『オールド・ボーイ』を観た(@アミューズCQN)

昨年末に観てきました。客は50人ぐらいで20代中心。男性が若干多目で友人同士で来てる人が多かった。ミニプレゼント実施中だったらしく、チケット買ったら石鹸が付いてきた。ラッキー!


映画の詳細は以下の通り。

『オールド・ボーイ OLD BOY』 11/6(土)〜3/11(金)まで


【監督】パク・チャヌク【脚本】パク・チャヌク/ファン・ジョユン/イム・ジュンニョン
【原作】土屋ガロン作/峰岸信明画「オールド・ボーイ」(1997年 双葉社)
【出演】チェ・ミンシク/ユ・ジテ/カン・ヘジョン
120min/R-15指定/2003年


“何のための復讐か。誰のための愛なのか。憎しみに終わりはあるのか。”


【STORY】妻と幼い娘を持ち、ごく平凡な人生を送っていた男オ・デス(チェ・ミンシク)は、酒に酔った帰り道、突然何者かに誘拐される。意識を取り戻すとそこは狭い監禁部屋で、妻は何者かに殺され、自分が容疑者として指名手配されていた。理由の分からないまま監禁され続けるオ・デス。いったい誰が? 何の目的でこんなことを? 15年の月日が流れ、再び解放されたオ・デスは、若い女ミド(カン・ヘジョン)の助けを得て、自分を監禁した人物の捜索と復讐に執念を燃やす。そんな彼のもとに現れたのが謎の男ウジン(ユ・ジテ)。彼は「5日間で監禁の理由を解き明かせ」と、互いの「命」を賭けたゲームをオ・デスにもちかける。「大事なのは、何故監禁されたかではない。何故、解放されたかだ」と語るウジン。全ての謎を解き、驚愕の真実を知ったオ・デスが最後に選んだ選択とは……。

んで、感想です。


役者陣については、巷の評判にほぼ同意。カン・ヘジョンは小粋でかわいいし、主演のチェ・ミンシクがほんとイイ顔で、冒頭の酔っ払いサラリーマンから人相変わりすぎだって。ただ、彼より10歳も年下のユ・ジテを監禁男に配したのはどうだろう。意図は分かるが、見た目が若すぎて伝わりづらい。どう頑張ってもミドと同じぐらいにしか見えず、オ・デスと同年代であることが強調されるたび違和感を感じる。少年みたいな表情のオヤジ役者がいれば良かったのにね。作品自体は、真顔でギャグ放つ映画だったことにまずは驚いた。ユーモアで出来てるなんて予想だにしてなかったので、観る前に抱いてたイメージとのギャップに「これは笑うとこでいいんだよね?」と若干戸惑ったりもしたけど、勢いと独特なテンポで最後まで飽きることなく観られた。拳だこもきちっと作ってくれたし、「ファミコンみたい」と評された横移動のみで見せる長回し格闘シーンなども新鮮で面白かった。ワルツの醸し出す優雅な雰囲気がとてもよく似合う映像で、画作りやカット割りはどれも印象的。ファンタジックなミドの地下鉄シーンもジウンの回想シーンも大好きです。


ただ、内容に関して納得のいかない部分が多々あって、すごく楽しんだ割に最終的な印象はいまいち。


以下、ネタバレ(オチについても触れてるので未見の方は注意)
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不可解な点はたくさんある。



まずひとつ目は、ウジンの復讐に至る動機。「逆恨み」にしか見えず、復讐方法の非道さと比べたときに自分の中で折り合いがつかなかった。そもそも「学校」なんて知り合いだらけの人目につきやすい場所でいちゃついてるのが悪いんであって、人のせいにする前にまず自分らの行動を振り返れと。逆恨みの自覚が本人にあれば「すがるものがそこしかないのか。可哀相なヤツだなあ」と納得もできるが、そこらの描写がはっきりとしないので、なんかもやっとする。ウジンの回想では、姉が自殺した原因は「噂」ではなく「妊娠」のように見えるけど、そこら辺の事情がオ・デスにははっきりと知らされていないため、ウジンの姉が自殺したのは自分が不用意に口を滑らせたせいだと思い込んでるのがイライラする。真相知ったら絶対キレるって。『スクリーム』のネーヴ・キャンベルだったら絶対キレてボコッてる。ウジンも噂が原因だと言い張るなら、面白がって噂してたやつ全員をオ・デス操ってボコボコにすればいいのに、他の人間ははなから眼中にないんだな。


二つ目は「想像妊娠」。別に「妊娠」でいいじゃん。なんでわざわざ「想像妊娠」にする必要があるんだろ。妊娠と違って、想像妊娠するためにはかなりの情動が必要だよ。性交すれば誰でもできるってわけじゃない。弟の子供が欲しくて欲しくてたまらなかったのか、弟の子供ができたらどうしようと恐怖に震えおののいていたのか、彼女の場合はどっちだったんだろう。回想に出てきた姉ちゃんの印象では前者で、腰の引けた弟に失望して自殺したって感じだけど、近親相姦で子供が出来るのは、たとえフィクションといえども倫理的に受け入れがたいとかそういう理由でもあったんだろうか。


三つ目は、復讐の方法。姉と近親相姦な関係にあったウジンが思いつく最凶の復讐方法が、同じ「近親相姦」っていうのが解せない。「家族と男女の関係にさせられるなんて、知らずに人肉喰わされたぐらいの最低最悪な復讐方法だ」と思うのは、あくまでも「自分の姉(弟)とセックスなんて考えられない!」という人間だけじゃないだろうか。彼ら姉弟は、周囲の偏見や蔑みには苦しんだかもしれないけれど、倫理的な苦しみとは無縁だったわけで、そんな立場の人間が、何故「近親相姦」で苦しめようなんて思い至るのか、そこがわからない。お互いに姉弟だとは知らずに愛し合い、事実を知るきっかけを作ったのがオ・デスだったというなら、「俺たち姉弟と同じ苦しみをおまえにも」っていう気持ちになるのはよくわかる。また「肉親同士で愛し合う苦しみ」を誰かに分かってもらいたいという意図があったとするなら、それもわかる。でも、オ・デスの最期の選択はかなり異質で、それこそ催眠術で絶対そう選択するように暗示をかけでもしない限り、彼が親子であることを捨てるという選択は予測できないんじゃないだろうか。ああ、でもそうか。予測できたらできたで恋に落ちてゆく二人を見るのは苦痛だもんな。彼らは端から見たら全くの赤の他人で、ウジン姉弟とは違い、互いに納得さえすれば邪魔するモノは何もないのだから…。


四つ目は、復讐方法に早い段階で気付いてしまい、もう1回どんでん返しがあるんじゃないかと過剰に期待しすぎてしまったこと(ハイ、自分が悪いです)。復讐モノで、娘がいて、娘のように若い女子と恋仲になるって時点で「ああそういうことか」と思ったらまんまそれで、「いや、まさかこれだけじゃ終わらないだろ」と思ったら、オ・デスが頼まれもしないのに自ら舌を切り出し「やっぱなんかあるぞ」と期待値上げたら、案の定ウジンが笑い出し、「早まったな、オ・デス! 早とちって自ら罠にはまりやがった。来るぞ、更なる大どんでん返し!」と史上最高にワクワクしたのに、何もなくてガックリ。心臓を止めるスイッチは駄目押しの一品じゃなかったのか。


そして最後は、オ・デスの最終選択。遺伝子だけでつながってた親子じゃない、少なくとも数年間は父親として成長を見守ってきた自分の娘に対しあの選択をするのは理解できない。(うろ覚えだけど)誘拐された日に娘へのプレゼントを買ってなかったっけ? 記憶を喪失してたわけでもないのに、親子として暮らしてきた数年間の想い出をすべてチャラに出来るのは何故だろう? 監禁されてた15年間ずっと、ひとりぼっちになった娘のことなど微塵も思い出さなかったのだろうか…。絶対ミドは「お父さん」って言うと思ったのになあ。ベタは流行らないのか。「親子や姉弟間の愛情なんて男女の愛情と根っこは同じ。いくらでも置き換え可能なんだ」ってことを主張したいタイプの映画でもないし、ガックリ来た後のポカーンな展開に、なんとも消化不良な印象だけが残ってしまった。



オ・デスが舌切る姿にウジンが笑い転げるシーンまではホント興奮しながら観てたんだけどなあ。。。


ネタバレ終了



他が良かっただけに、もうちょっと納得のいく展開だったらなと思うと残念。自分自身、韓国人の倫理観・道徳観をもうちっと学ばないと、本質的なとこでノれないという状況はこれからも続きそうな気がする。



−追記−
そろそろDVDも出るのか。