曖昧になって気づいたこと

私は“CG”がキライです。ものすごくキライです。というか、好きになるわけにはいかないのです。なんてったって奴等は、モデルアニメを駆逐し、特撮映画のメイキング映像から《驚き》を奪った張本人です。そう簡単に認められるかっちゅー話です。


でも最近「もうCGでいいんじゃないの?」と思ってしまう自分がいます。「わざわざ手間暇かけてコマ撮りに拘る必要あるの? 全部CGでもいいんじゃないの?」と思ってしまう自分がいるのです。


きっかけは『妖怪大戦争('05)』に出てきた《機怪》たち。奴等はCGのクセに、カクカクとしたぎこちない動きで、人形アニメ特有の愛嬌を獲得していました。CGにこんなことさせるのはフィル・ティペット一派ぐらいだったのに、自分と同じ世代のCGクリエイターがついにやり始めちゃったのです。


それに追い討ちをかけたのが『コープス・ブライド('05)』。これはCGではありません。コマ撮りで作られた人形アニメです。しかし従来のものに比べ、カメラワークは自由自在だし、人形の動きも非常になめらか。しかも背景と人物の質感が馴染みすぎて、モノクロベースのシーンだとパッと見CGと区別がつきません。あんなに手間暇かけて作ったのに、出来上がったモノをCGと見分けることができない・・・。自分自身にショックでした。


「だったら、もうCGでいいんじゃないの?」
悪魔が耳元でささやきます。いやいや、そんなことはない。そんなことはないはずだ。


これを作ったのが仮にティム・バートンじゃなければ、そんなこと思わずに済んだのかもしれません。『ジュラシック・パーク('93)』の出現によって、ストップモーションアニメという手法は特撮業界からの撤退を余儀なくされました。日ごろからコマ撮りアニメ好きを公言してたティム・バートンはある意味《最後の砦》でした。しかし『マーズ・アタック! [DVD]('96)』を作った彼は、劇中に登場する火星人をオールCGアニメで作り、あろうことか人形アニメ風味に仕立てることで、わずかに残った希望の灯火を自ら吹き消してしまったのです。そんな彼が「やっぱりストップモーションアニメだよ」と新たに作った作品、それがいまやCGと区別できない。それぐらいCGと人形アニメの境が曖昧になってきてる。そんな状況で時間も労力もかかるストップモーションアニメに拘り続けるのは、もはや単なる自己満足なのでしょうか。


「だから、もうCGでいいんじゃないの? そのうち作ってる本人以外、誰も区別つかなくなるよ」
いやいや、そんなことはない。そんなことはないはずだ、と信じたい。


うーむ、悪魔め。頼むからこれ以上囁かないでくれ。