『追悼のざわめき(デジタルリマスター版)』まもなく公開(9/1〜10/19まで)

『追悼のざわめき(デジタルリマスター版)』 9/1(土)〜10/19(金)まで


【監督・脚本】松井良彦【撮影】手塚義治/村川聡/井川義之
【出演】佐野和宏/仲井まみ子/隈井士門/村田友紀子/大須賀勇/日野利彦/白藤茜/皆渡静雄/高瀬泰司
150min/1985(2007)年
□上映館: ※渋谷イメージフォーラム(20:30〜レイトショー)


【STORY】大阪市南部、若い女性たちの惨殺事件が続発する。被害者たちは下腹部を切り裂かれ、生殖器が持ち去られていた。犯人は廃墟ビルの屋上で暮らす孤独な青年、誠(佐野和宏)。彼は「菜穂子」と名付けられたマネキンを愛し「愛の結晶」が誕生することを夢想していた。次々に若い女性を惨殺し、奪った子宮を「菜穂子」に埋め込み、そして、愛した。やがて彼女に不思議な生命が宿り始める、様々な人間が廃墟ビル=「廃境」へと引き込まれてゆく。現実の街並みはいつしか時間を失い、傷痍軍人や浮浪者など、敗戦直後を思わせるグロテスクなキャラクターが彷徨し始める。純粋に二人だけの世界で生きてきた幼く美しい一組の兄と妹(隈井士門、村田友紀子)。彼らもまた「菜穂子」がいる廃墟へと導かれてゆく。幼い妹は「菜穂子」に「母」の面影を観る。兄はその姿に激しく「性」を感じる。そのとき、廃墟ビルに引き込まれた人々に残酷な運命が訪れる……。


『追悼のざわめき』公式ブログ

『錆びた缶空』『豚鶏心中』の松井良彦*1が撮った1988年公開の伝説のカルト作品『追悼のざわめき』がデジタルリマスター版で再上映。単なるデジタルバージョンかと思いきや「オリジナルとは別物になればいい」との思いから新たに楽曲を追加したりしてるようですね。


予告編

15秒SPOT No.115秒SPOT No.2/15秒SPOT No.3/15秒SPOT No.4/15秒SPOT No.5


ちらしに書かれている文章が素晴らしく扇情的なので載せておきますw。

松井良彦が脚本に描いた寓話は、暴力と差別の残忍な描写に溢れていた。交差する憎悪、愛を切り裂く性、どん底のさらなる深層をゆく絶望。その映像をイメージすることはできても、映画化は不可能。故・寺山修司をして「映画になったら事件だね」と言わしめた。しかし『狂い咲きサンダーロード』(80/石井聰亙)『闇のカーニバル』(81/山本政志)『ゆきゆきて神軍』(87/原一男)といったアナーキーな作品群を生み出した80年代インディーズ映画の神懸かり的なエネルギーがこれを作品に結実させた。
1985年に完成した本作は、同年、トリノ国際映画祭に出品を予定されながら、イタリアの税関でストップ。86年には香港での日本映画祭に招待されながらも、試写を担当した映写技師が嘔吐、同じく関税ストップ。88年、公開に先立つ試写では既に賛否が激しく対立した。映画誌「イメージフォーラム」(88年6月号)ではおすぎが「とにかく汚らしい」と吐き捨てるようにののしる一方で、同人誌「シネマ・エデン」では、本作を19回観た編集者・三谷みどりが「私は『追悼のざわめき』になりたい」と恍惚としたオマージュを書きつづった。
88年5月28日、公開初日、中野武蔵野ホール超満員となった。しかし、開映後20分を過ぎたあたりから、気分を悪くした観客が次々と席を立ち始めた。あるものはこの映画を観たことを不幸に思う」と囁いた。また、あるものは「悲哀と美しさの入り混じった不思議な映画だった」「涙が出た」と。「最低!」と「最高!」、交錯する反響が伝説のカルトムービーを生み出した……


小人症の主人公たち、兄にレイプされ死にいたる少女、その腐乱死体をむさぼり食う兄。
舞台は、猛々しいヤクザが支配する大阪のアンタッチャブルな<真空地帯>・・・。
あからさまな差別や偏見にまみれ、閉ざされた苦境の中で懸命に生きようとする者らの絶望と破滅。
これはリバイバルではない。さらに鋭く、美しく、デジタルリマスターとしての暴力的な<再生>である。


撮影開始から24年。公開から18年。かつて『追悼のざわめき』が描いた寓話が、いま、現実のものとなっている。親殺し、子殺し、兄妹殺し・・・。時代が映画に追いついてきた。


バージョンは傷だらけの16ミリフィルムではなく、ニュープリントからのHDテレシネ。音響はオリジナル音源からのデジタルリマスター。更にミュージシャン・上田現が書き下ろした楽曲が追加され、現実の音は更に生々しく、グロテスクでイリュージョナルな場面はよりファンタジックに・・・。


あの鮮烈な描写が、耐え難いほど鮮明なハイビジョン映像とデジタル音響で襲いかかる。


舞台挨拶等の予定は以下の通り。

9/1(土)20:30の回 初日舞台挨拶
ゲスト(予定):佐野和宏、仲井まみ子、松井良彦監督、安岡卓治(製作)
※当日朝11:00より整理券配布。

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*1:現在、最新作となる『どこに行くの?』の編集中