『男たちの大和/YAMATO』を観た(@シネコン)

300席がほぼ満席。シルバー率高め。おっちゃんとじーさんに挟まれた席で鑑賞してきました。


映画の詳細は以下の通り。

『男たちの大和/YAMATO』12/17(土)より東映系にて全国ロードショー


【監督・脚本】佐藤純彌【製作】角川春樹【原作】辺見じゅん
【出演】反町隆史/中村獅童/鈴木京香/仲代達矢/松山ケンイチ/蒼井優/白石加代子/長嶋一茂


【STORY】太平洋戦争開戦直後の昭和16年(1941)12月16日、世界最大級の戦艦が完成した。その名は「大和」。当時の造船技術の粋を注ぎ込み、4年余りの歳月をかけ、広島県呉市海軍工廠で極秘裏に建造が進められてきた“不沈艦”は世界最大級の46cm主砲9門を備え、全長263m、満載重量72,800tとほかに類を見ない巨艦だった。しかし戦局は悪化の一途をたどり、昭和20年(1945)4月、稀代の激戦地区となった沖縄に最後の出撃命令が下される。“一億総玉砕”の旗印の下、最初で最後の水上特攻になったこの大和の出撃には3300名あまりが乗り組んだ。そしてその多くは召集間もない10代半ばから20代の若者たちだった……。


いやー、良かったよ、戦艦大和(そこからかい!)。スクリーン上にその姿を現した瞬間、「すっげープラモみてーな色」と愚痴りつつもうるっと涙が…。まあ、姿見て泣く要因の半分は『宇宙戦艦ヤマト』のせいなんですけど、とにかく大和は格好良かった。あのデザインを考えた当時の設計士はほんと天才だと思う。そしてCG全盛のこの時代に「やるならセットじゃなきゃダメだ」と考えた監督、ほんとにつくっちゃた制作陣はエライです(さすが春樹、やることデカイ。しかしどこにそんな闇資金が…)。だって、子供の時プラモでちまちまと取り付けてた機銃を実際に人間が操縦してるんだよ。あれはああやって動かすのかと、そこにまず感動。大和船上での訓練風景なんて滅多に観られないものを、ここぞとばかりに時間を割いて見せてくれたことにまずは大いに感謝したい。


作品自体は、素晴らしく角川映画だった。泣きすぎて頭痛くなった。右にも左にもよることなく、声高に何かを叫ぶわけでもなく、それでいてストレートな反戦映画に仕上がってた。現在と過去をつなぐ話が描写不足なせいもあり、松山ケンイチ仲代達矢が同じ人物に見えづらかったり、ストーリーにもあまり厚みは感じられないけど(まあ、角川映画ですから)、次々と描かれる登場人物一人一人の別れと、ここぞという場面で確実に泣かしてくる演出、芝居、台詞に、「これだよ、これこれ。これぞ角川映画だよ」と心躍らされた。観てるときは「子供の時に観た戦争ものはこんな感じだったなあ」と懐かしく思ったけど、終わってみるとやはりいまの時代の戦争ものだと思い直したり。作り手のまなざしは、死んでいった者より、生き残った者、生き残ること、いま生きている次の世代により強く向けられてた気がする。戦後60年が過ぎ当時を知る者は次々と鬼籍に入ってゆく中、伝えたいことの順位が少し変わってきたんだろうか。大和が沈むとき「引きで沈みゆく大和を見せてくれ!」と思ったけど、きっとそういう描写は本作にはいらないんだろう(単にCG製作費が足りなくなっただけという可能性も…)。


帰りに『戦国自衛隊』を借りて再見したけど(『里見八犬伝』は貸出中だった)、かまやつさんとか皆の最後のやられっぷりにまたしても涙。結構大和に似てるんだ。アクションもかっこよかったし。しかし、何が他と違うんだろ。『戦国自衛隊』だって、話だけなら『戦国自衛隊1549』の方がよく出来てたと思う。しかし角川版の方が圧倒的に泣けるんだ。演出? 芝居? 音楽の入れ方? アクションとドラマの噛み合せ? 何がどうなってるととこうも泣ける作品に仕上がるんだろ。・・・わからん。長年にわたり刷り込まれてきたものがあるんだろうか。だって『男たちの大和』でも、「あんた名前は?」「ウチダです。父は内田守といいます」のやりとりで既に涙腺ゆるんでる自分って、ちょっとおかしくない? 原作読んでないし、まだ始まってもいないし、別に泣く台詞じゃないだろ?と。ここまでくると条件反射だね。



映画が始まる前に『日本沈没』の予告が流れてたけど、『男たちの〜』観た後じゃハッタリ不足。線が細い。細すぎる…。



もう、諦めるかなー。往年の角川映画みたいな大スペクタクル男泣き映画の復活をずーっと待ち望んできたけど、実際に本家の仕事観たらなんかもう圧倒的で、これは他のヤツには無理だなって思っちゃった。佐藤純彌じゃなく、もっと別の、ここ5年10年ぐらいに出てきた若手・中堅どころと組んでこのクオリティだったら望みもつながったけど、引導渡された感じ。だって、もう、想像できないもん。角川春樹をもってしても、監督違えばきっと無理だ。なんか、最後の壮絶爆撃シーン観てたら深作欣二監督の『バトルロワイアル』思い出しちゃったんですよ。「角川春樹さえいれば出来るはず!」とずーっと思ってたけど、そういうことじゃなかったのかもしれない。『里見八犬伝』しかり『戦国自衛隊』しかり『二代目はクリスチャン』しかり、たまたま当時そういう監督が揃っていて、角川春樹にそういう監督を見つけ出す嗅覚があって、奇跡的にポーンポーンポーンと生まれ続いたに過ぎなかったのかもしれない…。ちなみに、『男たち〜』『里見〜』『戦国〜』とスペクタクル系を撮りあげて来た監督は皆、1930年代初期の生まれ*1。思春期に入りかけの若い時分に戦争を体験してきた世代なんだけど、これは単なる偶然? もし育ってきた時代の空気が作品の仕上がりに大きく影響してるならば、角川男泣き映画の系譜がここで絶たれたとしても、それが時代の流れだと潔く諦めよう。でもそうでないなら、なんとか法則を見つけ出し、いますぐにでも後継者育成に尽力して欲しい(特に東映! 一番、系統が近いんだから何とか頑張るんだ!)。


・・・と思ったら、こんなニュースが今朝飛び込んできた。

“大和”超える史上空前スケール、角川映画第2弾「蒼き狼」


大ヒット中の映画「男たちの大和/YAMATO」(佐藤純彌監督)で復活したプロデューサー、角川春樹氏(63)の復帰第2作がチンギス・ハーンをテーマにした「蒼き狼〜地果て海尽きるまで〜」(澤井信一郎監督)となることが13日、分かった。角川氏と松竹、エイベックスが提携し「大和」を超える製作費30億円を投入。モンゴル政府も「建国800周年記念事業」として全面協力し、政府軍3000人を動員する現地ロケなどを展開。空前のスケールで平成19年の公開を目指す。(−中略−)


「蒼き−」は故・井上靖氏の名作「蒼き狼」(新潮文庫)と角川氏の盟友、森村誠一氏が同じくチンギス・ハーンの生涯を描いた「地果て海尽きるまで」(ハルキ文庫)の映画化。角川氏は同20日から蒙政府、日本の大手映画会社各社などと折衝を重ねてきた。(−中略−)


監督は「Wの悲劇」(昭和59年)などで角川氏とコンビを組んだ澤井信一郎氏(67)。さらに「男たち−」の戦闘シーンを指揮した原田徹氏(50)が、引き続き第2班監督を務める。(−略−)

「男たち−」の戦闘シーンを指揮した原田徹? ・・・調べたらこの人、『バトル・ロワイアル』で監督補佐、『バトル・ロワイアル2』でBユニット監督を務めてた。『バトロワ』っぽいのはそのせいだったのか。アクション部分はこの人が深作欣二から受け継いできたようだから、やっぱりこれはあれだ。角川春樹よ、昔の監督とばかり組んでないで、あと2本ヒットさせたら一度、若いのと組みなさい。それでダメだったら、もう死ぬまで昔の監督と組んでていいから。ね。ちなみに調子こいて自分で監督するのはタブーだから。それだけは忘れないで。



最後に。『男たちの大和』は、おかっぱ蒼井優ちゃんの殺人的かわいさと共に、若い兵隊のきびきびした動きがとても印象的だった。20年30年後の戦争映画でも、上官を前にしたときの若い兵隊は、腹から声出してハキハキと喋り、きびきびと動いていてほしい。。。


【関連サイト】
映画『男たちの大和』原寸大ロケセット公式WEBサイト 公開期間:'05年7月17日〜'06年3月31日(予定)
こちら開発室:男たちの大和1(@タカラホビー.com)
大和ミュージアム

連斬模型シリーズ「男たちの大和」 BOX

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*1:亡くなった深作欣二監督(『里見八犬伝』)は1930年。15歳の時に終戦を迎えてる。佐藤純彌(『男たちの大和』)、斎藤光正(『戦国自衛隊』)は共に、2つ下の1932年生まれ。