『晴れた家』舞台挨拶、村松正浩×山本浩司×侘美秀俊



いつも初日は敬遠してるのだが、スケジュール的に今日行かないと観れないまま終わる確率が高かったので、仕事を早々に切り上げ、『トニー滝谷』とそのメイキング『晴れた家』をまとめて観てきました。『晴れた家』は上映前に舞台挨拶があり、構成・撮影・編集を務めた村松正浩監督と、ナレーションの山本浩司(『トニー滝谷』にもアルバイト青年役で出演)、そして急遽来場が決まった音楽の侘美秀俊の3人が登壇。司会者からゲストへの質疑応答という形で舞台挨拶は進んでいきました。


「『シンク』以来久しぶりの劇場公開作なので緊張してる」と語る村松監督に続き、山本浩司侘美秀俊の順で挨拶。『トニー滝谷』の撮影現場を体験した二人(村松監督、山本浩司)に市川組の現場の印象を尋ねると、「独特な空気感をもつ作品を撮る監督なんで、どんな現場なんだろうと楽しみにして行ったが、あまりの暑さにそれどころではなかった」と答える村松監督。たった2週間の撮影にもかかわらず「見ての通り色白なんですけど、人生で一番焼けました」と話していた*1。一方、アルバイト青年役で役者として撮影に参加したものの「喜びと緊張でいっぱいだったせいか、その時のことはほとんど覚えてません」と語る山本浩司村松監督から「イッセーさんにタバコ貰ったって喜んでたじゃん」と振られたけど、「それもよく覚えてない…」と首をかしげていた。


「どのぐらい撮影してたのか」という問いに、「総撮影時間は52時間、テープ52本分にもなった」と答える村松監督。撮影にはいろいろと苦労もあったようで、メイキング監督として『トニー滝谷』の現場にお邪魔したのはよいが、最初からすんなり受け入れて貰えたわけではなく、撮影初日に現場で初対面した市川準監督からは、開口一番「じゃましないでね」と釘をさされたそうだ。それでも頑張って密着し続け、市川監督から「君もほんとしつこいねー」という言葉をもらえたあたりからは、中に入れたような気がするというようなことを語っていた。


村松監督と山本浩司はお互いに一緒に仕事をするのは今回が初めてとのこと。しかし以前から間接的な知り合いではあったらしく、監督の話によると、初めて会ったのは何かの映画の打ち上げで、『どんてん生活』を観て「いい役者だなあ」と思っていたら、偶然にも下北沢の飲み屋で出会ったそうだ。また、二人ともすごく人見知りが激しいそうで*2山本浩司曰く、全く知ってる人のいない『トニー滝谷』の現場で初めて互いの姿を見かけた時は、思わず手を伸ばし「おーーーー!」と歩み寄ってしまったらしい。


山本浩司をナレーションに起用した理由について「ナレーションを入れるなら本編にゆかりのある人がいいんじゃないかと思っていた」と答える村松監督。「ナレーションの仕事はこれが初めて」と話す山本浩司だったが、実は役者で出演した『トニー滝谷』も、当初はナレーションでオファーされてたそうだ。ところが途中で「画面に出た方がいいんじゃないか」ということになり、ナレーションの話は他の人へ。しかし今度はメイキングの方で声をかけてもらうことになり、「役者とナレーションの両方で作品に関われたのは良い経験になった」と語っていた。ナレーションをやるにあたり、監督からは「二枚目な感じで」と注文されたそうで、「眉をきりっと、ニ枚目な顔を作りながら声を入れてた」そうだが、「ブースのこっちにいたので顔まではわからなかったよ」と監督に返されていた。


音楽を担当した侘美秀俊は、普段は室内楽「カッセ・レゾナント」を主宰する音楽家さん。映画音楽を担当したのはこれが二作目とのこと(もう一作は、ちょうど1年前に同じテアトル新宿で公開された七里圭監督『のんきな姉さん』)。本作で流れてる曲はピアニカをメインに使ってるそうで「面白い感じになった。作品にうまく寄り添えているといいなと思う」と語っていた。監督も「映像より音楽を聴いて欲しいぐらい」とプッシュしまくっていた。


最後に一言ということで、「『トニー滝谷』を見た人も見てない人も楽しめる作品になってると思う。メイキングを観た後にもう一度本編を観て貰うと、頭の中でいろいろと編集ができるんじゃないだろうか」と語る村松監督。山本、侘美両氏も一言ずつ挨拶したあと、司会者に促され近況報告。侘美氏は、5月に七里圭監督『眠り姫』の生演奏付き上映会をやるとのこと。この作品には山本浩司も出演しており(主演はつぐみ、西島秀俊)、二人で「良かったら観にきてください」と宣伝して舞台挨拶はお開きとなった。

*1:市川準監督が撮った本編の映像からは、灼けるような陽射しやうだるような暑さなど微塵も感じられないが、撮影自体は昨年の記録的猛暑の中、屋外に舞台のようなセットを立て、シーンのほとんどがそこで撮られており、クーラーも扇風機もなく、スタッフが終始うちわで扇いでる姿が印象的だった。

*2:監督は「カメラがあるから話かけられる」なんて言っていた。