再現VTRの世界にまで進出したフェイク手法

見たかい? 今晩のテレ朝『奇跡の扉TVのチカラSP』。TVのチカラには制作会社が3つぐらい入ってるんだけど、番組内で一番最初に取りあげられた「埼玉21歳2児のママ失踪事件」、このVTRを作ったスタッフはすごい。再現VTRの世界に新たな革命を起こそうとしている。


失踪した21歳二児の母の行方を捜していたスタッフは、彼女と交友があったという男性を見つけその自宅を訪ねるわけだ。男性はインタビューに応じてくれたが、カメラはNGだったようで、テレビで流せるのは音声のみ(もちろん声は加工されてる)。自宅も「絶対にバレないように」と言われたのか、周囲の風景ごと強めのぼかしがかけられていた。つまり映像的には素材がひとつも撮れず面白くない展開。こういう場合、間を持たせるために音声を流してる間は失踪した女性の写真を映したりイメージ映像でお茶を濁すわけだけど、ここの制作スタッフは革命的な手法を思いついた。


「映像が撮れないならフェイクで作っちゃえ!」


こともあろうに、インタビューしたときの状況を実際の音声にあわせそっくりそのまま映像で再現することを思いついたのだ。しかもどこまでもリアル志向。再現映像には実際に取材に訪れたスタッフが出演し、男性役の役者にはあたかも本人がカメラの前で喋ってるかのように音声テープにあわせ見振り手振りをつけてもらう。首から下の姿しか映さないので、画面に映ってる人がホンモノかニセモノかなんて一見しただけでは区別できない。もちろん現実と虚構とを区別するため画面左下には「イメージ」というテロップが出るのだが、これがときどき消えるんだ(苦笑)。字幕出すとき邪魔なんだって。でもね、あんた、これがあるから辛うじて再現映像だってわかるんだよ。なくしちゃったらマズイじゃん! 更に更に、男性の自宅外観が映せないのも不満だったらしく、どこかの一軒家を手持ちカメラで映したものにソフトフォーカスかけて、男性の自宅の「イメージ映像」として紹介してた。でもね、ソフトフォーカスなんてかけられたらかえってホンモノっぽいって(笑)。その後、どこかのバーのママにもインタビューしてたんだけど、こちらは映像も音声もNGだったらしく全て再現VTRでまかなってた。再現VTRといえば、インタビューで語られた「内容」を映像で再現するのが本来の使い方だ。もちろん演じてる役者も顔出しが基本。ところがこのスタッフはまたもや妥協しなかった。映像無いなら作っちゃえ!を合い言葉に、インタビュー風景をリアルに再現することを試みた。取材するスタッフは前回同様全てホンモノ。バーのママもホンモノっぽく見せるために首から下しか映さない。音声も無いのでできるだけ台詞はナチュラルに喋って貰う、まさにフェイク・ドキュメンタリー方式。苦労の甲斐あって、またもや実際の映像をそのまま流してるようにしか見えない再現VTRが出来上がった。一応フェイク映像であることがわかるように「再現」というテロップが左下に出されてはいるのだが、残念なことに、こちらもたまに消える(苦笑)。字幕出すとき邪魔なんだって。



最近、テレビ業界ではなにかとフェイク・ドキュメンタリーがブームだ。しかし、イメージ映像・再現VTRの世界にまで進出してくるとはちょっと思いつかなかった。ビックリだ。つうか、いいのか? 「アリ」なのか?(苦笑) 頼むから、テレチカ超能力班だけは一線を越えないでくれ。今日もちょっとヒヤヒヤしたぞ。コメンテーターはあまり踏み込んだ発言しちゃダーメ! とばっちり喰らうのはうちらなんだから。