『日曜日は終わらない』まもなく公開(10/22〜10/28まで)

 9月からテアトル新宿、渋谷シネ・ラ・セット、渋谷アップリンクの3劇場で行われていた女優・林由美香の追悼上映 <由美香 Oh My Love!>。その特別企画として、第36回シカゴ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、第53回カンヌ国際映画祭《ある視点部門》にも正式出品されたにもかかわらず、国内では地上波やBS2での再放送もソフト化も叶わず*1、ファンの間では「幻」と化してたNHKハイビジョンドラマ『日曜日は終わらない』の上映が今週末からいよいよ始まります。
 本作は、99年10月にNHK-BSHiで放送。その後は、ほぼ国外向けコンテンツと化してしまったようで*2、国内での上映はNHK主催による「NHKアジアフィルムフェスティバル*3。」('99年,'01年)を除けば、「OSAKA 映像フェスティバル2002」*4、「第13回映画祭TAMA CINEMA FORUM〜水橋研二特集」*5の2回のみ(だと思われる)。今回、PG誌編集長・林田義行氏の2ヶ月に渡る交渉により、待望の劇場公開が実現しました(多謝)。


 1週間限定のモーニングショー公開ということで、林由美香or水橋研二or高橋陽一郎作品ファンの方であれば、会社や学校を半休してでも是非観に行ってもらいたい。せっかく実現したこの機会、逃したら次はもうないかもしれませんよ〜(これがただの煽り文句にならないから怖い…)。

『日曜日は終わらない』 10/22(土)〜10/28(金)まで


【監督】高橋陽一郎【脚本】岩松了【音楽】りりィ&Yoz
【出演】水橋研二/林由美香/塚本晋也/りりィ/渡辺哲/絵沢萠子/山口美也子/伊藤歩/大杉漣/沢木麻美/サニー・フランシス/岩松了/新屋英子/光石研
90min/1999年
□上映館:渋谷シネ・ラ・セット(10:10〜モーニングショー)


【STORY】一也(水橋研二)は、同じ会社で働く父(渡辺哲)からリストラ宣告を受け、離婚して小料理屋を営む母(りりィ)のもとに身を寄せた。母はまもなく祖母を轢いてしまった男(塚本晋也)と再婚する。男と折り合わず居場所を失った一也はランジェリー・パブで働く佐知子(林由美香)と出会い、日曜日に海へ行こうと約束する。だが、その日自分でも説明のつかない衝動に駆られ、義父を殺してしまう。数年後、刑務所から戻ってきた一也を待っていたのは実父であった……。


舞台挨拶等の予定は以下の通り。各日とも上映後に行われます。

10/22(土) 初日舞台挨拶
 ゲスト(予定):高橋陽一郎監督、水橋研二
10/24(月) 舞台挨拶
 ゲスト(予定):高橋陽一郎監督、岩松了(追記:舞台挨拶の模様はこちら
10/28(金) トークショー
 ゲスト(予定):高橋陽一郎監督、吉行由実


※各日AM9:30より入場受付・開場(一人1回の受付で2枚まで)


尚、本作のちらしか公式サイトにあるクーポンを持参すると、一般/学生の方は割引料金で観ることが出来ます。


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モーニングショーだとどれだけの人が観にこれるんだろう。レイトショーなら満員御礼のこの企画も、平日に客を呼び寄せるのは厳しいかもしれない。とりあえず、煽っておこうっと。観てくれる人がいないと次の上映機会につながらないし、このまま埋もれてしまうには惜しい作品。何よりも自分自身が観た人の感想を読みたいので、できるだけたくさんの人に観に行ってもらいたい。



本作で林由美香が演じているランパブ嬢・佐知子がほんとに可愛らしいんだ。不思議ちゃん系ではなく、どこから見ても純粋で“いい娘(こ)”。環境の変化によりストレスを溜め込んでゆく主人公。その心を、唯一癒してくれるのが彼女の存在。客への対応を見るとそこそこキャリアはありそうなんだけど、どこもすれてなくて、「なんで、おねえさんみたいな人がこんなところで働いてるの? 早く足を洗った方がいいよ」と思う一方、「みんなこうやって彼女のもとへ癒されにくるんだろうなあ。彼女にとってこの仕事は天職かもしれない」と妙に納得してしまう自分もいる(ああ、ジレンマ)。ランパブでのやりとりを始め台詞の多くはアドリブらしい。由美香ファンは二人のやりとり観ながら「俺も佐知子さん(由美香さん)に癒されてー」と羨ましがってください。


そして、主演の水橋研二。主演作は結構観てるけど、彼の特異な演技体質がもっともいかされてるのが本作だと思う。水橋研二という役者さんは、「カメラが回っているのを忘れてるのでは?」と思わせるぐらい、日常生活で普通に行なっている何気ない動きをカメラ前でも再現できる稀有な人。本作では、心情を語らない主人公に代わり、彼が何気なく見せる日常の振る舞いの全て、特に母と二人で暮らす家でのくつろぎっぷりが、その後に犯す犯行の動機を雄弁に語ってくれている。



なにやら宮台真司方面でも観たいという人が現れたので、そっち向けにも煽っておく。本作は『CURE キュア』『リリイ・シュシュのすべて』と並び、宮台氏が『とってもエイリアンズな日本映画』10選に挙げてる作品。

宮台真司が選ぶ『とってもエイリアンズな日本映画』10選


〈社会〉内での位置取りにあくせくする私たちに突如〈世界〉からの光が降り注ぐことがある。そう。〈社会〉をどう生きるかなど実はクダラナイ。ところがそういう〈脱社会的〉な視線を採った者(エイリアンズ)にだけ見えてくる〈社会〉のかけがえのなさがある。そのことを感じさせる教材的な日本映画を挙げた。簡単には観られない映画も含まれる。
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【9】高橋陽一郎監督『日曜日は終わらない』(99)[ビデオやDVDなし]
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【9】〈社会〉を生きられない者たちの繋がり合う輪。これがあれば〈脱社会化〉した少年は鬼にはならない。青山真治ユリイカ』モチーフの先駆。

宮台ファンもお見逃し無く! 


*1:前年に制作された高橋陽一郎監督、水橋研二主演によるハイビジョンドラマ『水の中の八月』はソフト化済。

*2:前述したシカゴ映画祭、カンヌ映画祭の他に「第2回全州国際映画祭」「第6回釜山国際映画祭」にも正式出品。ニューヨークで催された「New Films From Japan 2002」でも上映。

*3:NHKがアジアの映画監督に出資して製作した作品の上映やシンポジウムを行なう映画祭。その第3回と第4回にて、同じ高橋陽一郎監督、水橋研二主演によるNHKハイビジョンドラマ『水の中の八月』と共に特別上映された。公式サイトは<こちら

*4:2002年11月16日に上映。シネ・ヌーヴォ代表・景山理氏が尽力した模様(「景山の日記」参照)。

*5:2003年11月30日に上映。映画祭公式サイトの特集紹介ページ高橋陽一郎監督のコメントもあります。