『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』トーク、岩井志麻子×塩田時敏(×三池崇史)

仕事が押して、着いたの30分前。「この時間じゃ前の方の席しか空いてないかなあ」などと悠長に悩んでると、受付のおねえさんが出してきた番号が40番台。「なんだ、そうでもないじゃん」と安堵したのもつかの間、「お立ち見の番号になります」。・・・へ? そんなに入ってるの? ちょっと憂鬱になりながら、でもトークあわせても1時間半だし・・・と思いとりあえずチケット購入。道路には何故かテレビ用の機材を持った白人スタッフやマックスファクターメイクのお姉ちゃんたちがぞろぞろいて、よく見ると劇場の入り口に「ディスカバリーチャンネル 撮影中」の張り紙あり。なんでイメフォがディスカバリーチャンネルに取材されてんの?と不思議に思ってると、出たーーー! TVスタッフに付き添われ志麻子登場! なんとディスカバリーチャンネル、『インプリント』のおっかけ取材にわざわざ日本まで来たようです。建物をバックに劇場前の道路で志麻子取材中、トークの予定にはなかった三池監督も現れ、道ばたで2ショット。・・・すごい存在感(笑)。というわけで今日の上映前トークショーは、札止めになったんじゃないかと思われるほどの大入り満員の中、テレビ撮影付きで行われました。



まずは原作者であり女優としても出演してる岩井志麻子と、本作にもちょい役で出演しトークの司会を担当する塩田時敏の二人が登場。生・岩井志麻子ですが、テレビで見るより若くてキレイ、且つものすごい色気でした(ただの妖怪ババアじゃなかったよ!)。


実は岩井さん、今回が女優2作目だそうで、デビューはあの『シベ超』。塩田さんが「『シベ超3』ですよね。ぼくは『2』でリタイアして観てないんですけど」と補足すると、すかさず「その名を出すのは止めてくれ」と制止。本人はなんで出ちゃったのかひどく後悔してるらしく、「経歴から抹消するつもりでいる」とTVでおなじみのカメラ目線を観客に投げかけ繰り返し断言してました(笑)。


まずは原作の話から。『ぼっけえ、きょうてえ』を書いたせいで岡山の評判が落ち、いまじゃ入国禁止にされてると語る岩井さん。描かれてる世界は昔の田舎には割とよくある光景で、「岡山は今でもあまり変わらないけど」と相変わらずの郷土愛(笑)。それでも、近々講演で岡山に行かなければならず(詳しくはこちら)、「“招待”じゃなくて“呼び出し”ですね」と言う岩井さんに、「召還ですか?」と問うと、じろっと客席をにらみながら「そう、召還です。陸路では行けんかもしれないので、海から上がってゆかないと」と答え、思わずこちらも般若面で海から這い上がる岩井志麻子を想像ししばし身震い(冷汗)。


「好きな映画や作品は?」という問いには『サスペリア』なんかが好きと答えてた。女の人がナイフを構えて襲ってくるシーンの顔がどうしても瞼に目を描いた時の顔にソックリで笑ってしまうと。また、楳図かずおの漫画が昔から大好きで、こないだイベントにも飛び入りで参加させてもらったとか。『猫目小僧』『神の左手〜』の映画化の話を振ると、「猫目小僧はとっても男前なんですよ。いいことをしても、絶対自分からは名乗りでない姿が非常に男らしい」とベタ惚れのご様子。『神の左手〜』の方は映画化されることを知らなかったようで、「口から自転車が飛び出すシーンとかありますけど」と驚く岩井さん。「さすがに金子修介はそこまでできませんけど、三池崇史だったらやるかも」と答える塩田さん。その後も延々と楳図話で盛り上がりそうだったが、「語らせると何時間でも喋ってしまうので、適当なところで止めて欲しい」と岩井さんの方から自主規制してきました(笑)。


『ぼっけえ〜』の映画化について尋ねると、もともと角川ホラー大賞を取ったときに映画化の話を角川から約束されていたのだが、『パラサイトイヴ』や『リング』が次々と映画化されてゆく中、いつまで経っても『ぼっけえ、きょうてえ』の番がやってこない。だから岩井さん自身、約束が違うじゃないかとずっと不満に思ってたそうだ。自分にとっての映画化の条件はただひとつ、「わしも出せい」。あとはどうしようとかまわないから、とにかく「わしも出せい!」ということらしい。今回、三池監督から「役を作りました」と聞かされたとき、どんな役だろうと楽しみにしてたら、「女郎衆の中で、一番若くて綺麗な女郎」と言われ「まあ、そんな役を? いいのかしら」と喜んだら「・・・をいじめる役です」と言われご本人も納得したそうだ。


「岩井さんをあの役にキャスティングできたことがこの映画の肝である」と女優・岩井志麻子を絶賛する塩田氏(実際、ものすごい怪演です、というか三池監督のインタビューによると演技じゃなく「素」らしい)。実は先週行われた初日舞台挨拶も今日と同じような超満員の中で行われ、上映中は内容の過激さからか、女性が一人倒れ救急車を呼ぶ騒ぎがあったそうだ。その倒れたシーンというのがまさに岩井さんが出てきた場面で、「私もその話を聞いて気の毒になってお見舞いに行こうかと思ったんですよ。あの衣装を着て」とお見舞いなのか嫌がらせなのかわからない発言。だが、大概の客はそういった反応をしてくれないらしく「みんな、私が出てくると笑うんです」と不満そうな口ぶり(実際、今日の上映でも爆笑されてました)。「MXテレビのせいで最近は私をお笑いの人だと思ってる人が多くて困る」と続けるが、発言がウケると満更でもない顔をするので、根っからのお笑い気質なんだろう。塩田さん曰く「今日も外に救急車を待機させているので安心してください」ということだった。


アメリカで放映中止になったことについて振ると、「アメリカも、お金は出しくれたけど、ほんとに尻の穴の小さい…。よいこのトラウマになって『悪いことするとお仕置き女郎がやってくるぞー』と言われたかった」と不満をぶちまける(確かにそれは実現させたかった)。


そこから話は私生活へと移行。塩田さんが「やっぱり岩井さんは“S”なんですか?」と尋ねると、「私は“変態”です」と一言。以下、延々と変態話が続くのだが、残念ながら、過激な内容につきここでは割愛・・・というのはウソです。ここからが岩井話術の真骨頂なので折りたたみます。



その前に。ラストに三池監督もちょこっと登場し、女優・岩井志麻子と俳優・塩田時敏についての感想を述べてゆきました。


岩井さんについては、彼女の演技の素晴らしさを言葉で表現することはできない、どんなに言葉で言い尽くしてもそれが虚しくなるぐらい、映像でしか表現できないことがあるのだということを思い知らされたと。また、これまでカットのつながりや編集でのつなぎがどうとかというのを気にするのは映画人として当然だと思い信じてきたのに、岩井さんを見てるとそんなものは微々たる問題だったと。次回作から自分の演出が変わるかもしれないので楽しみにして欲しい、ということでした(※文章だとすんごく真面目な顔で語ってるみたいだけど、三池さん、終始半笑いです。笑)。後半の話についてもう少し詳しく説明すると、彼女の出演シーンは2日撮りだったそうで、それを知らなかった岩井さんは替えの下着を持ってきておらず、急遽購入したのをつけていったら色が違っていたと。着物の下にブラをつけてること自体ヘンな話だが、北村道子の考えた衣装はブラつけていてもおかしくないような衣装なのでそのこと自体に問題はなかった。しかし、そのせいでカットによって下着の色が違ってしまっており、普通なら撮り直しものだが、彼女の表情に釘付けで誰もそんなことには気づかなかったそうだ。だから岩井さんも「拷問シーンがツライ人は、私のブラの色違いを確認することで気をそらしてください」とこれから観る観客に教授しておりました。


塩田時敏氏については、「ご存じない方に説明しておくと、この映画は全編英語の台詞なんですよ。なのにこの男は勝手に台詞をフランス語に変えてしまい、しょうがないのでそのまま使いました」とのこと。実際、映画を観てもらうと分かるんだけど、確かに一人だけフランス語で喋る人物が出てくる。台詞は一言で後ろ姿しか映らないため誰が演じてるかなんてのは普通に観てる分には分からない。しかし、今日の客はこの話を聞いてから作品を観たので、ほんとに何でもないシーンなのに「ボナペティ」の一言で笑いが起こった。今後観に行かれる方でもし爆笑してる客を見かけたら、「ああ、あの人もどこかでこの話を聞いたんだな」とほくそ笑んでください(笑)。



というわけで志麻子話の続きです。尚、晒すのヤバかったらコメントください。速攻削除します(別にそこまでヤバイ話ではないですけど、一応ね)。



それでは、岩井志麻子の赤裸々変態生活をご紹介。


話によると、岩井さんの住んでるマンションは、規則で「40センチ以上の高さの生き物」をマンションに入れてはイケナイらしい(すなわち床から40センチを越える大型犬などは飼っちゃダメよ、ということね)。だから、岩井さんも、男の人が家に来ると必ず全裸にして四つんばいでハイハイさせながら家に入れるそうだ。何故って? 40センチ以上の高さの「生き物」はマンションに入れてはいけないという規則だから。それは住民として守らないわけにはいかないと。男性を入れた後に何をするかと言うと、まずは「肉机」(※本人がそう言いました)。全裸のまま机になってもらって、そこで原稿を執筆すると。その他だとよくやるのは「皿」。料理を身体に直に盛りつけて食すると。ただ、そのまま料理を盛りつけると、例えば刺身なんかはすぐ体温でぬるまって美味しくなくなるので、しばらく全裸のままベランダに出して身体を冷えさせるのがポイントらしい。充分身体が冷えたところで料理を盛りつけると、皿としての充分な機能が果たせると言い、「男なんて《奴隷》です」と堂々たるヤプー宣言。


また、ここのマンションはおかしなマンションで、以前、買い物に行こうと部屋を出たら、素っ裸の女性が目の前を通り過ぎていったことがあるらしい。何事かと思ったら、彼女の後をカメラを持ったスタッフが追いかけて行ったので、どうもAVの撮影をしてたらしいということが判明。それはそれでいいのだが、問題は、驚く自分の姿をやつらは断りも無しに勝手に撮りやがったと。だから、そのうち自分が映ってるAVが出回るかもしれないと言ってました。もし見かけた方は岩井さんにタイトルを教えてあげてください。



というわけでトークは終了。話の途中でディスカバリーチャンネルに撮られてることを思い出した志麻子サン。しかし全ては後の祭り。トークの内容がどこまで放送されるのか楽しみです(見られないのが残念)。