にスポットを当て「DV夫・宋野登津雄さん」についてみっちり語りたいと思います。いや、見れば見るほど面白いッスよ。この人。

放送禁止6 デスリミット [DVD]

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以下、ネタバレ。劇場版のあらすじや予告映像にも触れるので未見の方はご注意を。
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まずは登場人物(12年前の事件は省略)。

映像ジャーナリスト・小茂田俊作(こもだしゅんさく 43歳)
妻・宋野真津(そうのまつ 29歳) 
夫・宋野登津雄(そうのとつお 32歳)
仮面の女

「デスリミット」の大ざっぱなあらすじは次の通り(12年前の事件は省略)。

神奈川県・川崎市に住む専業主婦、宋野真津さんから「夫のDVに悩んでる。このままでは殺されるかもしれない。助けて欲しい」という手紙をもらった映像ジャーナリスト・古茂田俊作氏。彼女の住むマンションを訪ねた古茂田氏は、DVを止めるためには行為の実態をきちんと把握する必要があると言ってリビングに隠しカメラをとりつけ、夫・登津雄さんの様子を観察し始める。


初日こそ妻に暴力を振るう夫だったが、その後しばらく何も起こらないと、しびれを切らした古茂田氏は妻に電話をかけ彼を挑発するよう指示。それをきっかけに再び始まる夫の暴力。取材から20日経ったある日、登津雄さんがひき逃げにあい片足を負傷し入院。妻は小茂田氏に、1ヶ月ほど前、復讐サイトに夫の殺害を依頼したことを告白。すぐ取り消しのメールを送ったが返信はなかったということで、今回の事故は自分のせいじゃないかと怯える。退院し自宅療養を行うことになった登津雄さん。最初こそキレては暴力を振るう夫だったが、次第に気持ちに変化が現れ、ついに今までの暴力行為を妻に詫びた。


傷も回復し、仕事にも復帰した登津雄さん。平穏を取り戻したかに見えたが、再び復讐サイトから「3日以内に夫を殺す」というメールが届く。怯える妻に「旦那さんは僕が守る」と約束する古茂田氏。その日以来、仕事への行き帰りも監視するようになった古茂田氏。1日目、2日目と無事に過ぎ、3日目も終わろうとしたその夜、二人が夕食をとってると、玄関のチャイムが鳴り、応対に出た登津雄さんが何者かに襲われる。監視カメラに越しに古茂田氏に助けを求める真津さん。おろおろするだけで動けない古茂田氏。真津さんも玄関にむかいリビングには誰もいなくなった。ようやくカメラ片手に部屋に駆けつける古茂田氏。しかし部屋に辿り着くと夫婦の姿はなかった。リビングの電話が鳴り、受話器を取ると「残念ながらあなたはテストに全て不合格でした」という女の声が。「粛正されるのはあなたの方です」という声に振り向くと、金属棒を掲げた仮面の女が。殴られ倒れる古茂田氏のカメラに映ったのは、仮面の女の奥でカメラを回す男の姿と、その横で立ちつくす女の姿だった。

この後、テレビでは『放送禁止 劇場版〜密着68日復讐執行人〜』の公開が15秒の予告映像と共に発表される。その中には、帰宅した登津雄さんを迎える真津さんの姿を玄関口から撮った映像が挿入されており、登津雄さん自身がカメラを持たされ撮影も担わされてることが判明する。ここで勘のいい人なら「仮面の女の奥でカメラを回してたのは登津雄さんか!」となるのだろうが、自分の場合は総合的に判断するクセがついてることもあり、撮影スタッフが演じ手として参加する必然性など微塵も感じられないことや映像が不鮮明であること、そして「登津雄さん=復讐サイトの一味」であり取材スタッフとは別に存在しているとの思い込みが判断を曇らせ、復讐サイト側に密着してる取材スタッフが「一人しかいない」ということが劇場版のあらすじに明記されるまでまったく気がつかなかった。横で立ちつくしてる女性については、顔は見えないものの服装がハッキリ映されていたことやこの状況下で真津さん以外の女性が存在してる可能性が皆無だったため、すぐに真津さんだと判別することができた。


『デスリミット』における宋野登津雄さんの<真実>。それは、「宋野登津雄(そうのとつお)」という人物は古茂田氏をひっかけるために第三者が演じた「嘘の夫(おっとのうそ←→そうのとつお)」であり、しかも演じていたのは復讐サイトの活動を密着取材していた「取材スタッフ」であった、ということ。このことについて『デスリミット』内のネタばらしできちっと明示しなかったのは、あの不鮮明な映像でもわかるだろうということなんだろうか(もしかしてこの説自体間違ってる? いや、そんなことないはずだ。勘がにぶっててゴメンネ。汗)。でもこれはハッキリさせといてくれた方が人間ドラマとして見返したとき随分楽しくなるんだけどね。『デスリミット』は謎解きを重視した「放送禁止1」に近い構成ながら、肝心の謎解きが劇場版に持ち越されてしまってるためいささか物足りなさが残る。それならばと「人間ドラマ」として見返してみても、真津さんの本当の正体が分からないままでは心の機微が伝りにくく、復讐サイト側の人間(年齢からいっておそらく12年前の事件の関係者)だと思って見返しても印象は変わらない。だが、「登津雄さん=取材スタッフ」ってことになれば話は別だ。実は微妙な心情を芝居の中でもっとも表してるのが、この「登津雄さん」。初めてのアドリブ演技でどう動いていいかわからず戸惑ってる様や、騙すためとはいえ女性に本気で暴力を振るわなければならないことへの躊躇みたいなのがよく現れていて、見返せば見返すほど愛着が湧いてくる。


とりあえず劇場版のあらすじがないと始まらないので、まずは↓こちらを一読されたし。

あらすじ(チラシより)

「復讐専門サイト "シエロ"」。料金を払って復讐を代行する闇サイトの管理者である仮面の女「七川ノラム」を追う取材スタッフ。彼は、ある事件を機に、"シエロ"の存在を知り、接触を試みる。「見てみたいと思いませんか? 人間が復讐される瞬間を」 ノラムの提案で、闇サイトの密着取材が行われることに。復讐の標的は、結婚詐欺のホステス・医療ミスを起こした医師・スクープを狙う映像ジャーナリスト。取材の過程で、次第にノラムの正体を掴みかける取材スタッフ。だが、事実は彼を思いもよらぬ真実へ向かわせるのだった…。

あらすじ(「放送禁止 劇場版」詳細ページより)

「復讐専門サイト "シエロ"」。料金を払って復讐を代行する闇サイトの管理者であるハンドルネーム「七川ノラム」を追う取材スタッフK。彼は、以前起きた教師の自殺事件を機に、"シエロ"の存在を知る。彼はインタビューの最中、ノラムの脅迫めいた提案で彼女が行う復讐の瞬間を撮影することとなった。結婚詐欺のホステス・医療ミスを起こした医師・スクープを狙う映像ジャーナリストなどの復讐に立ち会う中、次第にKはノラムの正体を掴みかけるが、事実は彼を思いもよらぬ真実へ向かわせるのだった…。

チラシの方では「取材スタッフ」としか書かれてないが、「彼ら」ではなく「彼」としてるから、今回復讐管理人に密着してるのは「K」というスタッフ一人なんだろう。以下は、私の勝手な推察。


スタッフKは“仮面の女”こと復讐サイトの管理人・七川ノラムから「DV夫を演じてくれ」と提案される(ちなみに管理人の名が「七川ノラム」であることは、復讐サイトの右下にもきちっと明示されている。この名は鏡像反転させるとある人の名前になるので試してみてね!)。古茂田氏が監視を始めた初日、スタッフKは盗撮できるように細工した鞄に手持ちカメラを収めてマンションへ向かい、玄関のチャイムを鳴らして真津さんが出迎えてくれるのを待つ(迎え入れる真津さんの姿は予告映像で確認できる。生地越しに撮してるせいか画像には薄くメッシュがかかっている)。部屋に入ったものの、勝手がわからず言葉もなく棒立ちになってるスタッフK。とりあえず手に持ってたカメラで周りを映してみる。「どうしたの?」と訊かれても、うまい言葉が出てこない。「なんかあったの?」と再度水を向けられ、「とりあえず・・・・」と言ったあと、少し考えて「腹減ったな」と一言(「腹減った」って目の前にもう飯が出てるじゃん! テンパリ過ぎ。もっと落ち着いてー!) 「もうごはんできるから、先に着替えてて」と言われ「あっ」と我に返る登津雄さん。ぎこちなく隣の部屋に向かおうとするが、突然立ち止まりポケットから折りたたみ式の黒いケータイを取り出し画面を確認。おそらく仮面の女から何らかの指示メールが来たのだろう。その後隣の部屋のドアを開け「着替えはここかい?」といった感じでおそるおそる確認しつつ中に入る登津雄さん。


着替え終えて食事を始める二人。ケータイの画面を確認しテーブルの隅に置く登津雄さん。ホントはこの後DV行為に及ばなければいけないのだが、なかなか踏ん切りがつかないようで、グラスのドリンクを一口飲んだ後、食事に手を付けることなく再びケータイ画面をチェック。ようやくやる気になったのか、食事に手をつけながら「なんかさ、おかずの量が多くない?」と切り出す登津雄さん。食事しながら言い訳する真津さん。またドリンクを飲み、静かに聞く登津雄さん。「餃子も作ったの? 皮も?」と訊くと「皮は違うよ」と。「そっか」と言ってまたドリンクを飲む登津雄さん(え? そこでキレるんじゃないの?)。餃子を1個取り「ラー油ある?」と訊くと「ごめん忘れちゃった」と答える真津さん。短い沈黙の後、目の前の餃子を掴み真津さんに投げつけ立ち上がる登津雄さん(いよいよ始まるか?)。しかしその後の行動が続かない。席につきまたドリンクを飲む登津雄さん。なかなか真津さんを殴る踏ん切りがつかないのか、ケータイを取って席を立ち、再び画面を確認する。ようやく覚悟が決まったのか、ポケットにケータイをしまい真津さんの元に近づくと、床に引きずり落とし「おまえさ、ふざけるな!」と餃子を投げつける。画面に見入る古茂田氏。カメラが部屋に切り替わるとポケットに入れたはずのケータイがふたたびテーブルに置かれてる(画面は閉じてある)。餃子を投げつけ、殴る蹴るの暴力がしばらく続いた後、ケータイを取って隣の部屋に戻る登津雄さん。泣き続ける真津さん。その様子を観察し「私は正直いま愕然としている。このおぞましい光景に目を背けたくなった。しかし目を背けてはいけない。これが現実なんです。やらせではなく。いままさに現実に起こっているという深刻な真実なんです」と冷静にコメントを続ける古茂田氏。その様子をワゴン車の外から仮面の女が観察し今夜のミッションは終了(劇場版ではこの後反省会が開かれ、仮面の女や真津さんから「もっとちゃっちゃと殴りなさいよ。怪しまれたらどうするの?」といったダメ出しがあるのだろうか。ガンバレ、登津雄!)


数日後、楽しそうに夕食を取る登津雄さん。その後も1週間ずっと仲むつまじい夕食の団らんを続ける二人。登津雄さんの傍にはいつも画面を開いた状態のケータイが置かれている。


ある夜、なかなか暴力を振るわない登津雄さんにしびれをきらした古茂田氏が、夕食中の真津さんに電話をかけ「旦那を怒らせるようなことを言ってくれ」とイレギュラーな指示を出してくる。仮面の女にしてみれば予想していた事態だろうが、このタイミングでこういう形で指示してくることをどこまで把握していたのか。もちろん素人の登津雄さんがこれにどこまで対処できるのかは未知数。あらかじめこの日は仮面の女から「通常通り一日仲良く過ごしてくれ」と指示されているだろうし、電話の内容が聞こえてないので、このタイミングでそんな指示が真津さんに出されたことなど知るよしもない。となるとこの先は「登津雄さんが真津さんを殴る」という状況に向け真津さんひとりで登津雄さんを導いていくしかない。古茂田氏に監視されてる状況では、メモや耳打ちといったあからさまなことはできない。まさに『ガラスの仮面』の姫川亜弓状態。怯えた感じで話し始めることで事態を察してもらおうと頑張る真津さん。そんなこともしらず明るく接しようとする登津雄さん。しかしどんどん深刻になってゆく真津さんの姿に、何を求められてるのかわからず無言になる。「殴らないんでってことは殴れってことなのか? でも今日は楽しく過ごすはずじゃ。いったいどうしたらいいんだ」 そんな思いで思わずケータイに目をやる登津雄さん。事情を察した仮面の女からGOサインが出たのか出ないのか、しばし画面を眺めたあと、ビールをクイッと一口飲んだ登津雄さんは、突然ビンを持って立ち上がり、真津さんを恫喝。ビンを冷蔵庫にたたきつけ憮然とした表情でイスに座る(それでこそ、正解だ!)。その様子を見てほくそ笑む古茂田氏。こうしてこの日のミッションも無事終了(ちなみにテレビ前のテーブルの上に登津雄さんの鞄が置かれてたので、そこからのアングルの映像が劇場版では見られるんじゃないかと思います)。


その後、登津雄さんはひき逃げにあって怪我したことになり、包帯を足に巻き松葉杖で登場。自宅療養という形をとったため、昼間も監視されることになりなかなか大変。右足に巻いてた包帯を左足に巻くといった凡ミスも飛び出す。監視されてる間は片時もケータイを離さない登津雄さん。真津さんとの和解シーンでも画面を開いた状態のケータイが目の前に置かれていた。


いよいよ、ミッションも大詰め。最後の3日間に突入。会社への行き帰りを古茂田氏に尾行されることになる登津雄さん。カメラの入った鞄を持ち歩いて出社(よく見ると鞄からレンズらしきものが出てるように見える?)。最終日、帰宅した登津雄さんは、仮面の女に殴り倒される古茂田氏の決定的瞬間を撮らえるべく、カメラの入った鞄をテレビの上にセッティング(ここから撮られた映像は劇場版の予告90秒バージョンに収録されてる。メッシュがかかってるのですぐわかる。テレビの位置も微妙に壁寄りに動かしてる気がするけど怪しまれなかったんだろうか…)。この日は自分が手持ちで回す用にカメラをもう1台持参。そして夕食を食べながらスタンバイ。チャイムを押して入ってくる仮面の女と玄関で大立ち回り。古茂田氏が助けにくるのを待ち長々と芝居を続けるが結局諦めて息絶える(振りをする)。玄関脇に隠れて古茂田氏の到着を待つ3人。彼が部屋に入ってくると、仮面の女が電話を掛け、気を取られてる間にリビングに飛び出し、殴打の決定的瞬間を撮影。ミッション終了。この後の反省会は劇場版でお楽しみ下さい、ってことですかね。


* * * *


『デスリミット』で復讐のターゲットにされたのは、スクープ映像のためならやらせも厭わない映像ジャーナリストだった。そしてその復讐に荷担させられたのが、復讐サイト管理人の密着取材を行ってたTVスタッフ。どちらも同業者だ。劇場版ではこのTVスタッフが主人公となり事件に巻き込まれてゆくわけだが、復讐される人々を目の当たりにしても彼は助けの手を差し出すことなく最後までカメラを回し続けることができるのかということの方が、真実の追究より私自身にとっては興味をそそられる題材だったりする。復讐サイトの管理人・七川ノラムは言う。「わたしたちの行動は反社会的なものではなく、警察や裁判所、司法では裁かれないことを私たちが独自に審査し公正に判断して鉄槌をくわす。いわば正義の集団なのです」と。どこかで聞き覚えのある台詞だ。そういえば『デスリミット』では報道被害についても触れられていた。試されてるのは誰なのか? 真に復讐されてるのは誰なのか? テレビ業界における「倫理」や「表現の自由」と常にせめぎ合ってきた『放送禁止シリーズ』がついに劇場版を制作。・・・何故わざわざ劇場版? 何故テレビではいけないのだ。テレビを飛び出さねばならない理由が何かあるのか。ならば復讐されるのはただの一個人では物足りない。身内に斬り込み、テレビマンの倫理問題にきっちり踏み込むなら劇場版を作ることにも意味がある。果たして実際は・・・。


待望の劇場版は今週末より公開です。
映画『放送禁止 劇場版〜密着68日復讐執行人』公式サイト

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予告編(90秒ver)


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